表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/129

第91話 コルネリウス邸にて(1)

部屋にクーラーが無いので、最近はへばってる事が多いです…。

「おはよう、サトシ殿。また少女を救ったようですね。」


「お、おはようございます、コルネリウス様。その言い方だと、まるで私が少女ばっかり救ってるよと勘違いされてしまいます。」


コルネリウスの屋敷の応接室に入り、開口一番とんでもないセリフが飛んで来た為、聡は苦笑しながら返す。


「まぁまだ2人だけですから、『また』と表現には、語弊がありましたね。では、お掛け下さい。」


聡をからかって満足したのか、ソファを指し示すコルネリウス。


「はい、失礼します。」


「…。」


「えっと、君は座らないのかい?」


聡の背後に立ち、そのままソファに座る様子の無いフラウに、コルネリウスが遠慮がちに声をかける。


「はい。私はサトシ様にお仕えする事になりましたので、お話はこのままさせて頂きます。」


「いや、話が長くなるかもしれないので、隣に座ってもらえますか?」


「…はい、畏まりました。」


謎理論で座ろうとしないフラウに、聡がお願いしてみると、案外直ぐに座ってくれる。


「な、何だか妙な事になっているようですね…。えっとまずは、そちらのフラウさんについて、お話させて下さい。」


「はい、分かりました。」


すっかり戸惑っていたコルネリウスだが、気を取り直して、本来の目的を果たそうと、真面目な顔を作る。それに合わせて、聡とフラウも表情を切り替える。


「まず聞きたいのは、フラウさんはどうしてサトシ殿に着いてこようと思ったのですか?」


「それは…サトシ様が、血を吸っても大丈夫な方だからです。」


「血を吸っても大丈夫、ですか?」


「はい。…私は、人族を殺すのが嫌で、今まで一滴も血を吸えませんでした。そんな中、森で禁断症状になり、錯乱した状態でサトシ様の血を吸ってしまったのですが、全く平気にしておられたので、この方と一緒であれば、生きていけると思い、御一緒させて頂きました。」


言いづらそうだが、理路整然と分かりやすい内容の理由を話す。


吸えなかった事と、森の中に居た事の因果関係については触れていないが、コルネリウスの目的は、『フラウは安全かどうか』の判断である為、その人柄が知れればそれで十分な為、納得したように頷きながら、聡に視線を向ける。


「なるほど。フラウさんの事情は理解しました。次はサトシ殿に質問です。」


「はい。」


「サトシ殿は何故、フラウさんを街に連れてこようと考えたのですか?」


「フラウさんはあのままでは、また人を襲い、殺害してしまう可能性があったからです。それに、フラウさんは私の血を吸った後、『なんて事を…』と後悔されてたので、通常の吸血鬼とは違うなと対話したら、こちらに敵対する意思が全然無かったので、見捨てるのも後味悪いと、保護した形になります。」


「…さっきから言おうと思ってたのですが、禁断症状を吸血鬼に血を吸われて、良く生きていますね。ものの十数秒で絞りカスになると、以前聞いた事があるんですが。」


連れてきた事情以前に、聡の異様な生命力に、コルネリウスは物申したいようだ。


「あははは…。ルドガーさんから報告があったと思いますが、私は最低でも300年生きている、なんちゃって人族ですので、多少の事では死ねないんですよ。」


なるべく暗い印象を与えようと、目を伏せながら生き残った理由を言う。これ以上、自身の肉体の特異性に、触れてほしくないので、演技をしているのだ。


「…そ、そうなんですか。えっと、サトシ殿の考えも理解しました。ルドガーからの報告だと、万が一の時はサトシ殿が全責任を負うという事になっていますが、こちらとしては、解決と補填をして頂ければ、それで大丈夫です。」


聡の演技を、本当の反応だと受け取ってくれたのか、コルネリウスは分かりやすく話を変えてくる。


「はい、分かりました。取り敢えずは、フラウさんをこの街に置いて、大丈夫という事でよろしいでしょうか?」


「はい、フラウさんをこの街に置く事を、許可させて頂きます。」


「ありがとうございます。」


「ありがとうございます。コルネリウス様。」


ちゃんと言葉にして、フラウの滞在の許可を出したコルネリウスに、聡とフラウは頭を下げて礼を言う。


「いえいえ。他ならぬ、サトシ殿の頼み事ですから。では、この話は以上にして、そろそろニコラを呼んでも大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です。」


「助け出された翌日から、会いたい会いたいと騒いでおりまして、目を離せば街に出ようと、身支度を始める始末でして、大変でした。…ニコラを呼んでくれ。」


どこか疲れた表情で、コルネリウスは言う。よっぽど抑えるのが大変だったのか、虚ろな目をしており、聡は表情を引き攣らせる。


『はい、畏まりました。』


そんなコルネリウスの指示を、ドアの向こうで受けたメイドの気配が、離れていくのを聡は見送ってから、口を開く。


「あんな目に合ったのに、お転婆は治らないのですか?」


代官に大してするような口の利き方では無いが、その言葉は純粋に心配する気持ちから出たものなので、コルネリウスも何も言わずに、より一層疲れた表情をする。


「…お恥ずかしながら。『いきなり会いに行っても、サトシ殿に迷惑だぞ』と言えば、直ぐに大人しくなるので、比較的マシですが…。」


目頭を押さえて、溜息をつくコルネリウスを見て、心の中で『ご愁傷様です…』と呟く聡。

無事フラウの事が認められ、気が抜けた聡は、リラックスした状態で、ニコラの到着を待つのだった。

最近、旅行行きたい欲(?)が凄いです。

怖くて行けませんが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ