表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/129

10.シエラ、紹介を受ける

 翌日――シエラは再び学園長室にやってきていた。


「うふふっ、よく似合っているわ」

「……ありがと」


 学園指定の白のシャツに緑色のブレザーを着たシエラがそこにはいた。

 褒められて、少しだけ嬉しそうな表情をするシエラ。

 いつもは仕事でエインズが褒めてくれるくらいだったが、こうして服を着て褒めてもらうという経験はほとんどなかった。

 それに、スカートというのも経験したことがない。

 ヒラヒラとスカートをめくるように確かめる。


「それは校内でやってはダメよ?」

「どうして?」

「風紀が乱れる、とでも言うのかしら」

「……ふーき?」

「うふふっ、そういうことも学んでいければ良いわね」


 アウェンダは笑顔でそんなことを言う。

 学園長室での話も程々に、シエラは講師の一人に案内されて教室へと向かう。

 校舎内は広く、シエラは時折外を見ながら場所を把握する。

 こういった建物の構造を把握するのは、シエラの得意とするところだった。

 しばらく歩いたところで、とある教室の前で待機させられる。


「フェベル先生、連れてきました」

「お、ありがとねー。後はこっちで受け持つからさ」


 教室から出てきたのは――第一印象で胸の大きな女性だった。

 肩にかかるくらいの赤みがかった髪。

 少しつり目な感じだが、声の印象では快活な印象を受ける。


「あなたがシエラさんねー。あたしはコウ・フェベル。あなたのクラスの担任よ」

「コウ……覚えたよ」

「あははっ、そこはせめて先生とかつけるところだよ」


 ぐしぐしと頭を撫でられて、シエラの視界が揺れる。

 シエラはコウの言うことには従い、


「コウ先生?」

「はい、素直でよろしい。じゃあ、紹介するから教室に入ってねー」


 促されるまま、シエラは教室内へと入っていく。

 教室内には、およそ二十人程度の男女がいた。

 ――視線が一気にシエラに集中する。

 同時に、教室がざわつき始めた。


「え、あの子がマグニス先生を……!?」

「どんなごつい奴が来るのかとおもったら……」

「すごい美人さん……」

「はいはい、各々感想を述べたい気持ちは分かるけど、それは後程本人にでも伝えてねー」


 コウの言葉と共に、教室内が静まり返る。

 シエラが講師であるホウス・マグニスを倒して合格した――その事実が、すでにクラスでは広まっていたのだ。

 練武場を覗いていた生徒がいて、そこから広まっていた。

 シエラは、観客席ではないところからの視線にも気付いていたが。

 それよりも、教室の隅にいる一人の少女と目が合う。

 そこにいたのは、昨日の夜に出会った少女――アルナだった。

 アルナは何故か、思い詰めたような表情でシエラを見ている。


(……? 昨日と何か、雰囲気が違う?)


 そういう微妙な変化には、シエラは敏感だった。

 ただ、敵意があるというわけではない。

 何となく緊張している、という雰囲気だった。


「――というわけで、今日からこのクラスに編入することになったシエラ・アルクニスさんねー。まあ色々と噂は広まってるみたいだけど、この子は田舎から出てきたばかりの子だから、あたしがいないところでも面倒見てあげるように。シエラさん、何か自己紹介やっていいわよー」

「自己紹介?」

「そうそう、適当にさ」

「……シエラ・アルクニス、だよ?」

「あははっ、そこはあたしが紹介したところじゃないの」


 そうは言われても、とシエラは困ってしまう。

 別段話すようなこともない――そう思っていたが、昨日確認した『凡人ノート』にこういう場面で言うべきことが書かれていた。


「えっと、父さんとはよく色々なところを冒険?したから、そういう話なら、できるよ」


 傭兵時代のことを冒険というように言い換えたのだ。

 クラス内でも意外と受けはよく、


「冒険だってよ」

「私達と同い年なのにすごいね」


 そんなことを口々に話している。


「じゃあ席は……アルナさんの隣ね。色々と面倒見てあげて」

「っ! わ、分かりました」


 指名されたアルナはまた、どこかぎこちない返事をしている。

 シエラが自身の席につくと、


「……同じクラスだとは思わなかったけど、貴方の話は聞いているわ。よろしくね、シエラさん」

「うん、よろしく」


 話してみると、別段変わった様子はない。

 気にしすぎだったのだろうか――そう思っていると、


「じゃあ編入生も加えたところで……授業始めるわよー。シエラさんは分からないことがあったら何でも聞いてね」

「うん、分かった」


 早速始まる授業は世界の歴史に関わる授業――当然のごとく、シエラには何も分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトル変更となりまして、書籍版1巻が7月に発売です! 宜しくお願い致します!
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ