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第28話 悪夢(2)

アノマリーにとっては、ダブルの意味での悪夢が始まりますね。

フレシェットに上手く乗せられ、アノマリーは御機嫌な様子でエンデ村の門の前まで足を運ぶ。


「先程、儂の兵を倒した奴はどいつだ?」


門の付近には数名の男が居たため、そんな問いを投げ掛ける。


「はい、私です。」


その名乗り出た者に目を向けると、アノマリーのお気に入りの金髪の少女に寄り添いながら、のほほんとしている黒髪の青年が居た。


「ふむ、貴様か。儂の兵を倒した不敬は許してやるから、大人しく門を開け、儂を通せ。ついでに、貴様の隣に居る娘を寄越せ。」


『フフン』と大きく胸を張り、さも当然と言わんばかりに、とんでもない事を口にするアノマリー。

すると黒髪の青年は、アノマリーが今まで言われた事が無いような、失礼極まりない言葉遣いで断られる。


「いえ、どちらもお断りします。てか、一昨日来やがれ。」


「は?」


「「「「え?」」」」


そんな青年の言葉に、アノマリーは勿論、兵士や門に居る男達も驚いて、思わず声を出してしまう。


「ちょ、サトシ!」


「さ、サトシさん?」


アノマリーに悪態をついた青年に、体格の良い男と、青年の隣に居る少女が青ざめた顔で呼びかける。


「え?何です?何かおかしい事言いました?」


『サトシ』と呼ばれた青年は、悪びれた様子も無く、心底不思議という表情で首を傾げる。

そんな失礼な青年、サトシの態度に、ついに苛立ちを我慢出来なくなったアノマリー。


「き、貴様!!サトシとかいったな!儂を誰だと思ってるんだ!?」


「え?ただの傍迷惑な豚?」


「な!?」


青年の本音に思わず絶句してしまうアノマリー。生まれてこの方、人に侮辱される事など無かったため、怒りのあまり頭がショート寸前なのだ。


「つーことで、ハウス。」


『しっしっ』と手で追い払いながら、謎の言葉を告げる青年。だが何となく意味は理解出来たアノマリーは、ここで決定的な間違いを犯してしまう。


「このクソガキがぁ〜!!ぶっ殺してやる!!えぇい、貴様ら!!何をボーッと突っ立っておるか!!このガキを始末しろ!!」


『は、はい!了解しました!!』


この叱責に、確かにボーッとしていた兵士達は漸く我に返り、慌ててアノマリーの指示に従って突撃を開始する。

そんな様子を見て、溜息をつく者が1人。


「あ〜あ、やっちまった。さっさとトンズラすっか。」


それは隊長のフレシェットである。青年の動きから、猛者であるのは分かっていたが、取り敢えずアノマリーが上手く説得出来る可能性を考え、まだ逃げ出していなかったのだろう。

だが逃げ出そうとしたその瞬間、背筋に氷を入れたれたかのような、嫌な予感を感じ、足を止めると、目の前に1本の槍が突き刺さっていた。


「何!?」


驚いて飛び退き、そして何故か物音がほぼ聞こえない背後の様子を、恐る恐る振り返って確認する。

するとそこには、信じられない光景が広がっていた。


「ひ、ひぃ!」


そんな情けない声を挙げ、フレシェットはその場でヘナヘナとしゃがみ込んでしまう。後ろを振り返ったフレシェットの目には、先程までは突撃していた筈の60名の兵士は地に倒れ伏し、アノマリーは状況を理解出来ずに、目を白黒させていた。


「あ、避けたんだ。一応、不殺は心掛けてたから、当たらなくて良かったよ。あはは。」


フレシェットは気付いていないが、突き刺さった槍は、ほぼ垂直であるため、かなりの高くに、前もって投げておいたのだろう。それはただ膂力があるだけでは無く、フレシェットの行動を見抜いて、予測をしていたという事になる。


「さて、ではそろそろ本命のお仕置きタイムといきますか。」


ショックのあまり、戦力外となったフレシェットから目を離し、青年は、アノマリーに近付いて行く。


「ひ、ひぃっ!?き、貴様!儂にこんな事をして、ただで済むと思っているのか!!」


「いや、まだ何にもしてないけど?」


アノマリーは口から唾を飛ばしながら、必死に青年を止めようとするが、特に何の効果も無く、青年に距離を詰められてしまった。


「いやさ、実は俺、女性との経験が無いんだよね〜。何でだと思う〜?」


青年は、ニッコリと笑顔を浮かべながら問う。


「し、知るか、そんな事!」


アノマリーの言う事はごもっともだが、この状況で選ぶセリフでは無い事は明白であった。


「実はね〜、結構長い間、とある場所に閉じ込められてて、つい最近出てきたばっかなんだよ。」


「閉じ込められていただと?そ、そんな話をした所で、貴様が童〇なのと、何が関係ある?」


ハッキリと言葉を濁していた部分を言われ、青年のコメカミに青筋が浮かぶ。


「…いや、そうじゃなくて、お前が好き勝手やってる間も、ずっと幽閉されてた訳よ。」


だがそれでも尚笑顔で、アノマリーにとってはどうでもいい事を喋る。


「だから何だ?」


いい加減、話の趣旨が分からなくなってきたアノマリーは、恐怖は忘れ、うんざりとした表情で青年に聞く。…この男、恐らくは鳥頭で、10数秒前の事すら忘れてしまうのではないのだろうか。

そんな状況を分かっていないアノマリーはそっちのけに、青年は結論を告げる。


「つまり、俺が苦労している間に、人様に迷惑を掛けて、好き勝手に良い思いしてんじゃねぇよハゲ!って事。」


「いや、それはただの八つ当…ムグッ!」


またまた無神経な発言をしようとしたアノマリーは、青年によって簡単に仰向けにされ、その顔の上に足が乗っけられてしまう。

こうして、アノマリーのお仕置きタイムは、幕を上げる事となった。

謎の青年、サトシ。一体何者なんだろうかー。

次回『アノマリー、死す!』お楽しみに!

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