地下通路
「ハァハァ」
俺は暗い線路上を必死で走っていた。薄暗く、不気味で、ところどころにある蛍光灯を目印にして、彼女が行ったと思われる方向へと。もうすでに、彼女の足音も気配も存在しない。
本当に俺でよかったのだろうか。
俺は確かに彼女を愛していた。ただ、それは彼女が美しいからという理由に過ぎない。もし彼女があの連続殺人犯だったとして、俺はそれでも彼女を心から愛していると言えるのだろうか。
彼女の方はどうだろう。彼女にとっては、自分を愛してくれる存在であれば誰でもよかったのではないか。彼女は本当に俺のことを愛してくれているのだろうか。
そんな邪念を抱きながら走っていると、線路の横に空いているドアを見つけた。恐る恐る覗いてみると、舞衣が腕を組んで待っていた。
俺がドアの中へ入るのを確認すると、後ろから誰も着いてきていないことを確かめ、ドアを閉めた後にどこからか取り出した鍵で施錠をした。
「ここまできたらもう少しよ」
彼女はそう言うと、再び先行して歩き出した。ドアの先は狭い階段が続いており、それをただ黙々と俺たちは下り続けた。
俺は、さっき抱いた疑念をずっと引きずったままでいた。