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第116話 持つべきものは友

少し言い合いになります。

『だからこそ、今回エーリカさんを振ったりしたら、文字通り永遠に悩み続ける事になるんじゃないのか?』


一輝は言う。振った事を気に病んで、今後が楽しく無いのではと。


「いや、俺は良いんだよ。エーリカは限りある命なんだから、最高に楽しい人生…エルフ生か?を送って欲しいと思ってる。だからこそ、記憶を奪ってでも、俺は身を引くべきじゃないかと。」


『馬鹿な事を!お前はどうしたいんだ!?それが一番大事だろうが!』


電話の向こうで、激しく憤る一輝。


『それに、何を心配してるのかは、大体想像はついたけど、エーリカさんはエルフなんだろ?なら、2、300年は生きるってさっき言ってたから、1000年でも奥さんは3人だ!人類にとって、何ら影響もクソもねぇよ!』


考えてた事をあっさりと見破られ、聡は一瞬固まるも、続く言葉に納得してしまう。


「…確かに。」


『結婚してるからで断るならまだしも、不老不死で、人から好かれやすくて、他の人と結婚した時に、遺伝子的に気になるからとか、ゲスの極みたいな断り方だよな?』


「仰る通りです…。」


ぐうの音も出ない程、綺麗に論破されてしまった。


『で、どうする?』


「…自分の感情に、素直になるよ。まったく、亜神になったり、いきなり人に好かれたりで、まったく冷静じゃ無かったみたいだ。素直に助かったよ。」


やれやれと、肩を竦めながらため息をつく。


『それよりも、まず子供は作れんのか?だって異世界の、まったく違う種族なんだろ?普通は無理じゃね?』


「文献を読む限りだと、異世界から召喚された勇者とかは、大分好き勝手やったらしくて、町娘だとか貴族の娘とかの間に、普通に子供があちこち居るらしいぞ?」


『ははは!何じゃそれ!色欲に溺れたクソ勇者が子供残してるなら、真面目で優しい聡だって、結婚したりなんだりすべきだろ!』


勇者をクソ呼ばわりする一輝。国に聞かれれば、即しょっぴかれる事、間違い無しである。


「う〜ん、その通りで否定出来ないのが辛い。正直言うと、お気楽な歴代のクソ勇者が楽しんでるのに、何で俺は閉じ込められたり、自制しなきゃなんねぇんだよとは、常々思ってたよ。」


まるで憑き物が落ちたかのように、スッキリした顔つきの聡は、普段は言わないような事まで、ぶっちゃけてしまう。


『おう、その意気だ!遠慮なんざしないで、楽しく自由に暮らせば良いんだよ。…出来れば、こっちに戻って来てもらいたいがな。』


「あぁ、何回か実験してから、そっちに帰れるか検証するわ。多分永住は無理だけど、顔ぐらいは出せるんじゃないかと思ってる。」


エーリカの事について、結論が出たところで、話は変わり、日本に戻れるか否かという事になる。


『そっか。そういえば、先に結婚した方が、高級焼肉奢るって話、覚えてるか?』


「あぁ、確かそんな話したな。…あれ?俺がエーリカにOK出したら、奢る事に?」


彼女が出来ないという話になり、どう話が転んだのかは分からないが、何故か先に結婚した方は、その時に高級焼肉を奢るという約束をしたのだった。その時は、一輝が奢る事を前提に、聡は約束したつもりだったので、愕然としてしまう。


『そっちの世界観じゃ、やる事やって、傷物にして捨てたら、酷い目に合わされるんだろ?』


この大陸で信仰されているフィーレ教においては、一神教のアインス教よりは緩やかであるものの、やはり乱れた男女関係は嫌う傾向にある。


「そうだな。俺からガツガツいくとこもないだろうし、相手はあのエーリカ。そんなに迫られる事は無いだろ?」


『エーリカさんがどういう人なのか、全然分からないけど、今日、いきなりキスされたんだよな?エスカレートしてけば、そのうち、押し倒されるのが目に見えてるような…。』


一輝が恐ろしい事を言ってくる。確かに押し倒されてしまえば、その後は時の運としか言いようが無いほど、聡は押しに弱い。ニ○コイみたいに、謎の妨害が入れば話は別であるが。


「…どっちにするにしても、返事を返すのが恐ろしくなってきたな。断ったら、ヤンデレ化したりして〜。」


『ワンチャンありそうだな。だって、強い感情を懐かれやすいんだろ?』


「あ。」


口をあんぐりと開けて、呆然としてしまう。何も、強い感情とは、良い感情だけでは無いのだ。勿論、悪感情、つまりは恨みつらみも懐かれやすいのだ。


エーリカが悪に染まるとも思えないが、【亜神】の効果なら、それが無いとも言えない。何せ神が付いた称号の効果である。弱いはずが無いのだ。


「あ〜、もうこの話は終わり!後は、自分だけで決める!」


『そっか。頑張れよ、色男!』


「助かったよ!じゃあな!」


これ以上は、からかわれそうだったので、急いで電話を切る。


そして布団に力を抜いて呟く。


「…俺がどうしたいのか、か。ま、エーリカには時間をちゃんともらったんだ。胃は痛いけど、真面目に考えるとするか。」


口調は真面目だが、その口元には、笑みが浮かんでいた。一輝との会話で、大分気が楽になったのだろう。


これなら、良い答えが出せるに違いない。こうして夜になるまで、聡は動かないでいるのだった。


気配察知に、隣の部屋で聞き耳をたてている人物を感知しながら。

さぁ、一体どんな結論を出すのでしょうか?

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