５２話 踏破したから休むよ
迷宮を脱出してから浮遊術を使って城へと帰還した。
そして、城の門を前にして、ロウリィが皆の前に立ち得意げな顔で口を開く
「さぁて！ 迷宮で、かなり汚れもついておるじゃろうし、まずは湯あみで汚れを落とすことにしようぞ。」
「あぁ、それは素敵ですね。」
「確かに足の疲れとかもとれそうでガス」
「拙者湯あみはあまりしたことないでゴザル。賛成でゴザル！」
皆が同意の言葉で続く。
俺も納得だ。迷宮に長くいたから湯で体の疲れを取りたい。
「それじゃあ、俺は男に戻るとするかな。」
「そうじゃの。それがよい楽しみにしておるぞ。」
「へ？ 何が楽しみなの？」
「湯は一つしかないからの。ふふふ。どうせ一緒に入るなら旦那？ 様？ よりは旦那様と入りたいのじゃ。」
「…………」
ロウリィの言葉に想像力をフル稼働する。
うん。アカン。
アカンわ。
考えるまでもないわ。
きっと、きかん坊が、言う事きかん棒になる。
「はい。このまま入ることにします。」
「ふふふ。そう言うと思ったぞ。
まぁ我も初体験が５Ｐよりは、しっぽり２人でという方が嬉しいからの。それで構わんえ。」
「ご………え？」
ロウリィの言葉に狼狽えているのは、俺とニンニンだけだった。
アンネもイモートも『まぁ、そうなったらそうなりますよね』的な顔をしている。
なんというか幸せな気もするが、男に戻るのが怖い。
そんな事を思いつつ、ロウリィの案内で湯屋へと向かうのだった。
――皆一緒に湯屋に着く。
すぐに脱衣所を通り過ぎて浴室を覗いてみる。
大きめの家族風呂という感じの檜でできた風呂に、溢れんばかりになみなみと湯が張られていた。
「すっげー！」
本格的な和の風呂にテンションが上がり、皆の共感をもらおうと思い振り返るとと、すで素っ裸になっているロウリィが目に飛び込んできた。
全裸にも関わらず腰に手を当てて堂々と仁王立ちだ。
「どうじゃ！ 我の自慢の檜風呂じゃっ！」
「…………すごいよ……すごい……けど、ロウリィはもうちょっと……恥じらいを持とうよ。」
「はんっ！ 今はここには女しかおらんではないか！ 我が女らしゅう恥じらう姿を見たいんであれば男に戻るんじゃな。」
そう言って、豪快に笑いながら浴室へと入っていった。
その後ろでは、アンネがロウリィの脱ぎ散らかした服を拾い上げ折りたたんで、たたみ終わるとすぐに自分も脱ぎ始めた。
思わずその動作を凝視する。
アンネがエプロンを外し、続いて第一……第二とボタンと外していく。
すると、ぷるん。と服に抑圧されていた物が露わになった。
「あ～……すらりん忘れてたー。」
俺は思わず膝をついて崩れた。
期待していた物ではないものを見せられたガッカリ感が強かったのだ。
「もうご主人様がアホな事には慣れてますから私は何も言いませんよ。ほら。ご主人様も早く脱いでくださいな。入りますよ。
あ、そうそう。ご主人様は私たちの脱いだ衣服に清浄魔法をかけて綺麗にしておいてくださいね。」
顔を上げると、すでに手桶にすらりんを入れて持っているアンネの姿。
全裸だった。
イモートとニンニンも全裸で並んでいた。
ニンニンだけ手拭いで胸元を隠しているが、チラチラ見える素肌が逆に扇情的だ。
……心が男の俺はその姿に興奮を覚えた。だが女の体は、俺の心を素直に反応＆反映してくれる物が無かった。本来なら大きく反応したであろう物が無い事に戸惑う。
例えるならという球をピッチャーから１５０ｋｍのドストレートで投げてきて『よっしゃホームラン確定だ！』と豪快に振ったらバットが無かったような状態だ。
発生した悶々とした劣情が失速して弱くなっていく。
だがその悶々が消えるかと言うとそうではなく、むしろ落ちた先で積もっていくような感じがしないでもない。
「？？ ん～～～？？」
「そのうち慣れますよ。
慣れたくなかったら、とっとと男に戻ってくださっても構いませんよ。」
俺が初めての感覚に首を捻っていると、アンネは一言だけ言い残し浴室に入っていった。イモート達も続き脱衣所には俺だけが残された。
正直ぶっちゃけ男に戻って、もうめちゃめちゃになってもいいんじゃないかと思わないでもない。
今すぐに男に戻って、女体溢れるお風呂に突撃して、ひゃっはー！ 酒池肉林だぜー！ したい。
でも、その思いを現実にするほどの根性も無いので、大人しく服を脱いで、自分の服と皆の服に清浄魔法をかける。
日本刀を置いた際に、そういえば今回は日本刀が頑張ってくれたと思い「お疲れさま」の意味を込めて清浄魔法をかけておく。
すると日本刀がなんとなくカタカタと揺れたような気がした。
不自然な揺れで気になったので、手に取って少しだけ鞘から刀身を抜いてみる。
すると、赤いオーラが青いオーラに変わっていた。
完全に抜き身にして様子をうかがうと、赤い時には『早く振れ！ 切れ！』というような意思を感じていた刀だったのに、今は『必要意外に振ってくれるな。まぁ、振られたら仕事はするが……』」的な印象に変わっていた。
ただ、控えめな雰囲気と言えど『触れる物は切る』というような芯も感じる。
マジマジと刀身を眺めていると、それに映る自分の姿があった。
「うっそ！ かっわいい！」
刀に映る女体化した自分の姿が可愛い女になっていたことに、思わず鏡を手に取るように刀身に触れる。
「あいたーー！」
刀身はやはり鋭く、手を切ってしまったので慌てて回復魔法で回復し、刀身にも清浄魔法をかけて汚れを取った。
清浄魔法をかける前、俺の血がついた刀が赤色のオーラに戻りかけたような気もするけれど……気まぐれなんだろうか。
とりあえず日本刀をしまう。
「むっふーん！」
折角可愛さを実感したので可愛い自分の胸を揉んでみる。
俺は今、可愛い女の胸を揉んでいるのだ！
………うん。
ただ、むなしかった。
色々を諦め、おとなしく浴場へと向かう。
浴場ではすでに、ロウリィとアンネは湯船につかっていた。
「……お～～……遅かったのぉ旦那？ 様？ よ。ちゃーんと最初に体を清めてから入るのじゃぞ～……あ゛～～……」
オッサン臭い声を出すロウリィの横で、アンネもリラックスして湯を楽しんでいる。
その横には、少量のお湯を張った手桶にプカリと浮かんでいるすらりんもいた。時々ふるんと動いて上機嫌そうな雰囲気だ。
お風呂好きなスライムってどうよ？ と思いつつも、湯の誘惑には抗えず、さっそくお風呂を楽しむ為に体を洗おうと手桶や腰掛、手拭いを探す。
「ふふふふ……お嬢様。お手伝いするでガス。」
「拙者も助太刀いたす」
迷宮で俺を撫でていた二人が何やら手をワキワキとしながら寄ってきた。
妙にゾワリとする感覚から思わず胸や股を隠して２人から後ずさる。
「遠慮しなくていいんでガスよ おっ じょ お さ ま」
「ふふふ。女歴は拙者の方が長いでゴザルからな。安心するでゴザルよ。丁寧に気を付けるところを教えてあげるでゴザル。」
ニヤニヤしながら寄ってくる豊満なおっぱい達。
嬉しい状況のはずなのに、なぜだろう。怖い。
「い、いや。あの。自分で、できますんで。はい。おかまいなくっ！」
「まぁまぁまぁまぁそう言わず～」
「普段のお礼でござるから～」
「ひゃああっ！」
－－＊－－＊－－
「國主様 お湯加減はいかがですか？」
「ん～……いい湯じゃー……冷めぬ程度によろしく頼む。」
私がお湯番を任され早２年。
今日は珍しく國主様がお仲間と湯をご一緒されておられる。
声色を聞く限りは５名ほどのお方が入られている。この人数がお湯を使うのであれば、少し強めに焚いておいてもいいだろう。
しかし………先ほどから聞こえてくる声……中では一体何が起きているんだろうか。
耳を澄ませる。
「ほっほっほっほ、これは何やら楽しそうな事になりそうじゃのう。
どれ、我の特製の香油の入った汚れ落としを貸してやろう。アンネよ、お前にも貸してやったじゃろ？ アレは今どこじゃ？」
「借りた際の指示の通り、アソコに置いておきましたよ。」
「お～、そこにあったか。
イモートよ。そこにあるそれじゃ。使ってもよいぞ。」
「ありがとうございますー。おおお……いい香り。
ふっふっふ。さぁお嬢様～。ちゃあんとキレイキレイしましょうね～。」
「ちょ、ちょ、イモート！ なんで素手！？」
「素手は当然でゴザルよ～。女の柔肌に手拭いなどは刺激が強いでござるからな。素手が最も手入れに適しているでゴザルよ～」
「ちょ！ え！？ なんで！？ なんでニンニンは俺を羽交い絞めするの！？」
「お嬢様～、ここは特に汗がたまりやすいですからね～」
「ひゃあん！ ちょ、えっ！？ えええっ！？」
「拙者もヤベエちゃんを洗うでゴザル～。」
「ふあああ！！ ちょ、先っちょヤメ！ んんっ！？」
「「 キレイキレイー 」」
「イモートにニンニンよ～。きちんとデリケートな所も洗ってあげるのじゃぞ。」
「そうですよ～。ちゃーんと念入りにね。」
「「 かしこまり～えへへへ～～ 」」
「！ ちょ！ ひゃんっ！！ だ、ダメ、自分でやるから！ なんかそれヌルヌルしてて変なかんじするからっ！ ちゃんとやるから！ ふああっ！
えっ！？ ちょ……それすっごい恥ずかしいんだけど！
いや、本当に恥ずかしいからやめ、やめ！ んん！
……え？ なに……そこって剥けるの？
！！！？ っあああああ！！」
「はぁ～いい湯じゃのう。」
「そうですねぇ」
すらりんがプルンとそれに応えるように震え、その裏で湯焚きが微妙に興奮しながら、リラックスタイムは更けてゆくのだった。
キレイキレイにされながら、魔バナナを無理矢理食べさせられるのってこういう感じだったのだろうな……と、ふと思うヤベエであった。
