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第98話 苦行です

第98話ですが、合計だと100話部分です。良くもまぁここまで書いたと、見返してて思いました。

「何故そんな格好?」


聡がパジャマにと、幾つか手渡していたものの1つだったので、着ててもおかしくはないが、何でここに来るのに着用しているのかが、疑問であった。


「えっと、寝る直前だったので…。」


ー何で寝る直前に、態々ここに来たんだ?…まさか。ー


ふと、フラウが部屋に来る理由に、思い当たった聡は、心配そうに聞く。


「まさか、血が足りない?大丈夫か?」


昼間の魔法行使により、MP消費が激しかったのだろうか。

聡の知識では、吸血鬼は血が足りなくなると、最初は風邪のような症状が出るので、体が辛くないかと、慌ててしまう。


「あ、はい、血は足りませんが、辛くはありません。少し体が火照ってる感じはしますが。」


「そっか。じゃあ、補給しちゃおうか。…ああ、その前に体拭くから、少し待ってて。」


この世界では、一般市民はお風呂に縁遠く、宿屋に設置などされてない為、布を水で湿らせて、全身を拭くだけで済ませてしまうのだ。

流石に何日かに一回は、水浴びをするが。


そろそろ11時になるところだが、考えるのに夢中になっていて、今日はまだ拭けてなかった。


「はい、分かりました。」


別に意識してる訳では無いが、女の子とゼロ距離になるのだから、最低限のマナーとしては当然の措置である。


「…いや、脱がないとあれなんで、せめて後ろを向くとかしてくれると嬉しいんだけど?」


「す、すみません!」


じっとこちらを見たまま、動こうとしないフラウに、聡は苦笑いしながら言う。

するとフラウは、顔を赤くしてこちらに背を向けてくれる。


ー部屋から出るっていう選択肢は無いんかい!ー


気恥しいが、部屋に戻ったり、呼びに行ったりなど、色々と面倒なので、仕方無くここで妥協して脱ぎ始める。


「「…。」」


アイテムボックスから、苦節20年で手作りで作り上げた、スポーツ用の半袖短パン、現代風のパンツを取り出して、ベッドの上に置いておく。

そして、まずは上半身だけ脱いで、手早く拭き始める。


「…。」


「…ごくり。」


「!?」


唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえたので、びっくりして後ろを振り返って、フラウの様子を窺うが、こちらを向いている様子は無いので、安心してまた再開する。


「…(はぁはぁはぁはぁ)。」


「!?」


ーいや、息が荒すぎません!?って、あ、そうか。風邪のような症状が出るんだったな。なら、息が荒いのも仕方無いか。ー


フラウの呼吸音に、またしてもびっくりする聡だったが、直ぐにその理由を理解して、自分を納得させる。


その為、聡は寸前まで気が付く事が出来なかった。

フラウが音もなく(息は荒いが)にじり寄ってくる事に。


「え、フラウ!?」


「ご、ごめんなさい!」


ふと、首筋に暖かい息がかかり、聡が慌てて振り得ると、そこには顔を赤くして、視線が定まらないフラウの姿があった。

そしてフラウは何故か謝ると、聡をベッドに押し倒しながら、自身はのしかかる形になる。


「え、ちょ、何!?普通は逆じゃ無いか!?」


想定外過ぎるフラウの行動に、聡は大混乱しながら、変なところにツッコミを入れる。


「も、もう我慢が出来なくて!」


息を荒らげながら、とんでもない事を言い出すフラウ。これには聡も驚きを通り越して、逆に冷静になってしまう。


「この状況でそのセリフは、少し問題があるぞ…あ、もう聞いてないか。」


フラウは聡をキツく抱きしめながら、首筋に牙を突き立てて、夢中になってしまっていた。


ーあ〜、そういえば、吸血鬼は一度吸った者の血に、病みつきになるとか何とか、トイフェルが言ってたな。そのせいで、ヨハンナは一度吸ったトイフェルの血を求めて軍門に下り、更には心証を良くしようと、必死になった結果があの大惨事と…。ー


トイフェルは比較的自由に、あちこちを移動する魔王だったのだが、そのせいでその命を狙って襲ってくる者が、多数居たそうだ。

その内の1人がヨハンナであり、『魔王だし、殺す前に血を吸ってみよう』とほんの出来心で吸ったところ、あのHPとMPのせいで死には至らしめる事が出来ず、逆に虜にされてしまったという訳である。


ー吸うのは構わないけど、こうも密着されると、ちょっと変な気分になってくるぞ…。ー


柔らかい体の感触と、ふわりと香る花の匂い、そして熱い体温。更には足まで絡ませて来て、聡には刺激が強過ぎた。


「そ、そろそろ充分じゃない?」


「…(ふぅ〜、ふぅ〜)。」


「おいおい…。」


聡の声には答えず、まだ夢中になって吸っているフラウに、少し心配になってしまう。


ーま、まるで麻薬か何かみたいじゃないか?ほぼ全ての事例において、吸血鬼は一度でその生命体を吸い殺すから、こういうのは珍しいから、めっちゃ興味深いんだけど、当事者になっちまうと、それどころじゃねぇ!ー


憐れにも聡は、手を出す度胸も無く、ましてや出せないとキツく戒めてるが為に、もう数十年はトイフェルと共に閉じ込められていた方が、まだマシだという苦行を味わう事になるのだった。

そろそろ聡も、色んな意味で我慢の限界ですかね?

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