49話 未開の地のボス戦だよ
俺達は31階を進み始めた。
ロウリィの情報を元にすると、やはり、一の位が5までの階は罠が無い事が多いらしいが、30階層以降ではそれもあまり信用するべきではないらしい。
ロウリィが憎々しげな顔をしながら33階で一度罠にかかった事を話してくれた。
罠の内容は『強制転移』
その時は1階に無理矢理戻されたが、もしかするとモンスターハウスのような罠の部屋へ飛ばされる可能性もあるだろうし、壁の中転移させられたら死ぬ可能性が高い。
ただまぁ俺にはスキルがあるので罠がある所がわかるので、きちんと編隊を組んでいれば問題ない。
31階以降の陣形としては、35階までは俺を先頭にして4~5歩程度の距離を下がった所にニンニン、その両翼にアンネとイモート、殿にロウリィとした。
少し進み魔物と接敵する気配を感じる。
罠も無いのでその旨を報告すると、アンネ達が戦ってみるという事で話がつき、モンスターに対して奇襲をかけて戦闘が始まった。
敵は猫とピューマを混ぜたような動物が3匹だった。
かなり動きが早い魔物だったが戦闘の様子を見ていると、アンネの敵ではないような印象。
イモートはかろうじてなんとかイケる、ただ、ニンニンはちょっと苦しいという雰囲気だった為、ロウリィがニンニンのカバー、アンネがイモートのカバーをする形で戦闘を行い、無事殲滅に成功した。
「ふむん。今の戦いを見るに問題は無いじゃろうて。」
ロウリィが、戦闘終了と共に編隊の評価をくだした。
パーティとして合格らしい。
「まぁそれぞれが戦闘の技術を磨けば、より楽に戦えるようになるじゃろうが……技術の口上は時間がかかる。今はそれよりも旦那様の眷属としてのレベルの伸びの方が気になるゆえ、どんどん進んでレベルを上げるのを優先させよう。」
チロリとロウリィがアンネに視線を向けると、コクリと頷いてアンネが言葉を引き継いだ。
「というわけでご主人様。後は見つけ次第ご主人様が殲滅してください。私達が戦うと疲れますし時間がかかりますので。」
「ふぁいと! お嬢様!」
「頑張ってでゴザル! ヤベエちゃん!」
アンネとロウリィの俺の扱いがオカシイが、なんかもう諦めるしかないレベルなので仕方ない。
ただ、イモートとニンニンがいつもとなんか違う……が、まあいいんだ。うん。
その後は30階層は果物が取れるので、時々果物をつまみながら敵を見つけ次第、俺が日本刀を振って殲滅。
つまり、30階層はただの果物狩りへと変わった。
もちろん35階を超えても変わらなかった。
単純にまた『肉の壁』扱いで俺との距離が空いただけで、採れる果物が桃だのマンゴスチンだのが取れるようになって、後ろから「きゃあきゃあ」と果物の味の歓声が響いてくる。
あれ? 俺ご主人様だよね? とか疑問を感じそうになると、そのタイミングでイモートとニンニンが「はい、あ~ん」と色々果物を口に運んではヨシヨシして距離を取るので、疑問は消える。
そうして何時間か過ぎた頃、40階のボス部屋の前に辿りついた。
流石にロウリィが未開の地を前に息を飲んでいる。
「旦那様よ……ここは我に挑戦させて欲しい。」
強い意志を持った言葉で伝えてきたので了承し、中に入った。
中に入ると、牛の鬼、豚の鬼、鳥の鬼が居た。
流石に3対1は……と思ったら、アンネが前に出てロウリィと並ぶ。
ロウリィはその様子を見てニヤリと笑い、戦いの火ぶたが切られた。
イモートとニンニンは、しっかり観戦しながら手は俺の頭を撫でるという器用な事をしていた。
それにしてもロウリィは戦う事が生きがいと言わんばかりに、心底嬉しそうに技を色々繰り出して戦っている。
この3対2の戦いは、うまく拮抗していてバランスが取れていた。
長引きそうだなぁと思った時、イモートが撫でるのをやめて動いた。
「これまでの色々、全部見習ったでガス。
もう見習えるものは無さそうでガスね。」
そう言い放つと渦中に飛び込み、いきなり鳥の鬼に向かってロウリィが多用している『万痛多気』の技を放った。
攻撃をモロにくらった鳥が距離を取って離れると、俺が罠を壊す時にぶつけていた魔法で追撃を加えるイモート。
それは一方的な攻撃だった。
イモートの参戦により、あっという間に拮抗していたバランスは崩れ、アンネ達が勝利した。
このボス戦でのレアドロップは無かったが、きっと出たら牛肉、豚肉、鶏肉だったのだろう。
うん。今度一人で狩りにこよう。
しかし、驚くべきはイモートのスキル『見習い』かもしれない。
このスキルはどうやらそのままの意味で、スキルや技を見て覚え、そして使う事が出来るようになるスキル。
なんかイモートが一番強くなりそう……と、なんとなく感じるのだった。
その後、採りためた果物を食べて一息をつき、さらに深層の41階へ向けて進み始めるのだった。




