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第十五話「特訓と連射」

「おはようロイ、釈放だよ」


 ランタンの明かりが独房内に光を灯しガクガクと震えていたロイドが居た。


「はよ出ろ、って!逃げんな!」


「もう嫌だぁ!」


 独房の扉が開くや否やロイドはクイーンの脇をくぐり抜けて逃亡を図ろうとしたが


「ジャック!」


「あいよ!」


 逃げた先を防ぐのは巨漢の筋肉ダルマのジャックだった。


「放せよ!僕は唯壁に穴を開けただけなんだよ!」


 ロイドを両手で持ち上げて動きを封じられて喚く中クイーンが近寄ってきて言った。


「壁に穴を開けたのが問題じゃない、発砲したのが問題なんだスカポンタン!ここは一応でも本部なんだぞ、その本部内で発砲があったって知られたらどうなる?私たちの首が飛んじまうんだよ、スポーンとね!スポーンと!」


「あ、はい・・・」


 熱心に説明してくるその顔には冷や汗がダラダラと洪水の様に流れ出していてどれだけの事かをある程度理解できた。


「その、すみませんでした!」


 話を聞いた後ジャックから降ろしてもらうとロイドは地に額をつき大きな声でクイーンに言った。


「分かればよろしい!はよ準備して地上に上がってこい」


「はい!」


 ロイドはその場から立ち去りいつも通りの流れをこなした後地上に上がった。


「眩しッ!」


 五日ぶりの朝日に目が慣れてないのか少し眩暈がしたがすぐさま感覚を戻し、クイーンと何やら見た事のある機械の前にロイドが駆け寄ると今回の特訓についての説明が始まった。


「さあ特訓だロイ、今回は動く物体を撃ち落とすのが目標だよ」


「・・・動く物体ってちなみに?」


「ボマリンだ!」


 指を鳴らして出て来た気持ち悪い球体にロイドは愕然としながら


「何で此奴なんですか!他にもあるんじゃないのかよ!」


「そりゃあ私が好きだからに決まってるだろ」


「感覚麻痺してるんじゃねえのかおい!その気持ち悪い顔を見て好きになる奴が何処に居るんだよ!」


 その言葉にプンスカと腹を立てたのか少し低い声で


「かわいいもんボマリン・・・かわいいもん!」


「幼稚園児かお前は!」


 泣きべそをかきそうな表情のクイーンにそう言うと


「よく見て見なさいよ!この優しい顔!にこやかで今にも天使が舞い降りそうなこの笑顔を!」


 ロイドの顔近くにボマリンを突きつけるとボマリンからキシシ、グヒャアなんて気持ち悪い声と共に涎をダラダラと垂らしてこちらを垂れ眼で睨みつけてきた。


「キモイ!近づけんな、マジで気持ち悪すぎなんだって!」


 身を翻して逃げかえるとボマリンを両手に持って追いかけてくるクイーンに呆れながら


「分かりました!分かりましたからそれをこっちに向けないでください!可愛いですから」


「本当?」


「本当だ」


 どうやら機嫌を直したようで元の位置に戻り機械のスイッチを押して簡易結界を出現させた。


「それじゃあ説明の続きね、ロイは此処から見て左側の壁際に就いてね、ボマリンを右側に最初は三体置くから開始後全て撃ち落とす事、それ以外は使っちゃダメ」


「ちなみにその三体は横に動くんですか縦に動くんですか?」


「ロイドに向かって動きます。それとボマリンは弾を避けて動くから」


「ですよね~、って避けるのかよ!」


「当り前じゃない、特攻してくる敵兵士がどこにいるのよ、ボマリンは避けながらロイ君に近づいてくる、気を抜いちゃだめよ、腕がボーーン!だから」


「は、はは」


 苦笑いをしながらもロイドは説明が終わった所で自分の位置に就き、クイーンから貸してもらってる小銃を構えた。


「それじゃあいくよ~!よういドーン!」


 クイーンは上にあげた手を勢いよく下に下げながら指を鳴らすとボマリンが起動し、ロイドに向かって迫ってきた。


「やっぱキモイよなッ!【射出】」


 この前覚えたばかりの事を実戦でやってみると銃口から弾が射出されてボマリンの横を掠めた。


「いやそもそも僕動かない物体も撃ったこと無かったんだった!【射出】」


 絣はするがボマリンが弾を避けていくのもあり全然命中しない。


「ヤバい!」


 ロイドはその場から逃げ、近くまで迫っていたボマリンとの距離をとって走っていた。


「いやこれ前と同じじゃねえか!」


 走りながらも撃つが脳内処理や術の構成で単発撃ちしかできていないロイドは体力とマナだけがジリジリと削られていくばかりだった。


「一回使ってみるかッ!【射出】」


 壁の隅に差し掛かりロイドは横に退けて身を翻し、ボマリンが急激に曲がる一瞬の間を狙ってスコープ越しに撃ち込む。

 

「うしッ!」


 ボマリンの右上部に辺り爆破した。だが他の二つはその爆破を避けてロイドに近づいてくる。


「やるじゃん」


「伊達にゴリラと闘ってねえよ!」


 なんてクイーンに返しながらロイドは同じ様に壁の隅まで走っては撃ち込みボマリンを爆発させていった。


「ふう・・・」


 全てを爆発させてロイドはその場に倒れこみ、クイーンは機械を停止させて結界を解き、ロイドに背を向きながら言った。


「お疲れぇ~いやあ想定外だよ、実に面白かった。そんじゃまた明日」


「え?今日はこれで終わり?!」


「そうだね、だってロイ疲れたでしょ?」


「まあそうだけど・・・」


「なら休みな、明日はこの二倍だから」


「・・・?」


 ロイドは微かに聞こえた二倍という言葉に思考を停止させているとクイーンはどこかに行ってしまった。


(まてよ今日ので相当疲れてるのに二倍って・・・死ぬやん!連射出来るようにならないと絶対に死ぬよね!)

 色々と察するものがあったロイドは疲れなどお構いなしに連射出来るようにする為如何すればいいか考え始めた。


「単発での構造をループさせれば早いんだろうが詠唱と脳内処理が邪魔だよな」


 草原に腰をつき数時間態勢を変えずに考え続け日が暮れ始めた頃にある策がふと頭を過った。


「幻術を使って詠唱を永続的に脳内に留めておいて・・・マナ枯渇待ったなしだよな~」


(だけどこれしかないし少し試してみるか)


 手をつきながら立ち上がると小銃を持ち先程考えた事を行ってみることにした。


「記幻の魔術よ、マナの路を開き我に力を与えよ【ゲデヒトニススタグネーション】」


 脳内に弾を生みだし射出するための詠唱と構造を停滞させて置き残るは撃つだけだが


「【射出】【射出】【射出】シャグッ!いっでええ!」


 連続で言葉を発しているうちに舌を噛んでしまい止まってしまった。


「できたけど連続無理だろ、他に何か引き金になるような簡単な言葉は・・・」


 ふと何となく擬音ならどうにかなるかもしれないと思い試してみる。


「【ダダダダダダダダダダダダダダ】」


 ロイドの口から発せられる擬音と共に大量の弾が銃口から発射されていきそれを面白がって続けていると


「ダダダ・・・あ、マナ・ぎ・れ・」


 調子に乗り過ぎて五分間もやっているとマナ切れで体内のマナが枯渇状態になりロイドは意識を失いながらその場に倒れてしまった。

2600pvありがとうございます。

遅くなりましたが近いうちにもう一本投稿するのでよろしくお願いします。

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