122.行先を決めるために
「全く……人が着替えている時にノックもせずに入ってくるなんて、非常識に程がある」
「ごめん」
町に出て、シエラはアルナとローリィと共に、三人で町を歩いていた。
まだ先ほどのことをで、シエラはローリィから説教を受けているところだ。
「大体、今の状況が分かっているのか? 夏休みだからって初日から遊びに出るなんて……。数日としないうちにカルトール家に戻る時、お前も来るんだぞ? 同じようなこと、あの家でやってみろ? ただで済むと思っているのか」
「えっと、ローリィ……その、ごめんなさいね」
「! な、なんでアルナちゃんが謝るのさ」
「『遊びに行こう』って誘ったのは私からなの。だから、シエラは怒らないであげて?」
「! ア、アルナちゃんが?」
少し動揺した様子で、ローリィがシエラに視線を送る。
シエラはこくりと頷いて、
「うん、アルナから誘われた」
そう答えた。すると、ローリィは取り繕うにアルナに向かって言う。
「えっと、うん。別に怒ってはいないよ。アルナちゃんからの提案なら……でも、どうして急に?」
「これからシエラも一緒に、カルトール家に来てもらうことになるじゃない? そうなったら、シエラも自由に行動できなくなるかもしれないから。せめて、行く前くらいは一緒に遊んでおきたくて。これも私のわがままなのだけれど……」
「わたしはアルナに誘われて嬉しかったよ。いつでも誘ってほしい」
「ふふっ、ありがとうね」
シエラの言葉に、アルナは笑みを浮かべて答える。そんなやり取りを見てか、ローリィも小さくため息を吐いて、
「そういうことなら……今日は遊ぶとしよう。さっきのことも、不問にする」
ノックをせずに扉を開けたことも許してくれるようだ。
シエラはローリィの顔を覗き込むようにして、礼を言う。
「ありがと、ローリィ」
「別に、礼を言われる筋合いはない。反省だけはしっかりしろ」
「うん、分かった。それで、これからどうするの?」
シエラはアルナに問いかける。
これからの目的などは特に聞いていなかった。ただ町に遊び行く、とだけしか分かっていない。
「そうね……何か案はある? 後で買い物には行きたいと思っているけれど、いきなり向かうと荷物になってしまうし。ローリィ、あなたはどこか行きたいところ、ある?」
「僕? 僕は特には……。アルナちゃんが行きたいところでいいよ」
「そう。シエラは?」
「どこでもいいよ。楽しいところ」
「……少しくらい計画は立てておくべきだったかもしれないわね」
遊びに出ると言っても、本当に目的もなしに町に出ると、シエラは特に行きたい場所などあるわけではなかった。
ただ、楽しめるところならどこだっていい。
ローリィはというと、シエラに似たところはあるだろう。
きっと、アルナと行く場所なら彼女はどこだって構わないはずだ。
そうなると、自ずと『遊びに行く』と切り出したアルナが、行く先を決定することになる。
考え込むようにしながら歩くアルナ。
しばらくすると、喫茶店が見えてきて、アルナはその前で足を止める。
「そうね。一先ず、ここで飲み物でも飲みながら考えましょうか。いざ言われると、中々思い浮かばなくて……」
頼りのアルナも、そもそも『町で遊ぶ』ということに関してはそこまで強いわけではなかった。
シエラとローリィは、アルナの意見に逆らうことはなく、二人とも頷いて答える。
「それじゃあ、そうしようか」
「うん、それでいい」
これからどこに行くか――それを決めるために、三人は喫茶店へと入っていった。
遊び初心者しかおらん……。





