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97.少女六人

 シエラ達は森から引き返して、町の方へと戻った。

 その間にもう一度敵が襲ってくるということもなく、フィリスが先導する形で隠れながら町の中を進む。

 リーゼとフィリス、それにマーヤの三人はローブのフードを目深に被り、顔は見られないようにしていた。

 それでも、ある人物の目を誤魔化すことは難しい。

 何せ、その人もまた――シエラと同様にアルナを守る立場にいるのだから。


「あらら、ようやく戻ってきたと思えば……随分大所帯になって戻ってきたのね?」


 宿の近くまでやってきたところで、シエラ達の前に降り立ったのはコウだった。

 腰に剣を携え、手で触れるようにしながらフィリス達に視線を送る。

 当然、フィリスが臨戦態勢に入ってコウと向き合うが――そんな二人の間に割って入ったのは、シエラだった。


「コウ、ただいま」

「はい、おかえり。シエラさん、その子らは?」

「わたしが守ることにした」

「……なるほど?」


 コウがシエラの言葉に対して頷きながらも疑問系で返す。

 ちらりと視線を、アルナの方へと向けた。

 今度はアルナがコウの前に立ち、


「この人達は私の協力者です。フェベル先生、貴方と同じ立場ということになります」

「森の方を見学してきたと思ったら、随分なところで協力関係結んできたのね。まあ、あたしはアルナさんを守るのが役目だからさ。本来あなたが誰と手を結ぼうが口出しはあまりしないつもりなんだけど……相手が相手でしょ」


 コウもすでに気付いているようだ。

 リーゼとフィリス――この二人はすでに大々的に指名手配されている。

 コウもそれを知っているからこそ、彼女達と手を組むと言っているアルナに対して警告をしているつもりなのだろう。

 そういう意味では、コウがアルナのことを真っ当に心配していると言える。


「それは……分かっています。フェベル先生の負担になるかもしれませんが……」

「いやいや、負担にはならないわよ。早い話、あたしはアルナさんを守ることに集中すればいいだけだからさ」

「コウはそれでいいよ。わたしがアルナとマーヤを守るから」

「こら、先生忘れてる――って、マーヤ?」


 シエラの言葉を聞いて、コウが改めて三人に視線を向ける。

 リーゼとフィリスについては知っている――だが、マーヤについてはコウは知らないだろう。

 それもそのはず、マーヤについては、リーゼとフィリスが保護したただの少女に過ぎないのだから。

 ローブで顔を隠しているが、マーヤは見られていることが分かったのか、ぎゅっとフードの端を押さえてフィリスの後ろに隠れる。


「……」

「えっと、どういうこと?」


 さすがのコウも状況が飲み込めなくなり、困り顔でアルナを見た。

 アルナが改めて、事の顛末を説明する。

 リーゼとフィリスが何故森にいたのか。そして、二人がマーヤという少女を守る理由。

 これらを踏まえて、アルナがリーゼと同盟を結んだことまで、だ。

 一通り話を終えると、コウが納得するように頷く。


「なるほど、ね。森で適当に拾ってきて同盟を結んだわけじゃないってことね」

「そんなこと、アルナちゃんはしませんよ!」


 コウの言葉を聞いて、ローリィが強めに否定する。

 スッとコウが指を立てると口元に当て、ローリィに指示をする。


「静かに、ね。ローリィさん」

「くっ、わ、分かってますよ」

「……で、三人を匿うために一先ず宿までやってきた、と」

「そういうことです」


 コウの問いかけに、アルナが頷くを

 だが、コウが困った表情を浮かべながら、宿の方を見た。


「まあ、あたしとしては最初に言った通り誰と手を組んだとしても止める権利はないよ。最優先で守るのはアルナさん――ただ、子供が関わっているっていうのなら、多少は融通は利かせる」

「ごめんなさい……でも、ありがとうございます」

「ま、可愛い生徒の頼みだからねー」

「何が可愛い生徒だ……」

「ローリィさん、聞こえてるわよ」


 一先ず、コウも同盟を結ぶことについては了承してくれた。

 リーゼがコウの下へと近寄り、


「わたくし達の自己紹介は不要、かしらね?」

「まあね。状況は少なくとも知ってるから。あ、こんな話し方でごめんなさいね。一応貴族の方には礼儀を……って言うのが基本なんだろうけど、あたしそういうの苦手だからさ。あはは、こういうところは講師失格かもね。シエラさん、真似しちゃダメよ」

「うん、分かった」


 コウがシエラを名指ししたのは、この場においてコウの真似をしそうなのがシエラしかいなかったからだが――言ったところでシエラはすでに貴族だろうがお構い無しに普段通りの言葉で話している。

 ただ、コウが変わらず困った表情を浮かべながら、


「まあ、あたしはいいんだけど……宿って三人部屋じゃない?」

「……そうですけど――あ」


 コウの言葉を聞いて、アルナもすぐに気付いたように間の抜けた声を漏らす。

 シエラは最初から気にしていなかったが、拠点となる場所はそこまで広い部屋ではない。


「……六人で過ごすにはちょっと狭いんじゃないの、って。まあ、あたしはいいんだけどね?」


 新しい部屋を用意することはできない。そこをコウは強調したいのだろう。

 三人部屋に少女六人――そんな小さいようで大きな問題が、目の前にあった。

三人部屋……女の子が六人。何も起きないはずもなく……?

すみません、入院してるのでちょっと更新遅れました!

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タイトル変更となりまして、書籍版1巻が7月に発売です! 宜しくお願い致します!
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