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勇者とバナナと練乳と  作者: フェフオウフコポォ
気に入った国と練乳

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58/58

58話 結婚したい人がいるよ


 俺の嫁になっても良いと、みんなが思ってくれているのは、これはもう有難いとしか言えない。


 俺も『初体験は~~』なんて言ってはいるが、ぶっちゃけ元男とか年齢とかそういった物はもう些細な事でしかない。俺だって人としてみんなが好きになっている。


 アンネ、ロウリィ、イモート、ニンニン、ソル、サーイ、カナ。

 まぁ、マツは……なんかゴメン。


 流石の俺も腹を決めた。


 俺のいつもと違う様子に気が付いたのか、みんなが固唾を飲んだ。

 俺は一度全員に視線を向ける。



 カナ


 自分の国の為に尽くすつもりで来た責任感のある人。

 その必要が無くなり肩の力が抜けた今。向けてくれる笑顔は最初の頃の笑顔と全然違う。

 好奇心も旺盛だし、聡い人だ。



 サーイ


 知性と理性、そして優しさと自己犠牲の心も持つ人。

 自分の事を後回しにしがちなだけで、実はこっそり応援している隠れファンが多いことを知らないくらいの美人。目的の為には自分が悪役になろうが一切の躊躇をしない信念の強い人だ。


 ソル


 突然人になったせいで俺に依存している感じはあるが、強さでは多分俺に並ぶくらい強い。

 よくアンネやロウリィと喧嘩をしたりもするけれど、ソルがやりすぎた事は一度もない。

 美貌も兼ね備えていて、性格が治ればすぐに幸せを掴めるだろう。


 

 ニンニン


 いまだに食欲が勝ってしまうような単純な所もあるけど、情報の扱いとかは本当に頼りになる。

 親兄弟に尽くしていたり、自分がどれだけ苦労をしていても、いつも笑顔を絶やさない。

 なにより素直でまっすぐな心が美しい人。



 イモート


 控えめに目立たないように行動する事ができる思慮深さをもっている。

 でも主張する時には主張し、それを通す強さもきちんと持っている。

 そして主張を通した時にもきちんと相手の意向を取り入れるような優しい人。



 ロウリィ


 強く強引に見えるけれど、実は誰よりも広く物事を見て、進むべき方向へと舵を取るような芯のある人。

 明るく隠し事はせず、誰もが信頼したくなる太陽のような人。



 アンネ


 全てを冷静に見て、つらい判断であってもそれを遂行する強さをもつ。

 そして不用意に手を貸さずに、あえて見守る事を選択が出来る強さもあわせ持ち、他者の成長を促す事もできる、まるで月のような人。



 こんなにも魅力的な人たちが、俺の決断。

 誰を嫁にするのか回答を待っている。


 もちろんマツは『ちょっと、私はその気はないわよ』という視線。


 大丈夫。わかっている。

 アンネも洒落で頭数に入れてるだけだ。


 俺は一度目を閉じ、自分の中の腹を決めた。

 ゆっくり目を開き、みんなの顔を見る。


 俺は少し微笑んでから、体中に力をこめ、そして――




 逃げ出した。




 ――が、アンネに回り込まれたっ!!



 ステータス無効化された俺の目の前にアンネの足がある。

 俺が全力で脱出しようとした進行方向を足で塞いだのだ。


ご主人様(ヘタレ)のやる事なんざ、お見通しですよ馬鹿野郎。」


 見守っていた全員が呆れながらため息をついた。


「まさかここにきて、外に嫁を求めようとするとはな。

 旦那様は我らでは満足せんという事なのかのう。流石にショックが大きいわい。」


「ご主人様のヘタレは筋金入りだとは思っていたでガスが、まさかここまでとは。」


「はぁ……拙者も心を決めているというのに、なんともやるせないでゴザル。」


「ヤベエ? まさかボクを置いていこうとしたのかな?

 そんなことは考えられないし、やっちゃいけないんだけれども。」


「御心のままにとは申しましたが……少し諌める事が必要ならば遠慮はしませんよ? これも御身の為です。」


「国王様……カナは悲しいです。」




「い、いや、だって!! だって!!」

「はいはい。大丈夫ですよご主人様。

 はい。一回深呼吸しましょうね~。」


 アンネに言われるまま「す~は~」と深呼吸をする。


「はい。どうせご主人様の事ですから重圧に負けて『自分にみんなはもったいない』とか思ってたんでしょう?」


「う、うん! うん? いや、うん。だってそうじゃん!

 みんなすごい魅力的なのに、俺の嫁にってなんかおかしくない!?」


「はいはい。

 じゃあちょっと黙って、私のこれから言う事に『はい』か『いいえ』かだけ答えなさい。」


「へ?」


「あ?」

「はい。」



「城の外に今ご主人様の好きな女がいますか?」

「いいえ」


「ここにご主人様が結婚したいと思うくらい好きな女が居ますか?」

「…………はい。」



 ロウリィ、イモート、ニンニン、ソル、サーイ、カナそしてマツがゴクリと息を飲んだ音が聞こえた気がした。



「それはロウリィですか?」

「……はい。」


 ロウリィの顔がパァっと明るくなり、他の人達が信じられない。という顔になった。


 アンネは平然とした顔のまま伝える。


「それはイモートですか」

「はい。」


 イモートが顔を上げると同時に、ロウリィが変な顔になった。

 他のみんなも変な顔になっている。


「それはニンニンですか?」

「はい。」


「それはソルですか?」

「はい。」


「それはサーイですか?」

「はい。」


「それはカナですか?」

「はい。」


「それはマツですか?」

「はいいえ」


 マツが驚きを通り越した変な顔で何か言おうとしているが、アンネの問い掛けを邪魔するだけの勇気は無いらしい。



「……私ですか」

「……はい。」



「…………私の事が好きですか?」

「……はい!」



「……私を妻にしたいですか?」

「はい!」



「私を自分の物にしたいですか?」

「はい!

 俺の物にしたいです!」



「……じゃあ抱きしめてください。」



 俺はアンネを抱きしめた。



 抱きしめあい緩やかな時間が流れる。

 そして少し距離を離し見つめ合う。


 ……アンネの少し潤んだ瞳がゆっくりと閉じた。

 俺も目を閉じ、アンネに顔を近づける。


 ロウリィが


「抜け駆けじゃっ!」


 と叫び、ソルが俺を引きはがそうと動き始めた。

 だが、間に合わない。



 ふるん。とした感触が俺の口に触れた。


 なんだか思ったよりも柔らかい。


 ふるふるしてて柔らかい。




 ……ふるふる?


 疑問に思って目を開けると、アンネの顔がぼやけて遠い。


 遠い!?


 思わずアンネを抱きしめていた手を緩める。


「ちょっとすらりん……いい所だったのに邪魔しないでよ。」


 アンネが俺の唇が当たっているすらりんの触手に向けて声をかけている。


「ぐぇ」


 ソルが俺を横から抱きしめ凄い勢いで引きはがし、アンネとのキスは失敗に終わった。

 ソルが俺にベアハッグをかけながら、じと目でアンネを見ている。

 アンネは軽く一息をつき、全員に向き直る。


「はい。というわけで、ご主人様は私達全員と結婚したいらしいですよ。

 なので、全員と結婚しましょうね。」


 と、場を締めた。

 ロウリィが呆れ顔になりながらアンネに話しかける。


「お主……まぁーー堂々と抜け駆けしておいて、ようもそう口が回るのう。」

「あらあら? こういったことは早い者勝ちでしょう?」


「ふん! まだ未遂じゃったからの。許してやろう。」

「はぁ……折角、私のご主人様……旦那様のファーストキスをもらう所だったのに。

 もう。すらりんったら」 


 そう言って、はにかんだような笑顔を見せてくれたアンネ。

 俺はその笑顔に胸の高鳴りを感じ、アンネと見つめ合う。


 ソルがその様子に不満を目いっぱいにベアハッグをの力を強くした。

 俺がきしむ体を走り抜ける痛みに、たまらずうめき声を上げると、アンネが小さく笑いだし、ロウリィ達もヤレヤレと場の雰囲気が柔らかくなった。



 だがが、突然アンネの胸がうにょうにょと暴れだし、すらりんがアンネの服から飛び出した。


 みんなの注目を集めたスラリンは、これまではアンネの胸に収まるくらいの大きさだったにも関わらず、突然肥大化し人型への変形し始める。


 みるみる変わっていくその姿は、まるでアンネを少し幼くしたような姿に変わり、幼いアンネの姿になったすらりんは、まるで人のように口を動かしてみたり、声を出してみたり、首をひねってみたり、色々と確認をしているような素振りをみせた。


 突然の出来事に唖然としながらも、みなですらりんの行動を見守っていると、すらりんは誇らしげに仁王立ちのポーズをとった。


『ダンナ サマの ファーストキスは ワタシが頂きマシた。』


 とウィンクをした。



「「「「「「 なっ!? 」」」」」」



 こうして大国の国王として、俺の新しい生活が幕を開けるのだった。


 バナナと練乳と、そして9人の個性的な嫁達と一緒に。

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