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勇者とバナナと練乳と  作者: フェフオウフコポォ
気に入った国と練乳

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43/58

43話 ようやくマッタケの在り処を知ったよ


 「嘘でしょう!?」


 珍しく焦りを隠さない顔で、アンネがニンニンの短刀を避けながら発した。

 ニンニンがこれまでと格段に違うスピードで襲いかかっているが、余りに変化が激し過ぎてアンネの対応が追いつかない。

 例えるなら、ノーマルエンジンにニトロエンジンと呼ばれるようなナイトラス・オキサイドを添加したような物。見た目が一緒に関わらず、瞬間的に馬力が上がっているのだから認識の誤差が生まれる。


 しかもニンニンは酔っているせいで無遠慮。通常のニンニンであれば『刃が当たったらどうしよう』などを考えて躊躇しているだろうが『そんなもん知るかいな』状態だ。遠慮の欠片も無い攻撃というのは、それだけでも恐ろしい。


 数度の太刀筋を躱し、アンネがたまらずニンニンを蹴って距離を取る。


「えへへへ~~~……今ならなんでもできそうな気がする~おかくご~」


 蹴られたにも関わらずニンニンが薄ら笑いで追撃を始めようとしている。目も座っていて雰囲気が危ない。酔拳の恐ろしさは『諸々の麻痺』にある。先の攻撃の際の遠慮の麻痺もそうだが、ダメージに対する感覚の麻痺もある。これは自分が攻撃する際の反射ダメージすらも麻痺させてしまう。


 流石に危ない気がしてアンネに目をやると『もう十分に分かったから止めろよ。オイ、さっさとしろ!』と言わんばかりの焦りの混じった本気の視線を送って来ている気がした。

 アンネの目が怖すぎたので俺は肝を冷やしながら慌てて動き始める。


「はいはいはいはい! ニンニン一旦しょーりょー!」

「ひゃああ! ひゃははは! あ~。ヤメるでござるよヤベエどの~~」


 羽交い絞めにするとニンニンのわきに俺の腕が当たり、それがどうにもくすぐったいようで暴れはじめるニンニン。

 だが、いくらドーピングされていようが、俺の拘束を振りほどけるほどの力は無い。


「にゃあ~~……なんかこれはコレで気持ちいいでござる~」


 だんだんと大人しくなってきた。

 ほっと一息ついて、酩酊を回復させようと力を緩める。

 瞬間。ニンニンは俺の油断をついて拘束を振りほどいた。


 『あ、やば。』


 と思った。

 だが、ニンニンは振り向いて、抱き着いてきただけだった。


「にゃあ~~ん。こっちの方が気持ちいいでゴザル~~!」


 ニンニンの両腕に力がぎゅっと込められ、それに伴ってグイグイと俺にニンニンの胸が押し当てられる。


「え、あ、ちょ、ニンニンさん??」

「あ~ん。擦れて気持ちいい~……ヤベエ殿もほらぁ、ぎゅってして欲しいでござるよ~。」


 ニンニンが紅潮させて潤んだ瞳で上目使いをしながら催促してくる。

 なんだこのお誘い。こんなのに勝てるワケが無いじゃないか。


「え? あ? こ、こうスか!?」


 言われるがままニンニンの背中に手をまわして、ぎゅっとしてみる。


「あぅ、うぅん……ふあぁあ~……なんだか変な気分になるでゴザルよぉ……」

「へ、変な、き、気分ってどんな……」


 悶えはじめたニンニンに質問しようとしたが、スパァァン! といういい音と共に、尻に鈍痛が走りそれは強制的に止められた。

 鈍痛に驚いて両手に力が入り、ギュッと抱きしめてしまったり、尻への衝撃で思わず股間を瞬間的に押し付けてしまい、ニンニンが「ふぁあ!」と声を出したが不可抗力だ。


 何が起きたのか後ろを振り返ると、しれっとした冷たい笑顔のアンネがコッチを向いている。

 どうやらアンネの仕業のようだ。尻を蹴られたっぽい。


 札束の時にも思ったが、防御がマックスの遥か向こう側の俺に対して『痛い』と思わせる事のできるアンネは一体何者なんだろうか。

 そんなことを思いつつもアンネが怖いので、さっさとニンニンに回復魔法をかけ酩酊状態を回復させると、ニンニンのトロンとしつつも座っていた目に光が戻ってきた。


「……せ、拙者、何をしていたでゴザルっ! って!? ヤベエ殿! 離すでゴザルっ!! 」


 慌てながら俺を力いっぱい押し、すぐさま離れるニンニン。

 押されて後ろにふらついた俺をアンネが支えてくれた。

 そして顔を近づけてきた。


「もっと早く回復魔法かけれましたよね? 気を付けましょうね? ご 主 人 様。」


 冷たい顔で一言そう呟かれた。



 アンネ怖い。



 その後ロウリィがニンニンの強化に興味を引かれたようで、ニンニンに声をかけて手合せを始めた。


「かーーっ! これでレベルが9じゃと!? 信じられんぞ! 旦那様の作る物はほんに異常な物ばかりじゃな!」


 飽きれながらも楽しそうな顔をして笑っている。


「どうじゃお主ら、折角ヤーマノサッチにおるんじゃから、ダイヤ云々だけでなく少し鍛えて見ぬか?

 旦那様と一緒におるとどんな風に強くなるのか興味が涌いたわ。」

「鍛える方法があるでゴザルか!?」


 ニンニンは強くなったといっても、ロウリィとはレベル差がありすぎて手も足も出なかったようで、また悔しそうな顔をしていたが、その一言ですぐに明るくなる。


「うむ。このヤーマノサッチにはとっておきの鍛錬場所があるのじゃよ……『万痛多気の迷宮』というダンジョンがな。」


 『万痛多気の迷宮』この名前に俺はピンと来た。


「ほう『まつたけの迷宮』だと? ……もしかして、そこで松茸とか取れる?」

「おお? よく分かったな旦那様よ。その通りじゃ。そこでマッタケが採れるぞ?」

「よしっ行こう! 今すぐに!」


 朴葉味噌と松茸とか、最高すぎるだろう。

 首を傾げてるアンネ達にもマッタケを食わせてやりたい!


 テンションが上がった俺は食材を求めて、そのダンジョンに潜る事にした。

 が、すぐに移動しようとしたが、アンネとかロウリィが立ちふさがった。


「明日にしましょうね明日。今日はもう遅いし準備もあるから帰りますよ。」


 首根っこを掴まれて行けませんでした。


 ちなみにその日の夕飯は、朴葉味噌とマッタケの楽しさをより良いものにする為、あえて麦飯と大根の漬物で過ごす事にした。贅沢の前の粗食で、更に豪華に感じられることだろう。


 後、アンネとロウリィが夜に睨み合いをしてて怖かったのでご主人様命令でゆっくり休んでもらいました。


 さぁ! 明日はマッタケを取るぞっ!

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