第118話 忘れてました
どこまで描写していいのか、さっぱり分かりません!!
「ん〜!」
開き気味だった口を、フラウにキスによって塞がれてしまい、変な声を出してしまう聡。
エーリカの時の押し付けてくるようなキスとは違い、いわゆるフレンチ・キスと呼ばれる、濃厚なものであった。
ーや、やめてくれ!ー
全身から力が抜けそうなのを堪えながら、聡は必死に目で訴えかける。
だが、フラウの目には、聡の姿はマトモに映ってるようには見えず、色々な感情をぐっと抑えるしか無かった。
ーうぅ…。す、すまん、フラウ!ー
聡はそう心の中で謝ると、フラウの背中と腰に手を回して、少し強く抱き締める。
「!」
先程までは、ただ必死に唇を貪るだけに必死になっていたフラウだったが、抱き締められるのを感じて、うっとりと嬉しそうな表情を作る。
ーそんな目で見られても!くっ!【ヒュプノス】!ー
ちゃっかり無詠唱で発動する聡。無詠唱は高等技術とされ、中々使える者は居ないのだが、そんな高等技術を、『キスされてて声を出せないから』という、何とも酷い理由で使ったのだ。
「あ…。」
全身から力が抜けて、その場で崩れ落ちそうになるフラウを、そのまま抱き締めた状態で支える。
「っはぁ、はぁはぁ…。な、何だっていきなり…。」
荒い息を整えながら、聡は呟く。本当は理由をしっかり理解しているのだが、感情がそれを認めたがらない。
「…これがアイツを困らせたという、吸血鬼の特性か。『夜の女王』が暴虐を働いた原因でもある、一度血を吸って尚、殺せなかった相手への極度の依存。」
その依存性の高さから、吸血鬼達の間では、防ぐ為の薬や魔法の開発が最優先とまで言われている。
聡は何度かトイフェルから聞いたが、その度に『ヤンデレでも尽くされるだけマシじゃん』とか言って、彼をからかったりしたが、いざ自身が体験すると、恐ろしさを感じてしまう。
「せっかくエーリカの事、ちゃんと考えるって決意したんだけどな。フラウもほっといたら、大変な事になるし、一体俺はどうすりゃ良いんだ!」
頭を抱えようとして、ふと気が付く。
「俺はいつまでフラウを抱き締めてるんだよ!」
幸せそうな顔で眠りについているフラウを、ゆっくりとベッドに下ろしてやる。
そしてため息をつくと、外に出てから、誰もフラウの部屋に入って来れないようにする。
「【魔法創造、施錠】。」
内側からは、簡単に開くように、イメージを固めながら魔法を使う。これで、少なくとも翌朝までは、フラウはぐっすりな筈だ。【ヒュプノス】もそうなるよう、調整してかけたつもりである。
『鏖殺』との戦闘や、ここ1週間での創意工夫で、どうにか魔法を使う事に慣れてきたのだ。
「くっそぉ〜!最初に血を吸わせた時に、気付くべきだったぁ〜!」
フラウの今の状態を、失敗と捉えてる聡は、部屋に戻ってドアを閉めてから呻く。
「…また一輝から電話か。はい、もしもし。」
呻く聡のポケットで、着信音が鳴り響いたので、ノロノロとした手付きで開き、応答する。
『ん?何か元気無くね?』
「そうか?別の意味では元気になりそうなんだけど、悩みの種がまた増えたからかね。」
下世話な話、エーリカに続き、フラウのキスによって、少し気分が高揚していた。今なら据え膳なら、美味しく頂いてしまうかもしれない。そんな気分だ。
『悩みの種?ははっ。まさかまた他の女の子に告白された挙句に、キスをされたとか?』
「…非常に近い。告白はされてないけど、キスはされた。しかもエスカレートしかけたから、強制的に眠りに落としたんだよ。」
『おいおい。ホントにお前、聡かよ?』
「おい、どういう意味だよそれ。」
一輝の失礼な物言いに、聡はノータイムで突っ込む。
『いやだって、大学生活どころか、高校でも女っ気一つ無かった聡が、今日一日で2人の女の子にキスされるとか、明日槍でも降るんじゃないの?』
「一番信じられないのは俺だけど、今回に関しては、俺が悪いってのは理解してるんだよ。」
『悪い?』
「吸血鬼ってのは、一度血を吸った相手に、強く依存するんだよ。大抵は1回で吸い殺しちゃうから、そんなに問題にはなら無いけど、俺みたいにHPが無限にあるような奴だと、大変な事になるんだ。」
『吸血鬼?まさか、この間のフラウさんの事か?15歳の?』
「【魔法創造、消音】ォォォ!!!!!うぅわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!言わないでくれ!」
他の宿泊客が駆け付けてくる前に、この部屋からの叫び声が聞こないようにしてから、叫びまくる。
『す、すまん!驚き過ぎて、つい事実を!』
「それは何の慰めにもなってないわい!せっかく考えないようにしていた事を!」
刑法的にはOKだが、条例的にはOUTな年齢の為、聡は身悶えする。
『そ、それよりも、フラウさんはどうすんの?ほっといてエーリカさんと付き合うとか、そりゃ無いよな?』
「好きかどうかは置いといて、確かにほっとくのは無理だよな…。」
『異世界なんだし、一夫多妻制なんだろ?責任取って、どっちももらっちゃえよ!』
「…へ?いっぷたさいせい?」
一輝の言葉に、思考が停止してしまうのだった。
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