表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/129

第56話 突撃!貴族様の御屋敷!(ちゃんと招待されてます)

ぽんぽんストックが生まれて、とても気分が良いです。それと同時に、この話はあと数日しないと皆様は読めないのか…と思うと、つい1日に数本投稿したくなっちゃいます(笑)。

「あれ?そういえば、両手足の拘束具はどうしたんですか?」


牢屋から出ようとした所、ふと、聡が本来なら着けられている筈の、拘束具を着けていない事に気が付いたヴィリーが、不思議そうに問うてくる。


「あぁ、それなら千切りました(・・・・・・)。」


「はい?」


「あ、残骸はこれです。」


笑いながら、ヴィリーにねじ切られた鉄で出来た拘束具を手渡す。


「こ、この拘束具は、魔法を封じる効果がある筈なんですけど、どうやって壊したんですか?」


「窮屈だったんで、ちょっと力を込めたら、罅が入ったので、そのまま腕をそれぞれ反対方向にこう回して…。」


「千切ったんですか…。」


「えぇ。序に、足も窮屈だったので、ちょっと力を込めて…。」


「破壊したんですね…。」


遠い目で、呟くヴィリー。どうも、反応があまり宜しくない。

聡の予想だと、苦笑い程度で済ませてくれると思っていたが、今のヴィリーは、驚愕が9割を占めていて、残りの1割に呆れが含まれているような声音だった。


「と、兎も角、上で皆さんがお待ちですので、早く行きましょうか…。」


「は、はい…。」


微妙な空気感の中、聡とヴィリーは並んで地上へと出る。


ギギギッと軋む音をたてながら、ヴィリーが外へと通ずるドアを開けると、夜風が中に入って来て、聡の頬を撫でた。


「おぉ。シャバの空気は美味しいですね。」


外の空気を肺いっぱいに吸い込み、呟く聡。あの牢屋が地下だったためか、空気が澱んでいて、正直息が詰まりそうだったのだ。


「では、こちらの馬車にお乗り下さい。」


ヴィリーの指し示した方向には、二匹の馬が繋げられた、見るからに立派な馬車が止まっていた。

取り敢えず、大人しく馬車に乗り込んだ聡は、後から乗ってきたヴィリーに聞く。


「上って、ここの事じゃなくて、代官様がいらっしゃる屋敷の事ですか。」


「あ、はい、そうです。言葉足らずでしたね。これから、コルネリウス様の屋敷へと向かいます。御者さん、お願いします。」


席に座ったヴィリーは、馬車の中から声をかける。すると、ガタガタと音を立てながら、馬車が出立する。


「おぉ…。」


「どうしたんですか?」


感嘆の声を漏らした聡に、ヴィリーが問う。


「私は平民なので、馬車に乗ったのは、これが初めてなんですよ。だから、こんな感じなんだなぁと思ったんです。」


現代日本で、一体どんな暮らしをしていれば、馬車に乗れるのか、非常に気になるが、少なくとも聡は乗った事が無いので、初めての馬車に少し興奮を覚える。


「え、そうなんですか?てっきりサトシ様の正体は、どこかの貴族様か、若しくは仕えていた者かの2択だと思っていました。」


「まさか。私は生粋の一般市民ですよ。」


冗談めかして言う聡。だが、ヴィリーは驚愕の表情を浮かべて、固まってしまう。


「…え。」


「いや、そこは笑うところでは?」


「す、すみません。サトシ様が、驚くような事を言ったので、つい反応出来ませんでした。ゴブリンキングと、ゴブリンの群れを、人を守りながら殲滅できる人は、一般市民とは言いませんよ。それに、あの拘束具は、普通の人には破壊出来ませんし。」


「あははは…。」


それを言われてしまっては、誤魔化し笑いするしか無い聡。

そのまま揺られる事数分。馬車の速度が落ちたかと思ったら、直ぐにゆっくりと停車する。


「さて、着きました。中は広いので、私が先導します。サトシ様には、そのまま着いてきていただければ。」


「分かりました。」


若干、方向音痴のきらいがある聡は、絶対にヴィリーを見失うもんかと頷いて、しっかりとその後を着いて、馬車から降りる。


すると、目の前に、大きな屋敷がそびえ立っていた。どうやら、敷地内に入って、屋敷の玄関の横に直接つけた様だ。


「うわ、大きいですね。」


ー地方の図書館より、若干大きいような…。どんだけ金をかけてるんだ?ー


兎に角どでかい屋敷に、聡は気圧されながらも、ヴィリーの後を着いて行く。


ヴィリーが、重厚な木で出来たドアをノックすると、内側から内開きのドアが開かれていく。


そして、中には、


『ようこそおいでくださいました、サトシ様。』


ズラ〜っと左右に綺麗に並んで出迎えてくれた、メイドたちが居た。


「…は?」


「さぁ、行きましょう。」


ヴィリーにとっては、当たり前の光景なのだろうか?びっくりして固まっている聡には気付かずに、中にスタスタと入って行ってしまう。


「え、ちょ…。あ、どうも。」


それを慌てて追いかけようとするが、メイドたちを無視して突っ切るのも気が引けたので、何となくぺこりと軽く会釈してから、小走りでヴィリーの元へと寄っていく。


中は赤い絨毯が敷き詰められており、歩いていても、フカフカで床の硬さが全然感じられない程であった。

この世界では、勿論住居の中は土足が基本だというのに、寝っ転がっても問題無さそうなほど、この絨毯は何処も彼処も綺麗に掃除が行き届いていた。


中に入ってからはあまり会話は無く、黙々と進んで行くヴィリー。

そして、結構入り組んだ屋敷内を、だいぶ歩いたところで、1つの扉の前で立ち止まる。


「こちらに、コルネリウス様、ギルドマスターをはじめとする、他の方々もいらっしゃいます。」


「そうですか。作法とかって、どうしましょうか?こことは違う文化圏での、最低限のマナーしか守れませんが…。」


「今回は、コルネリウス様が、恩人に対する礼を失していたという事から、サトシ様をお呼びになられましたので、最低限口調や態度を気を付けていただければ、問題無いです。」


「なるほど、分かりました。」


「では、入りましょうか。」


扉を『コンコンコン』と叩いてから、少し声を張って、向こう側に呼びかける。


「お待たせ致しました。サトシ様をお連れしましたので、中に通してもよろしいでしょうか?」


『うむ。入れて差し上げろ。』


「畏まりました。」


1拍空けてから、ヴィリーはドアを開ける。


その様子を、聡は後ろから緊張した面持ちで眺める。


ー代官か…。アノマリーみたいな奴じゃなければ良いけど…。ー


権力者への第一印象が悪過ぎた聡は、不安を胸に感じたまま、扉の向こうへと、1歩足を踏み入れるのだった。

皆さん、馬車に乗ったことありますか?ちなみに私はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点] 大好きです。大好きすぎます [一言] 毎日の楽しみにしてます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ