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第97話 2人は良い子です

全然暑くないので、夏って感じがしませんね。

「あれ?コルネリウス様から聞いてなかったの?」


「そんな事は一言も…。」


ニコラは焦りからか、聡の袖をギュッと握りしめながらオロオロしている。


「…怖いと思う?」


「…。」


予想外のところで吸血鬼という事に驚かれてしまい、フラウは先程から黙っている。


「えっと…フラウさんがサトシ様と一緒に居るって事は、悪い事をしない人、じゃなくて吸血鬼、なんだよね?雰囲気も柔らかいし…。」


ニコラの視線は、フラウと聡を行ったり来たりしているが、怯えた様子は無いようだ。


「…理由は兎も角、確かにフラウさんは悪い子じゃないよ。特定の人以外の血を吸ったりしないし、傷付けたりしないし。」


全身全霊で信頼を寄せてくるニコラを、苦笑いしながら頭を撫でてやる。ほぼ犬猫扱いだが、それでもニコラは嬉しそうに頬を緩ませて、されるがままになる。


「ニコラ様、ありがとうございます。」


「え?何でお礼を言ったの?」


自分自身の力だけでは無いが、それでも認めてもらえた事を嬉しく思ったフラウは、微笑みながらニコラに頭を下げる。

頭を下げられた当の本人は、何でお礼を言われたのか分からず、首を傾げているが。


「じゃあ、もう少し魔物を倒してから帰るか。」


「うん!」


「分かりました。」


一時はどうな事かと思ったが、ニコラが話の分かる子だった事と、彼女の謎の信頼度の高さのお陰で、事なきを得た為、もう少しこの場に留まる事にした。


この後、聡の拳銃に驚かれたりなど、多少の騒ぎはあったものの、平和にクエストを終える事が出来たのだった。

_____________________________________________


「じゃあまたね〜!」


「あぁ、またな。」


「はい、またお会いしましょう。」


クエストは無事成功という事で、しっかりと報告して破格の報酬を貰ったところで、今日はお開きとなった。

ニコラは、ギルドまで馬車が迎えに来ていたので、聡とフラウでそれを見送ってから、宿への帰り道を歩いていく。


ーなるどな。例の事件の時の報奨金や、賠償金を一切受け取らなかったから、今回の簡単な依頼で、その分の補填をしたって事か…。ー


何と報酬は大金貨50枚で、日本円で約500万円くらいである。

昼過ぎから夕方までの数時間でこの報酬が出るクエストなど、他には絶対に無い。聡はこの報酬について、大慌てで固辞しようとしたが、最初に確認しなかったのが悪いという事で、エーリカには、にべも無くきっぱりと却下されてしまった。


今朝、契約書云々を、フラウと話したばかりなのに、何とも情けない話である。


「さてと、この後はどうする?じゃなくて、どうしますか?」


「…サトシ様。やはり敬語は無しにして頂けませんか?他の方々に比べて、疎外感を感じてしまいます。」


「…そう言われると、確かにそうですよね。うん、分かったよ。素で喋らせてもらうよ。」


今後、もっとも長い時間を、共に過ごすであろう人物に、そう言われてしまっては、聡も頷く他無い。


「ならフラウも。」


「私は、お仕えする身ですので。」


「うぉい。」


フラウにはその気が無いようで、即座に断られてしまった聡。思わず気の抜けたツッコミをしてしまう。


「取り敢えず、このまま宿に戻るって事で良い?」


「はい、大丈夫です。」


寄りたい所も無いようで、フラウは即座に頷く。


「うん、じゃあ帰る(・・)か。」


「…はい!」


聡の言葉に、フラウは一瞬間を空けるが、段々と頬を緩ませていったかと思うと、元気な声で返事して、嬉しそうに聡の後に続くのだった。

<hr>

その夜、聡は自室でノートをとっていた。


ーであるからして、フラウは…。ー


「はぁ…。」


日本語で書いているノートから顔を上げて、ため息を一つつく聡。


ー昼間に見たあの魔法は、スキルレベルが5以上無いと使えないやつだった。15歳になったばかりのフラウでは、本来なら使えないものだ。つまり…。ー


吸血鬼は、15歳の成人を迎えた際に、【血液魔法】のスキルがステータスに追加され、そこで初めて使う事が出来るのだ。

しかし昼間にフラウが使った【ブラッディレイン】は、スキルレベルが5無いと使用出来ないもので、1ヶ月で5まで上げるのは不可能に近い。

しかし、唯一産まれた時から、【血液魔法】のスキルを高レベルで有している存在があった。


『コンコン』


「…はい、どちら様ですか?」


深い思考の海に沈んでいた聡の意識は、急にノックされた扉の音によって、一気に現実へと引き戻される。


『フラウです。…入ってもよろしいですか?』


どこか言いづらそうなフラウの声が聞こえる。


「入って大丈夫だよ。」


聡は良く考えもせず、反射的に答える。夜に女性を部屋に入れるという意味を…。


「し、失礼します。」


恐る恐るといった感じで、部屋に入って来るフラウ。


「で、何か話でも…何故そんな格好?」


入って来たフラウに視線を向け、用件を伺おうとしたが、フラウがネグリジェを着ているのを見て、流石に指摘せずにはいられなかった。

おやおやおや?この流れは…。

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