47話 欲望が暴れ出す予感がするよ
『ロウリィ可愛い』
悪戯っ子のように酒を取り出して笑ったり、なんかとにかくベタベタして来たり、ボディタッチしてきたりとか、もうキュンキュンムクムクする。
そんな風にロウリィを可愛いと思い始めた俺の視線は、どうやらこれまでと違ったようで、ロウリィと視線が交わった時、何かに気づいた様な表情をした。
そして薄く笑みを浮かべたと思ったら、急に全身を使って抱き着くようにしてなだれかかってきた。
「んふ~~。旦那様ぁ~。」
「なな、な、な。」
ドギマギしながらも俺の首に当たるロウリィの腕の体温を、鼻腔には甘い女の香りが感じ、俺の脳が甘美な感覚に包まれ始める。
「ようやく、我の魅力に気づいたようじゃのう~。にっひっひ。」
「い、いや、え? あ、うん。ロウリィは最初から、か、か、可愛いと思うよ」
「旦那様にそう言われると素直に嬉しいのう……なぁ旦那様よ。我は旦那様の妻なのじゃから好きに触れてくれてもいいんじゃよ? ほれほれぇ」
ロウリィが俺に抱きつき、膝の上で全身を動かす。
腰が膝の上で踊り、俺の中でロウリィに触れたい欲求がどんどんと増しているのが分かる。
それを俺の紳士力という名の理性が押さえつけているが、すでに本能と理性が激しい戦いを繰り広げ始めていた。
「むぅ……旦那様はほんに奥手じゃのう。これならどうじゃ。」
俺の膝の上にかかっているロウリィの重みが少し増すと同時に、肉感的な体つきが目に飛び込んできた。覚醒体のロウリィに変化したのだ。
それはもう谷間や弾力のオンパレード。
はい。これはいけませんね。
もう幼女だからとか抑えていた紳士とかどうでも良くなります。
とりあえず触ろう。揉もう。いや、違うわ。ロウリィはなんか酒とか隠してたしあれだ。
なんか危険物を所持してるみたいだから身体検査しよう。
本人の了承も得てるし、それでは身体検査。イっきまーす!
瞬間、背中に鈍痛。さらに頭の前後に鋭い痛みが走って桃色空間が閉じた。
ダメージを受けたことに焦りながら周囲を確認すると、目の前にはアンネ、後ろにはニンニンとイモートの姿。
体勢から確認するに、アンネは俺の頭を前から水平チョップ。
ニンニンが後頭部に唐竹割チョップ。
そして、なんとイモートがまるでアンネのように蹴ったようだ。流石姉妹!
みんな一様に冷たい笑顔をしていた。
「ご飯時に何をしているんですか? 御主人様」
「しょ、食事はちゃんとしないとダメでゴザル!」
「特技は見習いでガスから。見た技を実践してみただけでガス。いいでガスよね?」
「……はい。」
返事をしつつ、みんなの顔を見る。
アンネの冷たい笑顔。だが、これぞクールビューティと言わざるを得ない。
ニンニンは天然の爛漫さが可愛い。時々無防備にチラリと色々見えるのが魅力的だ。
イモートは柔和ながらも芯のある感じが素敵に見える。柔和。にゅうわ。にゅうにゅう柔らかそうだのう。
「むぅ~~! 夫婦の営みの邪魔をするでないわ! 」
ロウリィが俺の顔を抱き寄せた。
俺の頭、顔がロウリィの胸の谷間に突っ込んだ状態だ。
ロウリィはアレだ。
肉感的だ。
肉感的で、肉感的だ。
これはいけませんね。脱出しようにも脱出したくないです。 むしろもっと奥に進みたくなります。
「あぁん。これこれ旦那様よ。そんなに顔を動かすではない。」
ロウリィがわざと甘い声を出している事は間違いない。だが効果は抜群だ。
もう揉んでしまってもよいだろうか? いいよね? 紳士はもう十分頑張ったよね?
俺の脳内に、夕日の向こうにシルクハットをかぶった紳士がサムズアップをしながら消えていくような幻影が流れた。
うん。お許しが出た。
あやつは消えた。もう揉む。
と思ったら、谷間が急激に遠ざかった。
ああ。神は死んだ。
どうしてこうも神はイタズラなのか。
「あんまり年齢にそぐわない様なふざけた事は言わないでくださいね。ロウリィさん?」
俺をロウリィから引きはがしたアンネが一層空気が冷え込むような口調で言い放つ。
「ほっほーう? だが旦那様の顔を見てみろ?
旦那様が望んでおる事のようじゃぞ?」
アンネが俺の顔を見て、俺もアンネの顔を見る。
やっぱりアンネは綺麗だ。
「まったくご主人様は、また我慢をされていたのですね?
何度も言っていると思いますが、私がその欲の解消につきあいますよ? 従者として当然な事なので、旦那様も欲を発散して効率的に動く為の仕事だと思って私で解消すれば良いのです。」
綺麗なアンネが柔らかな笑みを向けながら、自分を好きにしていいと言っている。
こんなことがあっていいんだろうか? それも仕事の一環、当然のように好きにしろと。 あぁんもう。
アンネと視線が絡み合う。
この綺麗な女を自分の思うようにしていい。
もう元男とかどうでもいいように思えてくる。
触れたい。触りたい。
好きにしたい。
俺の視線がいつもと違うのをアンネも感じたようで、少し眉を動かした後、頬を少し赤らめながら腕を抱きしめるように絡ませてきた。
「やはりオンシは我に殺されたいようじゃのう? 男女よ?」
その様子を見ていたロウリィが怒りを露わにしながら、怒気を含む声を出した。
「あら? 年増の僻みはみっともないですよ?」
ロウリィの目が座った雰囲気になり一触即発の空気が漂う。
流石にここまで険悪な空気が漂うと暴れ出し始めた性欲も少し冷えて考える頭も戻ってくる。
「ごめん! とりあえずなんか……俺が悪い!」
「いーや……違うのじゃよ旦那様よ。これはもう女として譲れん勝負なのじゃ。」
「そうですね……私も自称妻如きに、ご主人様のお世話を取られるのは苦痛ですので。」
「ふっふっふ、それじゃあ旦那様を賭けて戦おうか?」
「いいでしょう。ただ私も全力で挑ませて頂きますからね。イモート! 練乳を!」
「はい、姉さま!」
イモートが練乳ストックをアンネに渡そうとしている。
これはガチだ。
間違いなくケガをする。
「みんな待て!」
たまらずご主人様命令で、3人の動きを止める。
「無粋じゃのう。旦那様よ。」
「そうですよ? ご主人様。景品になっているのですからむしろ誇らしいでしょうに。」
「私は姉さまと一緒に応援するでガスから、一緒にご主人様のお世話するでガス。」
「け、ケンカはダメでござるよ! や、やめないと、みんなの熊肉を食べてしまうでゴザルよ?」
「「「 どうぞどうぞ 」」」
「はうぅ…………おいしい。もぐもぐ。」
場がどんどん混沌と化してきている。
「みんなとりあえず聞いてほしい。
今回のこの不和の原因は間違いなく俺の性欲が原因だ! すまんっ! 諸々あるが、とりあえずゴメンっ!」
みんなの顔を見回すと、それぞれ思う事があるようで聞けば反論は山ほど出てきそうな顔をしている。
「だから俺は今回の責任を取って、争いが起きないようにしようと思う。」
みんな怪訝な顔に変わる。
みんなの注目を集めながら、俺は自分の胸に手の平を向ける。
「こうやってね! 女体化魔法!」
俺を中心に閃光が走った。




