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第66話 お出かけです

前回、エーリカさんの服装の描写の部分で、執筆時間の半分以上を持ってかれた事は、口が裂けても言えませんね…。


ファッションに興味が欠片も無い事が、こんな所に弊害として影響する事になろうとは…。

宿から出て、そのまま歩いていると、自分たちに多くの視線が突き刺さるのを感じた聡。


「なんか、注目されてるな。」


「私は、色んな人から視線を向けられるのには慣れてるけど、サトシは苦手なの?」


エーリカほどの美人であれば、どこに行っても注目の的であろう。


「まぁ、慣れはしてないかな?人から注目を浴びるような人生は歩んでないから。」


しかし聡は、そんな美人の隣を歩く、似つかわしくない男だ。非友好的な視線がビシバシ飛んでくるので、余計に落ち着かない気分にさせられていた。


「サトシほどの実力があれば、周りから注目されると思うんだけど?よっぽどの山奥に、1人きりで住んでたのかしら?」


「…中々鋭いな。まぁ、1人じゃなくて、友人と住んでたんだけど、ふと世界を回りたくなったんで、今はこうして旅の途中ってわけ。」


あっという間に、自身の境遇を見抜かれてしまった聡は、嘘を織り交ぜながら、適当な言い訳をする。

すると、エーリカの目付きが、何故か厳しいものへと変化していた。


「サトシ。その友人というのは、女の人…ですか?」


「い、いや、男だけど?というか、口調が戻ってるぞ?」


グイッと距離を詰め、責めるような視線を向けてくるエーリカに、慌てて答える聡。


「あ、つい無意識で。でもそう、男なら良かったわ。」


ほっと息をついたエーリカは、少し聡から離れる。


「何が良かったのかは分からないけど、それよりも、どこに行くんだ?」


首を傾げながらも聞く。取り敢えずは、自分自身の話から逸らせれば良いので、さっきから気になってた事を聞いてみる。


「ん〜、色々かな?まぁ、後のお楽しみという事にしておいて。」


『ふふふ』と楽しげに笑いながら、エーリカは教えてくれない。


-ただの買い物の割には、随分と楽しそうだな。何か良い事でもあったんかね?-


何とも能天気で鈍い聡は、のほほんと受け流す。


「そう?なら楽しみにしとくよ。」


だから、そう返す。自分自身を『そういう対象』として完全に排除してるからこその、この反応である。


こうして2人は、知人にしては妙に近い距離感を保ちながら、街へとくり出すのであった。

_____________________________________________


2人はまず、この街の名物料理だという、ミートパイを販売する屋台へと立ち寄っていた。


「旅をしてるなら、こういうのを食べといた方が良いよね?」


「そ、そうだな。」


-俺の中のミートパイのイメージが崩壊したんすけど!?-


笑顔のエーリカと、引き攣った笑いの聡の手には、ミートパイらしき食物が握られていた。水気があまり感じられない、乾いた大きな葉っぱに包まれており、食べ歩きにはピッタリだった。

その内容物以外は。


「ミートパイの中から、大きな肉の塊が顔を覗かせてるんだけど?」


ミートパイといえば、サクサクのパイ生地の中に、グレービーソースとひき肉が包まれているのを想像するだろうが、ベルクフリートの物は一味、というか一回り大きさが違った。


いくらエーリカが小顔とはいえ、その顔の3分の1ぐらいの直径と厚みの物を、店主が2つに分けて渡してきたのだ。2つ合わせて、なんと代金は破格の銅貨5枚。日本円で約500円である。少食な聡なら、これだけで1日満腹で過ごせそうである。


「確かに大きいわね。男の人に大人気って聞いたんだけど。」


まるで、他人事の様に言うエーリカ。恐らく、彼女自身は食べた事が無いのではないだろうか。又聞きで話を鵜呑みにし、こうしてここにやって来た感じだ。

少なくとも聡には、彼女が大食漢には見えない。


「冒険者やってる男の人に、じゃないの?」


冷静にツッコミを入れると、エーリカはふと何かに気が付いた様に、声をあげる。


「あ。」


「ま、まぁ、ちょうどお腹も空いてるし、食べるとしようか!」


どうやら指摘通りだったらしい。話の流れから察するに、自身の為にここに寄ったらしい事は、流石の聡も理解していたので、不穏な空気を払拭するかのように、大きく口を空けてミートパイを頬張る。


「お!これ美味しい!エーリカも食べてみなよ。」


「う、うん。」


1口食べて見せた聡は、安さとボリュームの割には美味しいかったので、勢いに任せて先程のやり取りを忘れさせようと、エーリカに勧める。

すると、彼女は何を思ったのか、聡の持つミートパイに口を近付ける。


「え?」


それを呆然と見ている聡に構わず、エーリカは小さく口を空けて、そのまま1口齧る。―聡が口をつけた所に。


「な、え、そ、そっちはどうするん?」


流石に赤面しながら、慌てふためきそうになる聡だったが、エーリカが何も感じて無さそうな表情だったので、何とか頭を回転させて、無難な問い掛けをする。


「こっちは、ルドルフさんへのお土産にしちゃおうかと。それとも、サトシは食べ切れる?」


「無理だね。じゃあこっちを2人で分けて、そっちは持ち帰るか。アイテムボックスに入れるよ。」


エーリカの言葉に、首を振った聡は、何の気なしに、そんな提案をする。

すると、今度はエーリカが慌てた様子で、聡に顔を近付け、小さな声で聞いてくる。


「え?アイテムボックス持ってるの?物凄い貴重な物なのよ?今から100年以上前に、製法が失伝したから…。」


「え?マジで?」


びっくりした聡は、驚き固まってしまうのであった。

楽しいデート回です。

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