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勇者とバナナと練乳と  作者: フェフオウフコポォ
気に入った国と練乳

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50/58

50話 ダンジョン深部を進むよ

「ここからは何があるか本当にわからん。

 じゃから旦那? 様? よ……宜しく頼むぞ。」

「うん。任せといて。

 そんで、いい加減慣れて。」


 いまだ甲高い声の俺に慣れていないのか、それとも女体に向けて旦那というのが納得できないのか変なところに疑問符をおくロウリィに返答する。


 実際、ロウリィが潜れない階層に進むのだから、普通の人間だと辿りつく事すら難しい場所になっているはずだ。

 なにせ先のボス部屋は、高レベルのロウリィに加えドーピング済み勇者のアンネ、そしてスキルパクリ魔のドーピング済みイモートが居て倒せるようなボスだったのだから、ダンジョンの難易度は『超高難度』といっても間違いない。

 例えるならRPGゲームでの『強くてニューゲーム』時に楽しむ為のダンジョンみたいなもんだろう。

 今の状態のパーティで向かっても、経験値ウハウハ祭りのはずだ。


 嫌が応にも期待してしまうと同時に、万が一ではあるが俺でも苦戦してしまったり、なにかしらの悪影響を与えるような敵や罠も出てくる可能性もある。


 もし万が一、俺に何かあったら全滅必至だろう。

 ロウリィの前を見据える真剣な表情からもそれが伝わってくるから身が引き締まる。

 俺達はゆっくりと足を進めた――



 41層に入ると雰囲気がガラリと変わっていた。

 迷宮内の明るさが増したというか、まるで五月晴れの屋外にいるような明るさだ。


「これは……なんとも不思議な空間ですね。それになんだか広い気がします。

 ご主人様のスキルで広さとかわかりますか?」


 アンネの言葉に脳内でスキルを働かせる。


「…………?

 ……あれ? おかしいな……魔物とかお宝の情報が分からないぞ。」


 これまでなら、なんとなくの敵の位置とお宝の位置が分かっていたのに、今は全てに靄がかかったようになっていて分からない。


「これは……要注意じゃな。」

「えぇ。気をつけて進みましょう。」


 41階からは異質になると言う事かもしれないという結論をもって、一層の注意を払って探索を行う事になった。

 そして探索を始めてすぐにココは他の階と違うと理解させられた。


 大きな扉。これまでにも見てきたボス部屋の扉が3つ並んでいたのだ。


 止まっていても仕方がないので罠の気配は感じないのでとりあえず一番右の扉を開く。

 すると、そこは広い空間。

 まるで日本の田園のような風景に穀物が実っている。ロウリィがその穀物を手に取った。


「これは『あわ』じゃな。」

「へ~~! 初めて見た。」


 イモートが少しだけ採取する。

 少しだけの理由はまだ41階だからだ。この迷宮は進めば進むほど色々と食料が手に入るので、大量に取る必要はない。次階にはより良い物がある確率が高いのだ。

 今、開いた部屋はひたすらに広い空間に粟が実っている空間だった。


 元の部屋に戻り、次は左の扉を開ける。

 すると粟と同じような風景が広がっていた。


「これは『きび』じゃな。」

「へ~~! これも初めて見た。」


 またもイモートが採取し、部屋を調べても粟と同じくこの部屋にはひたすら広い空間に黍が実っているだけだった。


 部屋を後にし、残された中央の扉を開く。

 そしてすぐに固まる。


 固まった状況を前の世界を例にして例えるならば、同僚と居酒屋でいい酒を飲んで「いや~、今日は酒がうまいなぁ、よし! はしごしよう!」と和気藹々と次の居酒屋の扉を開いたら、なぜか出入り前の暴力団の事務所の玄関を開いていた……という感じだ。


 ――モンスターハウス。


 扉を開けた瞬間に多数の魔物の敵意ある視線を向けられるのは、警戒していてもゾっとする物があった。


 すぐに危機感が働き、正気に戻って日本刀を抜く。

 俺の後ろにはアンネたちが居るのだ。取りこぼしてはならない。


「おぁああっ!」


 魔物と距離がある状態で、気合を入れて横一閃に日本刀を振りぬく。

 すると日本刀の赤いオーラが『待ってました』とばかりに伸びに伸び、部屋にいた魔物のすべてに横線が走り切り裂いた。

 致命傷を受けたモンスターが消え始め、場には静寂が訪れた。


「これは……旦那様がおらんかったら我でも死んでおったの。」


 ロウリィの縁起でもない呟きに静寂が破られ、背筋が冷える。


「……どうする?

 流石に危ないし、ダンジョン攻略はやめて引き返すか?」

「なぁに、今の様子をみておれば、旦那様が一緒なら問題は無かろうて。

 それともどこか調子が悪いのかえ?」

「いや、調子は問題ないけど……みんなが危ないのはちょっとイヤだから。」


 俺の真剣に心配する言葉を聞いて、皆はなんともニヤニヤとしたような照れたような顔をしている。


「なんじゃなんじゃ? ウチの旦那? 様? は心配性じゃのう。我は心配されることなんぞ無かったからむず痒くもあるが、なかなかに嬉しいぞ。」

「安心してくださいご主人様。戦えなくとも、ただ逃げるだけなら私達でも何とかなるでしょう。」


 と明るく答えた。


 俺は皆の様子を見て、軽く息を吐く。

 進むほか無いだろうが、万が一の事態を起こす訳にはいかないから気をつけようと強く思いなおし、、一層気を引き締めて進む事を決めた。


 静かになったモンスターハウスでは敵の数が多かったせいもあって、所々レアドロップで何かの肉なんかが落ちていたが、あまりに広いので、通り道にある物だけ拾っておいた。


 しばらく歩くと別の扉に行き当たり、恐る恐る開く。

 すると階段に繋がっていた。


 階段の先の42階層はただの一本道だった。

 扉も一つしかなく、それをゆっくり開くと、41階層でみた粟と黍と同じように、今度は『豆』が育つ風景が一面に広がった。


 豆も少し採取し奥へ進むと扉があり、開くとまたモンスターハウスだったので、一閃して進むと、扉があって階段が続いていた。

 なんとなく40階層の要領が分かってきた。


 43階に進むと、『麦』ののち、モンスターハウス。

 44階は『米』の後モンスターハウス。

 45階は何時もあるはずの転移装置が無く、同じような作りのまま『木苺』。その後モンスターハウスだった。


 以降も同様の形で、


 46階には『無花果』

 47階には『光桃ネクタリン

 48階には『柘榴』

 49階には『林檎』


 と続いた。


 流石にいくらアホの俺でもこの特定の穀物や果物だけが採れ、そして必ずモンスターハウスが侵入を拒むように続く作りであることには異様を感じていた。


 そして次の50階は、これまでの通りであればボス部屋があるはずであり、一筋縄ではいかないようなボスが居るような気がしてならない。

 例えばゲームでよくある、これまでのボス大集合的なラストダンジョン的なオチが待っていても不思議じゃない。

 だからこそ皆に降りるかどうかを改めて問う。


 ロウリィは好奇心が勝っているようで、アンネも俺の力量からボスの総力戦であってもまったく問題ないので気にしている様子はなかった。というよりもアンネも探究心の方が大きくなっているような気がする。


 イモートは「日本刀が欲しい。ご主人様の技はなんでか見習いできないものが多いので、とりあえず振って真似してみたい」と何やら危険な技を覚えようという好奇心が勝っている。


 そしてニンニンは食欲が勝っている。

 もちろんこれまでの階層の物は全て食している。ぶれない子だ。


 俺の心配をよそに皆の決定をもって50階へと進む事になった。


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