第27話 悪夢(1)
い〜や〜し〜が〜た〜り〜な〜い〜と、地団駄を踏みそうな今日この頃です。誰が変態クズ貴族の様子を、好んで書きたいんですかね?(笑)
酒を病的に呷ってから数時間後、アノマリーは気分良く眠りについていた。
アノマリーが寝ている様子は、傍から見れば最早、樽がいびきをかいてるかのような、奇妙な光景であった。
しかし、寝ている様子を、第三者に文句をつけられる筋合いは無いので、更に文句のつけようのない、彼の夢を覗いてみよう。
「…ん?儂は一体、いつの間にこんな所に?」
彼は今、彼の特注で作らせた、豪華絢爛な馬車の中に居た。『酒を飲んで、眠りについたはずでは?』と首を傾げるアノマリーだが、そんな疑問は馬車に取り付けられた窓から外を覗いた瞬間、一瞬で吹き飛んでしまった。
「お、おぉ!!何だあの娘は!!今まで儂が見てきた中でも、ダントツで儂好みではないか!!」
柵に作られた門の前に立つ金髪の少女を見て、興奮のあまり、顔を紅潮させながら大声をあげるアノマリー。
そこに、1人の兵士が馬車に入って来て、アノマリーに報告をする。
「あ、アノマリー様。報告がございます。」
「ぐふふ。そうか、ご苦労。申してみよ。」
満足気な笑みを浮かべるアノマリーに、兵士は顔が引き攣らせかけるが、何とか冷静を装い、アノマリーを怒らせてしまう可能性のある報告をする。
「実は、門番の黒髪の男から…問いがありました。」
「問い?」
予想通り、若干表情が曇り始めるアノマリーに、兵士は覚悟を決めたようだ。
「は、はい。『アノマリー・ディストア様御一行とお見受けするが、如何様であるか?』と。どう致しましょうか?」
「そんなもの、無視して押し通れば良かろう!!今はあの娘を手に入れる事が先決だ!!そんな事も分からんのか!!」
アノマリーの叱責に怯む兵士だが、このままではどうしようもないので、今の状況の説明を始める。
「し、しかし、その男は途方も無く強く、恐らく我々では押し通ることは難しいかと!実際、押し通ろうとした所、40名程が倒されています!」
現在、アノマリー一行は、100名程引き連れて、遥々エンデ村へとやって来ていたのだが、その半数近くを潰されてしまったという事になる。
「何だと!?な、ならば何故、その男は追い打ちをかけてこない!?」
「分かりません!しかし、敵対の意思は無い模様です!倒された40名も、全員気を失っているだけです!」
「チッ!使えん奴らめ!そのまま死ねば良かったのだ!」
敵に情けをかけられ、兵士が1人も命を奪われないなど、アノマリーにとっては屈辱以外の何物でもない。ならばいっその事、倒された者が全員死んでいた方が、まだ格好はついたと考えたのだろう。まぁもっとも、倒された40名の兵士は、この後処刑することになるのであり、どっちにしろ結果は変わらないのである。
「―ッ!も、申し訳ありません!」
アノマリーに罵られた兵士達と、苦楽を共にしてきた、報告をしている兵士は、『アンタの我儘に付き合って倒されたんだぞ!』と言い返しそうになったが、命が惜しいので慌てて謝る。
「口を開く暇があるならば、フレシェットを呼ばんか!!」
「は、はい!畏まりました!」
報告に来ていた兵士は、慌てて馬車から降り、逃げるようにフレシェットと呼ばれた者の元へと走って行く。
「た、隊長!アノマリー様がお呼びです!」
「あ?…チッ!仕方ねぇな。」
不機嫌そうに返事する、この部隊の隊長であるフレシェット。ボーッとしていたため、言われた事を理解するのに、ラグが生じたようだ。
フレシェットは今年で30になる、筋骨隆々の、まさに戦士といった見た目の持ち主である。しかしその心根は完全に腐っており、アノマリーに付いて回って、甘い汁を啜るだけを生き甲斐としていた。フレシェットはアノマリーとは違い、ノーマルであり、その点で2人の利害が衝突する事無く、上手く主従関係が噛み合っていたのかもしれない。
「はいよ〜、旦那。お呼びですかい?」
「おい!フレシェット!門番の男とやらは、この儂に喧嘩を売っておるのだぞ!!不敬にも程があろう!!」
『これはまた面倒な…』と、心の底から面倒に思うフレシェット。
どこをどう解釈すれば、門番の行動がアノマリーに喧嘩を売っていることになるのか、皆目見当もつかないが、このままでは引っ込みが付かなそうなので、フレシェットは仕方無く、アノマリーをおだてて、1番の解決策を実行する事にする。
「そりゃ多分、ここは辺境の地だから、旦那が如何に偉大な人物かが、良く分かっていないのではないですかい?」
「む。そうなのか?」
『偉大な人物』辺りで、下降気味であった機嫌が、直角に上がり始めたのを感じたフレシェットは、ここで更に口から出任せを言う。
「ここは1つ、旦那が足を運んでやって、直々に言葉をやれば良いんじゃないか?そうすれば、幾ら田舎の猿共でも、喜んで何でも差し出してくれるだろ。」
「ふむ。そうかそうか。ならば仕方無いな。儂が直々に、その不敬な男と話を付けてやろう。」
ニタァと気色の悪い笑みを浮かべ、その重い体を超高速で動かし、いそいそと馬車から降り、門の方へと足を運ぶアノマリー。
その様子を尻目に、フレシェットは心底ホッとしていた。何故なら、門番の黒髪の男の動きを見た時、背筋に冷たいものを感じたからだ。
こうしてアノマリーとその一行は、地獄への1歩を踏み出したのだった。
愈々、門番の謎の黒髪の男と、直接対峙することになったアノマリー。彼は無事、お目当ての少女をゲッツ出来るのか!?
それではまた来週!!
…嘘ですゴメンナサイ。近いうちに更新します。