55話 状況を確認するよ
「あっ、あっ」
「ふぅ。朝風呂はいいもんじゃなぁ」
「まったくですね。」
早朝という事もあり風呂は空の状態だったのだが、俺が清浄魔法をかけて綺麗にしてから水魔法で満たし、火魔法で適温まで温める事ですぐに沸いた。
「あっ、あっ」
「しかし、予想外でしたね。まさかご主人様に有効打が入るなんて」
「まったくの……まぁ、人外から人に戻ったと考えれば良いじゃろうて。」
「……そうですね。」
ちゃぽん。と口元まで湯につかるアンネ。
ロウリィは、両腕を風呂の縁にかけて伸び伸びとしている。
「あっ、あっ」
「それに御主人様命令もある程度無視できると言うのも……何と言うか何ですね。」
「そうじゃのう。なんじゃのぉ。」
「お願いだからもうやめて……あっ、あっ!」
「うふふふふふ。キレイキレイにするでガスよ~お嬢様ぁ~」
「そうでゴザル、そうでゴザル~。」
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俺がスネの痛みから解放された後、異常事態を感じ、とりあえず全員のステータスを確認した。
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名前:ヤベエ ナ ユーシャ
種族:ヒト(KAWAII)
職業:勇者(超越) 大気津比売神之迷宮踏破者
レベル:99
HP:988/999(+9999)無効
MP:999/999(+9999)無効
物攻:300(+9999)無効
物防:300(+9999)無効(+1)
魔攻:300(+9999)無効
魔防:300(+9999)無効
速度:300(+9999)無効
幸運:300(+9999)無効
装備:浴衣
スキル:【折りたたまれている物を表示する場合はタップしてください】
ステータス:焦燥(軽)
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名前:アンネ ナンデス
種族:ヒト(クールビューティ)
職業:女勇者(主:ヤベエ) 大気津比売神之迷宮踏破者
レベル:99
HP:999/999(+200)無効
MP:999/999(+200)無効
物攻:300(+200)無効
物防:300(+200)無効(+1)
魔攻:300(+200)無効
魔防:300(+200)無効
速度:300(+200)無効
幸運:300(+200)無効
装備:浴衣
スキル:極めし者 世界の加護Ⅰ 勇者(小)
勇者(超越)の従者 並列思考(高)
足技 俊足 氷結魔法 補助魔法 精霊魔法 交渉術
ステータス:困惑(軽)
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名前:ロウリィ バッバ
種族:ヤーマンッバ人(愛されたい)
職業:ヤーマノサッチ国主(主:ヤベエ) 大気津比売神之迷宮踏破者
レベル:99
HP:999/999
MP:999/999
物攻:300
物防:300(+1)
魔攻:300
魔防:300
速度:300
幸運:300
装備:浴衣
スキル:極めし者 世界の加護Ⅰ
鬼頭流格闘術 松竹拳2~10倍
超ヤーマンッバ人 超ヤーマンッバ人2 超ヤーマンッバ人3
覚醒変化(成熟体) M気質(小) 勇者(超越)の従者
魔力効率運用 魔弾 魔力解放
ステータス:羨望(軽)
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名前:イモート ナンデス
種族:ヒト(カワイイ)
職業:従者(主:ヤベエ) 大気津比売神之迷宮踏破者
レベル:99
HP:999/999
MP:999/999
物攻:300
物防:300(+1)
魔攻:300
魔防:300
速度:300
幸運:300
装備:浴衣
スキル:極めし者 世界の加護Ⅰ 勇者(超越)の従者
ラーニング 情報収集(軽) 投擲(中)
鬼頭流格闘術(序) 魔弾(序) 俊足(軽)
料理 掃除 整理整頓 清浄魔法(序)
浮遊魔法(序) 回復魔法(序)
受け攻めリバーシブル
ステータス:普通
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名前:ニンニン デゴザ ルー
種族:ヒト(エロカワイイ)
職業:忍者 大気津比売神之迷宮踏破者
レベル:99
HP:999/999
MP:999/999
物攻:300
物防:300(+1)
魔攻:300
魔防:300
速度:300
幸運:300
装備:浴衣
スキル:極めし者 世界の加護Ⅰ
情報収集 情報リーク 色仕掛け 色香
短刀術 俊足 忍術 暗殺術
単細胞 食欲増進
ステータス:困惑(中)
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名前:すらりん
種族:スライム
職業:ペット(胸住まい) 大気津比売神之迷宮踏破者?
レベル:99
HP:500/500
MP:500/500
物攻:99
物防:99
魔攻:99
魔防:99
速度:99
幸運:99
装備:なし
スキル:極めしスライム 世界の加護Ⅰ
毒付与 麻痺付与 混乱付与 溶解 分裂 触手
変態 肥大化 知性 一途
ステータス:寝ぼけ
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まさかスラリンまで最高レベルになってるとは思わなかった。
みんなの増えてる能力が色々あるのも気になるが『世界の加護Ⅰ』というのが問題だったようだ。
調べてみると、これは『対峙した相手の補正を無効化』すると言う自動発動のスキルだった。
つまり俺の場合は、超越の補正効果『+9999』が、このスキルを持った相手には無効化される。
アンネの場合は勇者(小)の補正効果『+200』、ロウリィは超ヤーマンッバ人や覚醒体の補正が無効化される。
だが無効化されても対峙していない相手に対しては有効であるということも分かった。
要は俺の人外パワーが、すらりん含め4人には無効化されてしまうという事。
つまり俺を殺そうと思えば殺せる状態になった。
そういう事に気が付いて内心ビビッてしまっていたのだが、アンネやロウリィが
「まぁ、いい生活もさせて頂いている恩もありますから、安心してくださいな。殺す理由なんてないですし。」
「そうじゃのう。旦那? 様? が、いつまでも我を放っておくと殺したくなるかもしれんがな、」
「その時は私がご主人様を守りますよ。」
「いいカッコしおって……まぁ、我も我以外に旦那? 様? が殺されそうになるようであれば守るぞ? 妻の役目じゃからな。」
そうにこやかに話してくれたので安心して風呂に向かった。
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「信じた結果がコレだよ!」
「ご主人様命令も微妙に無効化されるかも」とアンネが閃き、イモートとニンニンに対して「ご主人様を念入りに洗え」と号令をかけたのだ。
二人が嬉々として洗おうとするから「やめて!」とご主人様命令を連発したのだが、結果としては「少し抵抗感を感じる」くらいのノリでキレイキレイされてしまったのである。
ご主人様命令も無効化できるという事が判明しピンチに陥ったにも関わらず、まるで守ってくれないアンネとロウリィの二人。というよりも元凶を作った上で放置するという所業に半泣きになりながらもぼやかずにはいられない。
風呂に入っていないのに必要以上に磨かれ、おもちゃにされて疲れた俺は、さっさと風呂に入ってゆっくり癒す事にした。
ニンニンとイモートはツヤツヤしながら、満足そうに湯につかり、すらりんもまた手桶に入ってのんびりしている。
湯につかっていたアンネが口を開く。
「で、私達の現状はなんとなく理解しましたが、この後はどうするんですか?」
「ん~~……なんとなくアリエナイの宰相が戦争のきっかけになりそうで、それを止めないとダメって気がするから。一旦アリエナイに行って何とかしてこようと思う。」
「ふむん。じゃあ我はこの国に残るからの。」
「そうなの?」
「我は國主じゃぞ? おいそれと他の国に向かう事もできまいて。」
「それもそっか。わかった。
アンネはどう思う?」
アンネに視線を向けると、目を閉じて考えを巡らせているようだ。
しばし湯につかり、体の疲れを取る事に意識を傾ける。
まったりとしていると、アンネが考えを巡らせ終わったようで目を開けて語り始めた。
「確かに戦争に発展してもおかしくは無いですね。
あのトイレを含め、ご主人様の力を利用できる国は発展するでしょうから各国ご主人様を抱え込みたいと思うのは間違いが無いです。」
風呂の縁に頭を乗せながらアンネの意見に耳を傾ける。
「現時点ではアリエナイの国だけがご主人様の力を知っていて、ご主人様を使役したいと考えている。
ただ、うちの御主人様は人外の能力を有して交渉が難しい相手ですから、てっとり早く言う事を聞かせるならば、肉親なりを人質として庇護下におくのが話も早い。
成功するにしろ失敗するにしろ、動きがおきれば間者などの活動が活発化し、それが徐々に大きくなりやがて戦争になる。」
アンネの話に皆が耳を傾けている。
そして俺はニンニンを思い出した。
「そう言えばニンニンはアリエヘンに手紙送ってるんだったよね?」
「うっ、そ、そうでござる……けれども拙者別に間者というわけではござらんからな?」
「わかってるって。ちなみにトイレの話とかはもう伝えてあるの?」
「ポァーーンの話を交えて伝えてゴザル。」
一瞬なんのことかわからなかったが、アンネが顔を逸らしたので思い出した。
イモートも失笑をこらえているし、ニンニンもイモートの様子からフヒッと小さく笑っている。
ロウリィだけが置いてけぼりにされたような顔で不満げな表情を浮かべていた。
「……で、あればきっとアリエヘンでも争奪を想定した備えをしている可能性も高いでしょうし、きっと今頃はどうやってご主人様を自国に戻すかを考えている事でしょう。」
アンネはまた少しだけ思案し、俺を見た。
「一つ提案なんですが……各国の思惑で火種が生まれそうな状況ですし……ここはもう、ご主人様が火種になりそうな国をまとめてしまえば話が速いんじゃないですか?」
「……はい?」
また参謀が訳の分からない事を言う。
「アリエナイの国とアリエヘンの国は放置しておけば戦争に向かうのでしょうし、御主人様はそれを阻止したい。
であれば、ご主人様が一つの国にまとめて統治してしまえば争いも起きないでしょう。」
イモートが「お~」と、納得したような声を出している。
俺はチーンと音が聞こえてきそうな白目だ。
「だってご主人様は人外ですし。
それに今や私達まで異常な強さを持ってますからね、有事にあたって勇者軍団が組まれても、私達の補正無効の前ではただの人ですから鎮めるのも楽でしょう。
戦力の問題は何もありません。」
ニンニンも「お~」と、納得したような声を出している。」
「ふむ。面白いのう! で、あればじゃが、ヤーマノサッチが新国家の首都でどうじゃ?」
ロウリィが笑いながら提案した。
「それも良いでしょうね。
その場合、この国から侵略を開始するというような取られ方をしないようにした方が良いでしょうね。
あくまでも、アリエナイとアリエヘンの国を制圧し押さえてから、ヤーマノサッチを併合するという方が良いかもしれませんね。」
「お……おん。」
俺の思惑はただ宰相の動きを止める事だけだったはずなのに、いつの間にかアンネのせいで国取りの話になっているのだった。




