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第106話 鏖殺(5)

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「おう、サトシじゃないか!良く来てくれたな!」


家に着くと、そこではマリウスが待ち受けていた。まるで、聡が来るのを予期していたかのように、準備が良い。


「お久しぶりです。少しお話したい事があります。と、その前に。【魔法創造(マジッククリエイト)探知(サーチ)】!」


聡は、半径50キロにある、特定の条件を満たす物を感知出来る、【探知(サーチ)】を作り出し、【ディスアピアー】の使い手という条件の人間を探す。


「…うん。こっから20キロは離れてるか。この移動速度なら、あと1時間は大丈夫そうかな?」


こちらに向かってくる存在を感知した聡は、大体の到着予定時間を割り出し、取り敢えず一安心する。


「サトシ?今、何をしたんだ?」


「ちょっと、話が出来る猶予があるかを、確認してました。その結果、少し余裕があったので、軽く自分が来た理由を、マリウスさんに説明してから、事の対処にあたります。」


「なるほど?つまりは、俺のこの嫌な予感は、見事に的中って事だな?」


「えぇ、ドンピシャです。凄いですね。その【直感】スキルは。自分も欲しいくらいです。」


あまりに的確なその能力に、聡は心の底から言う。


「えっと、私も聞いてて良い話?」


「…どうしますか?」


「どうするったって、どんな話になるんだ?」


「ちょいと重くてヤバい上に、社会の裏の話もありますね。」


「私は遠慮する!」


話の内容が、碌でもない物だと理解したイルマは、食い気味に言うと、慌てて部屋から出て行くのだった。


「まぁ、あれで正解ですね。実は、『鏖殺』ってのがこの村に向かってましてね。」


「『鏖殺』か…。って、『鏖殺』!?あの最凶最悪の化け物か!?」


「マリウスさんの言う『鏖殺』が何かは分かりませんが、【ディスアピアー】とかいう物騒な魔法で暴れる奴ですね。既に村が…2つ消されています。この目で確認してきました。」


「…何だと!?村が2つもか!?」


聡の告げる事実に、マリウスは驚愕して大声で叫んでしまう。


「1つ目の村が消された数時間後、自分の元にこの話がきたんですが、その後直ぐに現場に直行して、行先を予想して向かったら、既に何も残っていませんでした。」


眉を顰めながら、聡は淡々と語る。一体いつ消されたのか、調べてはいないので分からないが、若しかしたらもっと急いでいたら、2つ目の村の犠牲は無かったのではと、想像してしまったのだ。

聡に何ら落ち度は無いのだが、一旦その考えに至ってしまうと、ズルズルと抜け出せないのが人間である。


「そうか…。それに対応する為に、サトシがこうして来たという訳か。俺らは避難した方が良いのか?」


「…いや、その必要はありません。ここから数キロ離れた地点で、『鏖殺』は仕留めます。Dead or Alive ですね。」


「でっどおあ?良く分からんが、『鏖殺』が酷い目に合うのは分かった。…でもまぁ、気を付けてくれよ?もしお前に何かあったら、イルマも悲しむしな。」


「えぇ、気を付けます。とは言っても、俺を殺せる奴がいるなら、今頃、片手間でそいつに世界征服されてますよ。」


「おいおい。その言い方だとまるで、サトシがその気になれば、世界征服出来ると言ってるようなもんだぞ?」


「…はっはっはっはっはっ。冗談に決まってるじゃないですか。」


「いや、今の間は一体何だ!?」


こうしてマリウスに話をつけた聡は、『鏖殺』を倒すべく、エンデ村を発つのだった。

_____________________________________________


エンデ村から10キロ程離れた地点で、『鏖殺』はぶるりと身震いをする。


「…?何か寒気が?風邪でもひいたか?」


今まで彼に差し向けられた刺客の中で、最強の存在が向かって来ているとも知らずに、呑気に目的地へと向かう足取りは止まらない。


だがそんな『鏖殺』に、不可視の一撃を叩き込む存在が現れる。


「うぐぅ!?う、腕が!?一体何が起こったというのだ!?」


乾いた音とともに、唐突に左腕に強い衝撃と痛みが走り、慌てて見ると、穴が空いており、血がダラダラと流れ出ていた。


「…ふむ。なるほど。知覚出来なきゃ、【ディスアピアー】は使えないという事か。」


『鏖殺』が腕の痛みに驚愕して、慌てふためいている中、辺りに、10キロの距離を1分ほどで踏破した、聡の声が響き渡る。


「だ、誰だ!?何処にいる!?」


『鏖殺』は辺りを必死になって見回しながら、誰何する。今まで、絶対強者だった立場が崩され、深手では無いとはいえ、傷を負わせられた事に、恐怖を覚えてしまっているのだ。


「キミの後ろ。」


「な!?」


先程からグルグルと360度警戒していたというのに、いきなり背後に聡が立っていて、振り向いた姿勢のまま、排除する事も忘れて固まってしまう。


「ねぇねぇ。2つほど質問があるんだけど、答えて貰えるかな?」


聡の顔は、普通に笑顔だった。しかし、未知の攻撃を受けたばかりの『鏖殺』には、その笑顔は背筋も凍るような、恐ろしい表情であると感じる。


「…【ディスアピアー】!!」


「!」


聡を視界の端に入れたまま、問いには 返事をせずに、『鏖殺』は喉が張り裂けんばかりに、精一杯声を張って魔法を使う。


その瞬間、聡の身体は、半分消し飛ぶのだった。

次回は、少し派手な戦闘シーンです。お楽しみに!

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