表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/129

第55話 泣かれました→連行されました→牢屋なう

理不尽ですね(笑)。

「はぁ…。何でこんな事に…。」


ジメジメとした石造りの牢屋(・・)の中、聡は1人、深いため息をつく。


事の発端は、今から約6時間前に遡る。


小鬼の森から走って40分後、漸く門の前に着き、聡がほっと一息安堵した時、事件は起こった。


「いや〜、着きましたよ。」


「…ぅ。」


「う?」


「…ぅ、うわぁぁぁ〜ん!!!」


「え、ちょ、え!?」


そりゃあ、直接的な被害を受けてない聡ですら、安堵してしまう状況で、骨身に染みる程の恐怖を味わってきた少女が、安堵のあまり泣いてしまうのは、仕方無い事であろう。


だがしかし、間の悪さと、聡の格好、そして少女のボロボロな格好が合わさり、とんでもない事態へと発展する。


「き、貴様!!そのお方(・・)を離せ!!」


聡は見るからに怪しい、ローブの男。そして、少女は毛布を巻いているが、隙間から見える服はボロボロ。そして髪もボサボサで、すっかり疲労困憊した表情を浮かべている。


その為、聡は少女を誘拐し、乱暴した不届き者。そして少女はその被害者である、という状態に見られてしまった。


「あ、いや、俺は「貴様!抵抗するか!!」…はぁ。ここに下ろしますね〜。」


釈明しようとするが、怒り狂った表情の兵士から槍を向けられて、『あ、もうめんどくさ』となった聡は、大人しくお縄にかかることにした。


泣き叫んでる少女の下に、アイテムボックスから更に取り出した毛布を敷き、その上にゆっくり下ろしてやる。そして、背負っていた採取袋をその隣に置いてから、手を上にあげて、少女から10メートルくらい離れる。


「そ、総員、かかれ〜!!!」


『おう!!!』


その瞬間、リーダー格っぽい男が発した命令に従い、騒ぎを聞きつけて外に出てきた兵士たち、およそ10名が一斉に聡に飛び掛ってくる。


「ちょ!抵抗しないんで、もう少しお手柔らかに!」


「黙れ外道!!貴様にかける情けなど無いわ!!」


「あ、聞く耳もtぐぅえ!!」


最後まで文句は言わせて貰えずに、聡は兵士たちに押し潰され、されるがまま殴られ、蹴られ、押さえ付けられなど、ありとあらゆる暴力のフルコースを味わっていた。


ーいやこれ、普通の人間なら死んでるから!幾ら俺が痛みを感じない(・・・・・・・)からと言っても、不快には感じるんだぞ!!ー


数分後、漸く蹂躙が終わった頃には、聡は両手足を縛り上げられ、うつ伏せの状態で地面に転がされていた。


ローブはボロボロで、フードも完全に取れて素顔が露になった状態だが、一切の傷は見受けられない。


「えっと、満足されましたか?」


「く、クソがっ!何で無傷なんだ!?」


「出来れば、衛士長のヴィリーさん、冒険者のルドルフさん、受付嬢のエーリカさん、ギルドマスターのルドガーさんに、聡が捕まったと伝えてくれると助かります!」


兵士の言葉は無視して、取り敢えず助けを呼ぶ事にした聡は、それなりの声量で叫ぶ。


「うるせぇ!黙れ!さっさとコイツを、牢にぶち込んでやれ!!」


『はっ!!』


兵士から、更にローブを胴体に回され、ずるずると引き摺られて行く聡。

そのまま、街に入った瞬間、先程と同じ事を1回叫ぶと、兵士の1人から頭を踏みつけられる。


「黙れよ、下衆が。今すぐ首を撥ねてやろうか?」


「騒がしくして、すみません。」


穏やかな声色で謝っておく聡。そんな聡に、チッと舌打ちをして、兵士は足を退けてからまた、引き摺って行く。


その後、暫く引き摺られた後、乱暴に地下の牢屋にぶち込まれ、現在に至るのだった。


「う〜ん、そろそろ誰か来てくんないかな?」


最初に兵士が聡を咎めた際、少女の事を『そのお方』と言っていたので、少女はこの街でそれなりの身分の者だと理解出来る。

そして、そんな人物の恩人を、いつまでもこんな牢屋にぶち込んでおくなど、通常では有り得ない仕打ちであるからして…。


と、そこに、1人の兵士が血相を変えて、聡の牢屋の前に現れる。


「さ、サトシ様!ご無事ですか!?」


「お、ヴィリーさん。はい、無事です。無傷ですよ。」


鉄格子が嵌められた出入口に近付いて、笑いかけながら言う。


「そ、そうですか。来るのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。」


「いえ、私の予想した限りでは、もう少し時間がかかってもおかしくないと考えてたので、謝る必要は無いですよ?全て、あの少女から聞いたんですよね?」


「はい、そうです。この街の代官である、コルネリウス・ベルクフリート様の御息女の、ニコラ・ベルクフリート様から、全て聞かせていただきました。」


「へ〜。あの子、代官の娘さんだったんですか。」


「はい、そうなります。ニコラ様から聞いたところ、小鬼の森にて、体調2メートルはあるゴブリンに襲われていたところ、聡様がこれを殲滅、後に周囲のゴブリンも殲滅されたと。」


「えぇ、その通りです。あ、ギルドカードをどうぞ。」


聡は、懐からギルドカードを取り出して、ヴィリーに見せる。

そのカードの討伐履歴の欄には、新しく、


・ゴブリン:157匹

・ゴブリンキング:1匹


と記載されており、今日作ったばかりなので、ニコラを救出した際に倒した数となっていた。


「こ、これは、ゴブリンキング!?サトシ様は、ソロでこの数を討伐されたのですか!?」


「はい、そうです。」


「こ、こうしちゃ居られないですよ!早く上に行きましょう!皆様がお待ちです!」


鍵をガチャガチャと開け、扉を開け放ちながら焦ったように言うヴィリー。


「え?出ていいんですか?」


意地悪く、ニヤリと笑いながらそんな事を言ってみる。


「出てきて下さい!お願いします!」


すると、泣きそうな表情なヴィリーの叫びが、牢屋の中に響き渡るのだった。

何故か大焦りするヴィリー。何ででしょうか?(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ