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1.最強の傭兵、引退する

 二人の男女が、岩陰に身を潜めていた。

 男は無精髭を生やし、筋肉質な身体付きをしている。

 薄汚れたローブに身を包み、周囲を窺いながらもう一人――少女へと話しかけた。


「いいか、シエラ……俺はこの戦いが終わったら、引退しようと思っている」

「それ聞いたことある。《死亡フラグ》ってやつでしょ?」

「いやいや、父さん死なないから。お仕事引退するだけだから」


 少女――シエラの言葉を慌てて訂正する男。

 男の名はエインズ・ワーカー。

 世界を渡り歩いてきた最強と名高い傭兵の男だった。

 魔法と剣術に優れた《魔法剣士》であり、戦場で彼が味方を

 すれば必ず勝利をもたらすと言われる。

 そんなエインズに育てられた少女――シエラ・ワーカー。

 エインズに幼い頃に拾われて、魔法と剣術を教わってきた。

 銀色が特徴的な長い髪を持ち、しっかりと身なりを整えればいいところのお嬢様と思われてもおかしくはない。

 今は、エインズと同じく薄汚れたローブに身を包んでいるが。

 未だ十五才ながら、すでに戦闘面ではエインズと並ぶ実力者である。

 この二人が肩を並べれば、国一つとでもやり合うことができる――そのはずなのだが、


「でも、突然引退なんてどうしたの?」

「前から考えていたことさ。シエラ、お前はいくつになる?」

「んーと……二十?」

「逆に盛る子初めてみたよ。十五だ、十五」

「そうなんだ、あんまり興味ないから」


 シエラはそう答える。

 本当に興味のないことだった。

 シエラは戦場で生き、戦場で育った。

 死ぬとしたら、戦場がシエラの死に場所ということになる――そう思っていたのだが、父の突然の引退宣言。

 多少なりともシエラも困惑していた。


「じゃあ、これからは田舎で静かに暮らす、とか?」

「お前に語った俺の将来像は置いといて、だな。俺はお前を連れていくつもりはない」

「……え?」


 思わずシエラが聞き返す。

 また、エインズは慌てて言葉を付け加えた。


「ま、待て待て! そんな悲しそうな顔をするな! 見捨てるとかそういう話じゃない!」

「……別に悲しくないし」


 唇を尖らせて、そう答えるシエラ。

 そんなシエラの頭を、エインズは優しく撫でる。


「父さん色んな暗殺者に追われるくらい有名だからさ。しばらくは身を隠す予定だ。お前はまだ俺と違って狙われてない」

「……別に、二人でなら暗殺者なんて怖くないよ。何だったら、父さんだけでも余裕でしょ」

「超余裕だが、論点はそこじゃない。これを機に、お前には色んなことを知ってもらいたいんだ」

「色んなこと?」

「そうだ、俺が教えてやれることは魔法や剣術――それに戦い方ばかりだったが、人間はそれだけじゃないんだ」

「……何か、お父さんみたいなこと言うね」

「父さんだぞ」


 エインズの言葉を聞いて、くすりと笑うシエラ。

 だが、シエラは戦場以外のことに興味が向いたことはない。


「じゃあ、父さんが色々と教えてくれればいいのに」

「父さんそういうの教えるの下手だから――っていうか、父さんといると普通の交遊関係あんまりできないからね。友達とか、できたらきっと楽しいぞ」

「……友達、別にいらないけど」

「そんなこと言うなって。父さんの知り合いのツテがあるから。父さんと別れるのが寂しいのは――」

「別に寂しくない」

「そ、そうか。……なに、今生の別れというわけではないんだ。お前にはこれからもっと幸せな人生を歩んでほしい。そういう父さんのささやかな願いだ」

「……まあ、父さんがそう言うなら、わたしは従うけど」


 やや不服そうに、シエラは答える。

 夜風の中、父と娘は離れ離れになる話をした。

 不意に遠くから、多くの足音が聞こえてくる。

 エインズが立ち上がった。


「そういうわけで、シエラ。これが父さんとの最後の仕事だ。手を抜くなよ」

「うん、死亡フラグ立てた父さんが死んじゃうかもしれないしね」

「だから死なないよ! 父さん強いから!」


 傭兵の二人は、やってくる軍勢を待ち構える。

 相手は人ではなく、《魔物の軍勢》だった。

 だが、二人は臆することなく魔物の軍勢に立ち向かう。

 翌日――その場に残されたのは多くの魔物の死骸だけだった。

 そして、二人の傭兵は表舞台から姿を消した。

ネタに詰まったので前々から書きたかったものを連載することにしました。

気軽に見てください。

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タイトル変更となりまして、書籍版1巻が7月に発売です! 宜しくお願い致します!
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