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勇者とバナナと練乳と  作者: フェフオウフコポォ
旅の始まりとバナナ
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5話 ニンニンと隣国に移動するよ


 バナナを食べ終わり糖分が脳に回ったのか、ちょっと落ち着きつつ上着を羽織ったニンニン。

 改めて眺める。


 ポニーテールの黒髪に優しそうな目元。

 年の頃は19くらいだろう、姿はニンジャそのもの。薄着で胸は豊満。なかなか目のやり場に困るスタイルになっていて、なんとも見目麗しい。


 顎に手を当てつつマジマジと見すぎていたせいかニンニンが危機感を覚えたように身構えた。なんとなくその素振りが少し恥ずかしそうなのを隠したようにも虚勢を張っているような背伸びをしたようにも見えて微笑ましくも可愛いらしい。


 勢いに任せてやった事とはいえ……グッジョブ自分。

 あまりの功績に、つい大きく首背する。


「ヤベエ殿……そろそろ男に戻して欲しいのでゴザルが……」


 そんな俺を見たニンニンが不満を言葉に隠すことなく声を上げた。

 自分が逆の立場だったらと思うと確かにゾっとしないでもない。

 日本に居た頃に『自分がされたらイヤな事はするな』という文句を教え込まれ、その教えは精神に刷り込まれている。


 ただなんだ……それはそれ。コレはコレだ。

 男の同行者よりは女の同行者の方が個人的に有難い。


 有難い存在すぎるので、ここはひとつ説得を試みる事にした。


「ええ。ニンニンさん。そうですね。いきなり変な魔法を使っちゃってすみませんでした。」

「い、いえ。戻してくれるのであれば何も問題ござらんよ」


「はい。分かりました。それも当然ですよね。ただ……ただですよ? ……本当に戻しても良いんですか?」

「……どういう意味にゴザル?」


「いや、なんだかんだ言っても、ニンニンさんは俺のストーカーなワケじゃないですか?」

「ス、ストーカーではござらんっ! 失礼な!」


 憤慨するニンニンに構わず続ける。


「いや、俺の追跡者なんでしょ?」

「そうでゴザル!」

「俺につきまとうんですよね?」

「そうでゴザルっ!」


 沈黙が流れた。

 ニンニンは言葉の意味を思い返しハっとする。


「……拙者……ストーカーにござった。」


 しゅんと落ち込むニンニン。

 俺は大げさにうんうんと首背してみせる。


「でね、ですよ。俺としては正直なところを言えば、男のニンニンさんにストーカーされるよりは、女のニンニンさんに追跡される方が嬉しいんですよね。分かってもらえますよね。男のニンニンさんなら。」


 敢えて女の時のストーキングをストーカーではなく『追跡』として肯定的な印象を持たせる。

 ニンニンもうんうんと頷く。


「……その気持ちは分かるでござる……拙者、男でござるからなっ! 男としてっ!」

「ですよねっ! 分かって頂けるのであれば、今後俺が男のニンニンさんのストーカーに嫌気が差しちゃったりすると、ほら、最初の時みたいに超スピードで逃げちゃうかもしれない気持ちも分かってもらえますよね!」

「う……」

「けど、まぁ? 今のニンニンさんみたいな女の人に追跡されるんだったら? そんな事するはずないって気持ちも……しっかり分かってもらえますよね!?」

「うぅ……」


「さらにさらに? もし追跡者が女の人だったらば? こうして話すようになった今? 俺もニンニンさんが出来るだけ快適に過ごせるように宿とか用意したりとか気を使うと思うんですよ。

 そうすればニンニンさんは、より快適にそして確実に追跡も監視も出来ますよね? ね? 仕事上手!」

「うぅっ……」


「……でも男だったら……そりゃあねぇ。勝手にしろですよ。」

「うぅう……」


 ニンニンは少したじろぎながらも頭を抱え真剣に考え始めていた。

 その頭頂部を見ながらニヤリと口角が上がる。


「あれあれ? そういえばニンニンさん……『任務に命かけてる』とかって言ってませんでしたっけ?」

「むむっ? そうでゴザルっ! 任務は拙者にとって絶対でゴザルっ!」


「うんうん! あれ……? だとしたら、任務よりも男に戻る方が優先してるって事になるんじゃあ…………あ。いや失礼。大事な事ですよね。『男』としては。ええ。ニンジャではなく男としてはね。」


 ハっとしたような顔つきになり、こっちを見るニンニン。

 そう、忍者と男を天秤にかけさせたのだ。


 その後、目を伏し、しばらく考え、何度か頭を縦にも横にも動かした後、ニンニンは再度こっちを見た。


「……ヤベエ殿……拙者、このままでいいでゴザル!」


 驚いたような表情を作り、保ちながら心の中でほくそ笑む。

 そしてニンニンの言葉が衝撃なように慌てて見せる。


「いやいやいや! 流石に俺も人の嫌がる事をしてしまうのは心が引けるんですよ! ですのですぐに戻しますって! 本当にすみませんでした。」

「ふぇっ!?」


 一度大きく頭を下げて謝罪し、女体化の魔法をかけた時のように、ニンニンの胸の近くに手を伸ばし、解除のポーズをする。

 ニンニンは慌てて両手を横に振りながら矢継ぎ早に口を開く。


「ち、ちが、全然嫌がってないでゴザルっ! 拙者、昔から女になりたかったのでゴザルよっ!! そう! 拙者クノイチに憧れていたでゴザル!」


 必死に魔法解除を阻止しようとするニンニンに、うっすら笑いながら言葉を返す。


「いやいやいやいや! そんな無理しなくていいんですってニンニンさん。無理矢理頑張ってるのがモロバレですよ? さっきまで『男として』とか散々言ってたじゃないですか。」

「イヤ、本当なんでゴザルっ! 本当に今の状態は願ったり叶ったりでゴザルっ! そう! これでクノイチしか使えない技とかも遠慮なく使い放題にゴザルからなっ! 誠に有難い限りでござる!」


 ニンニンの慌てて放った言葉に思考が止まる。

 俺の様子にニンニンも首を傾げる。


「……クノイチしか使えない技?」


 俺がポカンとしながら問い掛けると『そういえばなんだろう?』と言わんばかりにニンニンもポカンと首を傾げた。が、その後、ハっとした顔で何かに気づき赤くなった。


「そ……その……い、色仕掛け……とか」

「あ、あ。はい。」


 お互いなんとなく赤くなりながら下を向く。

 俺は動揺しつつも、どうしても聞いておきたい気持ちが溢れだし、勇気を振り絞ってみた。


「えっと……ニンニンさん。

 ちなみに……その技を使う予定はあるんでしょうか?」

「い、今はまだ、その……できないでゴザル。」


 俺はニンニンの返答にちょっとガッカリ……いや、心底ガッカリしてしまう。

 それが顔に出ていたのかニンニンが勢いよくコッチに詰め寄りながら慌てて続けた


「い、今は無理でも! その内出来るようになるかもしれんでゴザルっ!」


 ニンニンが勢いよく詰め寄った事で俺の思考が天に召される。

 口が勝手に開き、動いた。


「……あの……もう………出来てます。」


 魔法をかけようとニンニンの胸の前に出していた手。

 そしてそこに詰め寄るニンニン。

 豊満で柔らかな感触がしっかりと手にジャストフィットで、イエスだ。


 おおジーザス。

 アメイジンだよ。


 ニンニンも俺の手にガッチリと自分の胸がピッチリピッタンコしている事に気付き、慌てて後ろを向き距離をとった。


 俺は余韻で天使との会話を楽しんだ。

 やがて会話は消え、そして気まずい沈黙が訪れる。


「その……スマンでござる。」

「いえ……こちらこそ有難うございます。」


 沈黙を割ったニンニンと、それに妙な返答をした俺。

 お互いに汗を流しつつ赤くなる。

 なんとか再度沈黙が訪れる事がないように、気を回して考えもまとまらないまま口を開く。


「……えっと……じゃ、じゃあ。とりあえず、今回、女になったのはニンニンさんの希望通りって事でいいんですかね?」

「あ、はい、そう……そうでゴザル。

 完全に拙者の意思でゴザル。」

「そっか。良かったです。」

 

 …………


 沈黙が訪れないように気をつけたが、会話が続かない。

 しばらくどう会話をしたものか悩んだが、開き直る事にした。

 一度息を吐き、しっかりと前を向く。


「……変な事を聞きますが……い、色仕掛けの関係とかって……今後、期待してもいいんですかね? その、だ、男女の関係的なものを。」


「そ、それは……せ、拙者が女になっているでゴザルからな……そ、それも特訓するかもしれん故……そ、そうなってもおかしくないかもしれんでゴザル。」


 ニンニンの言葉に、俺の顔がニチャっと崩れたのが自分で分かった。

 その顔を見てニンニンが顔面蒼白になったのも分かる。ニンニンは白い顔で慌てて続けた。


「がっ! ま、まだそういう関係には早いでゴザルっ!! 無理でゴザルっ!」

「で、ですよねー。」


 俺は妙に照れながらも、とりあえず休憩は終わりにしてアリエナイの国に向けて移動する事にし、再びニンニンと共に走って移動を開始した。


 ……すると大問題発生。


 ニンニンの胸が揺れて痛いらしい。

 おおジーザス。ビッグバスト、ブレスト乳房問題。


 解決方法を考えると、ペースをゆっくりにして移動することがすぐに思い当たるのだが、それはそれで野営とかトイレとか、色々精神面で気を使って疲れそうな気もするので、ここはひとつ俺がニンニンをお姫様抱っこして運ぶことにした。


「ヤベエ殿は優しいのでゴザルな。」

「女の人には優しくありたいと思ってます。」


 精一杯カッコつけた顔をしたつもりだが、ニンニンが身を少し堅くしたので、どこか変な顔になっているだろうなという気がしないでもない。

 ニンニンをお姫様抱っこした事で自分の中に、これまでにない行き場の無い感情が生まれたので、アリエナイの国まで本気で走って発散する事にした。


「あびゃああああああああああっ!!」


 あまりの速さのせいで、かなり怖かったのかニンニンが俺にしっかりと抱きついてきた。

 そのせいで俺の胸にビッグバストブレスト乳房問題の原因がしっかり当たって幸せを感じる。


 あっという間に山を越え、関所らしき壁を瞬時に蹴りでぶち壊して通り過ぎ、アリエナイの国の城下町が目前に迫る。


 さて……どんなところだろうか、アリエナイの国。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 密着して安定感のあるクッション材。 [気になる点] ……ほんとか? よくわからない。 [一言] 抵抗も逃亡も不可能な上位者にメスとして見られてるとかこえーですな。
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