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5.シエラ、学園長と話す

 シエラが連れて来られたのは、学園内にある本館の一室――学園長室だった。

 遭遇した二人の男女はそれぞれこの学園に勤める講師らしく、たまたま近くを見回っていた際に結界に引っ掛かった侵入者――シエラに気付いたのだという。

 シエラを待ち構えていたのは初老の女性で、優しげな表情でシエラを迎え入れる。


「待っていましたよ、シエラさん。どうぞ、お席に。お二人は下がっていただいて構いませんよ」

「承知しました」

「何かあればいつでも言ってください」


 まだ、二人は少しシエラを警戒しているらしい。

 この学園を受ける予定の人物で、侵入者用の結界に引っ掛かるのは前代未聞のことだった。

 実際――人が登れるような外壁の高さではないのだから、驚かれるのも無理はない。

《ドラゴン》の住む《竜峰》という場所を探索した際に、エインズと共に崖に登る機会がたくさんあった。

 学園どころか王都の外壁くらいならば、シエラにとっては問題なく登れてしまうのだ。


「えっと……おばさんが父さんの知り合いの?」


 仮にもここの学園長をおばさん呼ばわりしてしまっているが――呼ばれた本人は気にする様子もなく笑顔で頷く。


「うふふっ、そうよ。アタシの名前はアウェンダ・シェリー。エインズ・ワーカー――彼には何度かお仕事の依頼をしたことがあるのよ。あなたも手伝ってくれたのではないかしら?」

「そうなのかな? 仕事は父さんが持ってくるから分からないや」


 シエラは仕事において交渉の場にはいない。

 いたところで話は分からないし、興味もないからだ。

 ただ、エインズの受けた仕事をこなす――それがシエラの日常だった。

 今も、エインズが王都で暮らすようにと言ったからここにいる。

 そういう意味では、シエラにはシエラの望むものが薄いと言える。


「きっと手伝ってくれていたと思うの。だから、エインズさんからあなたのお話を聞いて、うちの学園を受けてみないかって提案したの」

「そうなんだ」

「ええ、私的には特に条件もなく編入させてあげると言ったのだけれど、エインズさんがそういうところも含めて真っ当に……というお話を受けたのね。だから、明日あなたには編入試験を受けていただきます」

「うん、父さんには話を聞いてる」


 こくりと頷くシエラ。

 魔導学園というだけあって、編入試験には基礎知識のほかに《魔法学》といった科目があるという。

 さらに――


「実技試験では、実際にうちの講師と模擬試合をしてもらうことになるわ」

「模擬試合?」

「そう。うふふっ、エインズさんの娘さんのあなたなら、うちの講師でも倒してしまうかもしれないわね」

「……倒したらまずい?」

「そんなことないわ。あなたの実力を測る意味でも必要なことだもの」

「それなら、分かった」


 シエラの脳裏に過るのは、エインズから渡されている『凡人』ノート。

 基本的にはあれに従うつもりであるシエラは、少なくとも模擬試合で本気を出すつもりはなかった。

 ただ、手加減するということに慣れていないシエラは、上手く加減できるかどうかというところを少し心配していた。


(……どうして父さんは本気出しちゃいけないって言うんだろう?)


 そんな疑問も、シエラも持たないわけではない。

 あまりに強すぎるシエラが本気を出さないように、とエインズの残した文章はシエラにきちんと伝わっていない。

 ある意味では足枷にはなっているが、行動を制限するレベルにはなっていなかった。

 だから、学園外でもすでに目立つ行動をいくつか繰り返してしまっている。

 シエラに必要なのは、その常識を教えてくれる場所であり、それがまさにこの学園という場所だった。


「うふふっ、明日が楽しみだわ。そうだ、宿の方はもう見つけたのかしら?」

「ううん、これから探すところ」

「なら、今日は寮の空いている部屋を使ってもらって構わないわ」

「! いいの?」

「ええ、どのみち朝からここで試験をするのだから、ここにいた方がいいでしょう? それとも、外でまだ何かやることがあるのかしら?」

「何もないよ。王都を見て回ろうかなって思ってたけど、別に明日以降でもいいし。じゃあ、今日はここに泊まらせてもらうね」

「是非そうして。案内はさっきの女性……アリミア先生にしてもらうから」


 アウェンダの言葉に頷くシエラ。

 まだこの学園での生活が決まったわけではないが、明日の編入試験のためにここの寮で宿泊できることになった。


「うふふっ、そうだ。エインズさんには渡してあるけれど、きちんと教材で勉強はしてきたのかしら?」

「勉強?」

「あら、エインズさんにお渡ししたはずだけれど……」

「……そうなんだ、じゃあ大丈夫」

「本当に?」

「うん」


 アウェンダの問いかけにそう答えるシエラ。

 実のところまったく勉強などしていないシエラだったが、何も前準備もしないまま試験に挑むつもりだった。

 おそらく、ノー勉のまま編入試験を受けるのもシエラが初ということになるだろう。

 ――そして、明日の試験でもまた、シエラは学園史上で初の事件を起こすことになってしまう。

そろそろ無双感を出していきたいなと思います。

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タイトル変更となりまして、書籍版1巻が7月に発売です! 宜しくお願い致します!
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