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第120話 本音

最近は本当に怠惰な生活してるので、6時とかぐっすりです。

翌朝、聡はフラウの部屋の様子見をしようと、ドアの前に立っていた。時刻は6時で、もうそれなりの人達が活動を始めており、フラウもそろそろ起きていい頃合だった。


「フラウ?起きてる?」


ノックして声をかける。無理矢理眠らせた事もあり、罪悪感を感じながら、遠慮がちに呼びかける。


『…。』


気配を探ると、フラウはまだベッドの上に居るようで、身動きしていない。


「う〜ん。…入るか。失礼しま〜す。」


このままでは、埒が明かないので、聡は意を決して部屋に入る事にする。小声で声をかけながら、するりと素早く中に滑り込む。


「寝てるのか。」


昨日、聡がベッドに下ろして、毛布をかけてやったが、ほぼその状態で、ぐっすりだった。


「幸せそうな顔しやがって。」


昨日の夜、散々聡を悶々とさせた元凶であるフラウは、実に幸せそうに眠っている。


そんな顔を見てしまえば、少しやり返してやろうとか、そんな些細な悪戯心が芽生えてしまうのも、仕方の無い事であろう。


「…。」


無言でフラウの頬を、両手で摘んでみる。


血の伯爵夫人、バートリ・エルジェーベトが目指したのは、こんな感じだろうかと、聡の柄では無い事を考えさせる程の、綺麗でキメ細かい肌だった。


ー中々良い触り心地…。って、何やっとんじゃ俺は!ただのセクハラじゃねぇか!ー


キスのせいで、少しテンションがおかしくなってるのが、こんな変な行動に繋がったのだろう。


「…う。」


「あ。」


手を離そうとするが、その前にフラウの目がうっすらと開いてしまう。


「…サトシ様?」


「いや、これは、その、す、すまん!」


アタフタしながら、聡は頬から手を離す。その顔は真っ赤になっている。


「あれ?何でサトシ様が私の部屋に?それに、昨日いつ寝たんだっけ?」


フラウは目をつぶって、記憶を掘り返そうとする。


「あ、それは、思い出さない方が。」


聡は慌てて止めようとするが、その前にフラウの記憶が甦ってしまう。


「あ〜!!わ、私は、何て事を!!」


「ありゃ、思い出しちゃったか〜。」


羞恥のあまり顔を真っ赤に染めて、叫ぶフラウ。このままでは近所迷惑になりかねないので、【消音(サイレント)】をこっそり使いながら、苦笑いを浮かべる。


「わ、私、サトシ様と…。」


そこで言葉を止めて、唇に指で触れるフラウ。


ーあ、あれ?血に依存したせいで、衝動的にしたけど、実は死ぬほど嫌だったとか!?そ、そうだとしたら、いっその事、記憶を綺麗さっぱり消さないと!ー


少しぐらいは好意を懐かれてるというのが、聡の勘違いであったなら、フラウは今、どんな気分なんだろうと、慌てて様子を伺おうとする。


だが、よく見ると、頬を赤く染め、浮かれたようにぽ〜っとしている。


「フラウ?」


「サトシ様…。」


ベッドから飛び退き、少し離れた位置に居た聡に、フラウがゆっくりと近付いてくる。


ーヤバい!ー


直感で何かを察した聡は、完全に近付かれる前に、肩を押さえて動きを止める。


「何でそんなに必死な表情で、肩を掴むんですか?」


フラウの表情は、さっきよりもハッキリと、目が覚めた様子だが、どことなく不満そうである。


「な、何でだろうな?」


マリウスのような【直感】スキルがある訳ではないが、昨日の今日で色々と警戒しているのだ。


「私のほっぺ、勝手に触ってましたよね?」


「すみません。」


「なら、お詫びが必要だと思うんですよ。」


「はぁ。確かに俺の故郷なら、普通に裁判沙汰だし、ネットニュースに掲載される事、確定なんだよなぁ。」


『300代の男が、15歳少女の宿泊していた部屋に侵入し、頬を摘むなどの、わいせつ行為をした』などと題されて、叩かれまくるのだ。


というより、文字に起こすと、大分酷い字面である。


「ねっとにゅうすなるものが、どういうものなのか分かりませんが、お詫びが必要だと思うんですよ。」


「返す言葉もありません。俺に出来る事であれば、何でもします。」


「―何でも、とおっしゃいましたね?」


「え?俺に何をさせる気なんだ?」


真面目な顔で念押ししてくるフラウに、聡は失敗したと悟る。昨日から普通じゃないフラウに、自由な選択肢を与えたら、何を要求してくるか、分かったもんじゃない。だが、一度口から出てしまった言葉は、もう戻す事は出来ないので、フラウの出方を戦々恐々と待つしか無くなってしまった。


「昨日、急に眠くなったんですけど、それはサトシ様の仕業、という事で間違い無いでしょうか?」


「え?あ、あぁ、うん。」


要求してくると思っていた聡は、唐突な話題転換に戸惑いながらも、ここは素直に認めておく。


「それはつまり、私のキスが嫌だったという事ですか?」


「そんな事は無いけど…。」


フラウからのキスが嫌な奴なんて、そうそう居るわけ無いだろう。そう力説したかったが、何か変態っぽかったので、一言否定するだけに留める。


「では、何故私を眠らせたのですか?」


「それは…。」


正直に、『劣情を感じたから』なんて言っていいものかと、聡は口篭る。


「わ、私に、そういう対象として、意識をして頂いたという理解でよろしいでしょうか?」


ここで、少し顔を赤くしながら、回りくどく言ってくるフラウを見て、申し訳なくなった聡。開き直りとも言うが、色々とぶっちゃける事に決めた。


「あ〜、もう、分かった!正直に言おう!」


意を決して、聡は口を開くのだった。

口約束させられましたね。一体どんな要求をされるのでしょうか?羨ましい(血涙)!

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