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第74話 やばいです

5000兆円欲しい(切実)!

勝負が決した後、酔い潰れたルドルフを、部屋にぶち込んでやった聡は、部屋に戻り、一息ついていた。


「ふぅ…。エンデ村の時でもそうだったけど、全然酔わなくなったな。」


ベッドに腰掛けて、落ち着く。そして、考えるのは、エーリカの事である。


-う〜ん。エーリカには、絶対に何かあるよな…。どうせ、数十年後とかに、懐かしくなって会いに来た時、問題が解決してないってのもな。それはそれで、気分が悪いな。-


ルドルフが、『自分の口からは言えない』と、頑なに断る様な問題だ。『果たして、自分に出来ることはあるだろうか?』と、思案する聡。


何だかんだ言うが、こうして悩んでいる事自体が、聡がまだ人間としての『在り方』を忘れていない証拠である。


ぼふっとベッドに寝っ転がり、スマホを開いて何気なく見る。


「…あっ!…めっちゃ連絡来とるやん。どうすっかな?」


チャットアプリと、電話の両方に、大量のメッセージや着信履歴が来ていた。


「父さんと母さん、それに妹、バイト先に、大学の友人…。これ、ほっとくと、警察とか動きかねないよな?」


実際の状況を目の当たりにしなければ、そこまで気にはならないが、こうして心配する文章等を見ると、どうにかしなければと、焦りを感じてくる。


「と、取り敢えず、親には電話しとくか…。」


焦りながらも、聡は連絡先を開き、少し震える手で、『自宅』と表記してあるところをタップして、コールをかける。


『プルルルル…はい、もしもし!』


「あ、もしもし。聡で『お、お兄ちゃん!?どこ居るの!?お母さ〜ん!お兄ちゃんから電話〜!』す…。」


電話をしたところ、妹の愛美(まなみ)が出たのだが、酷い慌てようで、全然こちらの話を聞く気は無いようである。


「おいおい…。実際の時間にして、一日やそこらで、そんなに慌てる事かね?」


聡は引いたように言うが、口元は緩んでいる。300年ぶりに肉親の声を聞いたのだ。それも当然であろう。

少し待つと電話口から、『ドタドタ』と大きな足音が聞こえてくる。


『さ、聡!?』


電話の向こうで、慌てた様子で聡を呼ぶのは、母の恵美(めぐみ)である。


「あ、母さん。」


『『あ、母さん』じゃありません!今までで何をしてたの!?』


「いや〜、ちょっと、厄介事に巻き込まれちゃってね。暫く顔を出せそうに無いんだよ。」


つとめて軽い口調で告げる。


『厄介事?というか、聡は一体、何処にいるのよ!?貴方の友人達に聞いても、誰も知らないって言うし!』


しかし、やはり恵美の混乱は避けられなかったようで、電話口で大声を出されてしまう。


「ちょっと現在地は不明。帰る手段も分かってない状態なんだ。」


帰る手段が分かったとしても、この体質で帰って、とてもマトモには生きてはいけないのだが。


『ど、どういう事よ?ゆ、誘拐でもされたの!?』


「似たような感じ。まぁ、拘束もされてないし、自由に行動しているよ。今は現地の宿にいる。」


『似たような感じって貴方。』


「まぁ兎に角、身の安全は確保されてるし、焦らなくても問題無さそうだから、心配しなくても大丈夫だよ。」


『警察とかは頼れないの?』


「残念ながら、警察は居ないんだよな〜。治安組織はあるけど。」


ヴィリー達を思い浮かべて、苦笑いする聡。日本の頼れる警察でも、流石に異世界までは、手が出せない。


『警察が居ない!?まさか貴方、海外に拉致されたんじゃ…。』


「多分ね〜。周囲は色とりどりの髪と目の色してるし、言語は日本語じゃないしね。金銭も、全く別のが流通してるよ。」


明らかに海外だと、誤解を招きそうな言い方をする聡。下手な嘘をつくより、情報を小出しにした方が良いだろう。


『何でそんなに気楽なのかしら…。』


「父さんに似たんじゃない?あの人、いつもお気楽じゃん。」


呆れたふうな恵美に、聡は父親の憲介(けんすけ)を脳裏に浮かべて言う。憲介は、それなりに売れた小説家であり、仕事の合間合間に海外を飛び回り、『紛争に巻き込まれた〜w』とか言いながら、数ヶ月帰宅しない事など、ざらにあった。


『それしか考えられないわね。まぁ聡もあの人の血を引いてるんだから、無事に帰って来れるわよね。』


「まぁ、権力者ともそれなりの関係性を築けたし、そのうち帰れるんじゃないかな?という事で、何かあったら連絡するよ。」


『何かなくても、定期的に連絡しなさい。』


「…はい、了解です。じゃ、またね。おやすみ。」


『えぇ、おやすみなさい。』


電話を切り、聡は枕元にスマホを放り投げる。


「ああは言ったけど、帰れんのかね?こりゃあ、明日から実験しないとだな。」


帰還方法について考える。それと同時に、エーリカの問題も並行して解決出来れば良いのだが、どちらも上手くいくのか自信が無い。


「まぁ、やる前から諦めたら、何も成せないからな。いっちょ気張ってみますか…。」


そして、再びスマホを開き、娯楽を探すが―


「oh......。バイト先のシフトと、友人達をどうにかせにゃならんな〜。」


―大量のメッセージを見て、軽く沈んだ気分になる。恵美があちこちに聞きまくったせいだろう。

こうして聡は、1晩かけて、連絡してきた友人達に、しばらく帰れない事を告げていくのであった。

果たして聡は、日本に帰還出来るのでしょうか?

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