第十四話「特訓と小銃」
ジャックの期間が終わりクイーンがロイドに教える期間に入った。
「やあロイ、それじゃあ早速始めようか」
特訓一日目の朝、地上にてクイーンは手袋と小銃を右手に持ちながら左手でロイドに手を振った。
「あれ?クイーンは襲ってこないのか?」
「襲う?何故?私は君に戦い方を教えることが基本だよ?」
平然と返してくる正論にロイドはジャックの異常さを感じていた。
「それじゃあ、ほれッ!その銃であそこにある的に撃ってみろ」
クイーンが渡してきたその小銃は普通と違いマガジンを装填する所が無く、グリップのみであったり、異様に軽く中に何も詰まってないんじゃないかと思うほどの物だった。
「これで撃てと?」
一応確認してみるが
「いいから撃ってみろ」
クイーンにそう言われ仕方なくグリップを握りスコープ越しに的を狙う、息を吐きブレが最小になったところで引き金を引いてみるがカスッと音が鳴るのみで何も出てはこなかった。
「やっぱ出てこないぞこれ?不良品なんじゃないのか?」
態勢を崩してクイーンにそう言うと
「かしな―――【ショット】」
とロイドが持っていた小銃を奪いすかさず的に目掛けて撃った。ロイドと打って変わってクイーンが引き金を引くと銃口から弾丸が射出され的の中央を正確に撃ちぬいていた。
「ざっとこんなもん、これからロイには弾を撃てるようになってもらうのとある程度正確に的に当てる練習をしてもらうよ」
「ちょっと待ってくれ、何で僕が撃った時は弾が出なくてクイーンが撃った時は弾が出たんだ?」
「それは自分で考えて下さい、小銃を貸しとくから一週間で弾を撃てるようにしてね、私はこれから友達と約束があるからそれじゃあ」
小銃をロイドに渡してクイーンは地下に戻って行ってしまった。
「なんだよそれ・・・僕の特訓よりも友達が上だなんて、ジャックとほぼ同じじゃねえか!」
一人草原で愚痴った後、ロイドはクイーンに言われた弾を撃てるようにしろという目的を遂行するべく考えた。
(僕の時は弾が出ずクイーンの時は弾が出る、考えられる可能性は魔術による弾の生成だろうけど詠唱も無しにどうやって―――)
一人思案していくロイド。中々答えを導き出せずに時間は過ぎていき日が暮れそうになっていた。
「まずい、夜はさすがに練習なんてできないぞ、一回試してみるか」
小銃を的に向かって構えてスコープ越しに見て考えた方法を片っ端から実践してみることにした。
「生成の魔術よ、マナの路を開き我に力を与えよ【クーゲルアイス】」
(詠唱による弾の生成でどうだ)
詠唱を唱えると銃口の先っぽから氷の弾丸が出現したがただそれだけでボトリと弾は地面に落ちた。
「次だ。ショット」
クイーンの真似をして言ってみるが何も起きない。
「だめか~~、なんだよこれ難しすぎだろ」
日が暮れ辺りが真っ暗になっていきロイドは何もつかめないままその日を終えた。
「よしっ!今日こそ」
昼頃に地上に上がり的の正面に立った。
(昨日から必死こいて作り上げたこの術で!)
「内部生成の魔術よ、マナの路を開き我に力を与えよ【クーゲルアイス】」
「弾丸回転の魔術よ、マナの路を開き我に力を与えよ【ライフリングメイク】」
【射出】
ロイドは二つ詠唱をして小銃の内部に弾と発射する為の構造を無理やり作り上げて最後に幻実の魔術の時と同様に射出と言った。
小銃内部から大きな音がなりながら数秒後、大きな反動と共に勢いよく銃口から弾は飛び出していき的の端に当たった。
「撃てたは良いけどこれって・・・」
クイーンがやっていた事とは絶対に違う方法であると共に反動により狙いが定まらないという欠点があった。
「なにやってるのよ、そんなんじゃ合格どころか一発退場よ」
後ろから声がすると思ったらクイーンがこちらに向かって歩いて来ていた。
「ロイがさっきやった事は例えるならこの橋渡るべからずって書いてある看板を見て中央を渡る禿げ坊主と同じ事よ、それは正解とはよべない、行った時に発生する被害から考えてもそれを肯定しようとするのは愚行であり自己満足に過ぎやしないのよ、いい!」
近寄りながらクイーンに説教され意気消沈としたロイドはただ「はい」と答えた。
「しょうがないからヒントを教えてあげる、ジャックとの戦闘で貴方がやった事、それとキエラでの戦闘で使った術を混ぜて一つにする、威力は凄く弱くなるけど人一人殺せるくらいには威力がある弾が生みだせると思うは私がやった事はそういうもの、それじゃ!」
少し頬を赤くしグチグチと愚痴を吐き捨てながら帰って行った。
(ジャックとの戦闘、キエラとの戦闘、その両方で使った術を合わせる?)
頭の中がこんがらがりながらもロイドが考えていると
「あ、雨だ」
ポツリと雨粒が一つ手の甲につくとそこから急激に雨脚が強まっていった。
「ヤバい!」
地下への階段に駆けこむと自動で上からシャッターが下ろされて外に出られなくなってしまった。
「お!ロイドじゃねえか」
階段を上ってきたのはジャックだった。
「何ですかこれ?」
ロイドはシャッターを指さして聞いてみると
「雨を中に取り込まない様にする為のシャッターであり襲撃されたときに守ってくれるシャッターでもある、ホレッ!この通り」
ジャックが右ストレートをシャッターに繰り出すがガシャガシャ音を鳴らすだけで傷はついていなかった。
「凄いですね、けど特訓が」
「あぁ、クイーンのか、彼奴の特訓どうよ」
「それが今詰まってて、弾を生みだせってのが目的なんですけど全然分かんないんで」
「そうか、俺もそこら辺の事は分からないけど確か彼奴も幻術を使えたはずだってのは分かるんだが」
「使えるんですか?」
「うん?ああ、お前並みの凄い奴じゃないけど少しなら使えるんだぜ彼奴、それを使って彼奴は自分で戦い方を生みだしたんだ。それがあの銃、普通とは違かったろ?」
「確かにそうですね」
(僕が知らなかったのも無理ないのか、独自であんな事が出来る人なんてそうそういないだろうに、どうなってんだこの組織)
「今日は筋トレにでも励め、今日はシャッターは閉まったままだろうからな」
「それじゃあなんでジャックはここに?」
「単なる仕事だよ、シャッター前で警備」
「そうなのか、まあ頑張って」
ロイドはそう言うと階段を下りて自室に行った。
椅子に座り机の端に小銃を置いてどうやって弾を生みだすか考えていた。
(少量の幻術で出来ると言ったら箱の生成、待機と射出だよな・・・?!)
小銃を構えて思った事を繋げてみる。
(弾を生成する箱を脳内作る、そして待機、最後に引き金を引きながら【射出】)
壁に勢いよく弾が放たれて壁にめり込む、近づいてよく見てみると弾は形を保ったままだった。
「そうか、簡単な工程でここまで出来るのか!僕が考えていた弾を生みだすのとは少し違って回転はさせなくて良い、引き金を引くことによる弾に振動が伝わり、それと同時に放つ事で速度を急速に上げながら弾は銃口から射出される、よくできてるな」
ロイドは弾を生みだし撃てたことに歓喜して一人で盛り上がっていると
「ロイ、何やってるのかな?」
扉の前で鬼の仮面を被ったような顔つきのクイーンが立っていた。
「な、なにって弾の生成と射出をですね・・・」
「ちょっとつらかせ」
「はい・・・」
なぜ怒られているのか明白だったのでロイドは渋々クイーンの後に続き地下奥深くに行った。
「入れ」
「ここって」
「入れ」
「・・・はい」
光の届かない独房の中に入れられたのち
「そこで五日間反省な」
「え?特訓は?」
「ロイのお陰で五日余ったからね、ありがとう」
「・・・」
予定より早くロイドが出来るようになったのでスケジュール的にも余裕が出来たという事だろう。
「それじゃ、水と塩は持ってくるから」
「え?ちょ、えぇえ!」
独房に入れられたロイドは五日間、壁に穴をあけたという罪状で入れられることになったのだった。
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