42話 ニンニンを使って魔練乳検証するよ【挿絵あり】
俺は珍しく真剣な顔をしていたようで、周りに集まったみんなが静かに注目している。
この時、俺は、魔練乳の使い方の説明は、実践でその効果を経験させることこそが最も確実かつ、しっかりとした理解につながると考え、どうやって魔練乳を飲ませるかを必死に考えていたのだ。
なにせアンネもロウリィも若干切れている状態だし、俺の信頼はぶっち切りで低くなっている。
マツの惨状を見てしまっているから、みんなの警戒も強くなっているだろうし飲ませるのは至難の業かもしれない。だが――
みんなの顔をグルっと見回す。
美女が敏感娘になってしまった姿を見たいじゃないか。
これは何があっても見たいじゃないか。
――ただ、アンネはいつも不機嫌そうだが、今はなんとなくロウリィとケンカしていたせいか、さらに不機嫌そうな気がするから、アンネに触れるのはやめておこう。
ロウリィもロウリィで、不機嫌な感じが全身から駄々漏れになっているから、こっちも止めておこう。
イモートは目があった瞬間にマツに気を配って介抱を始めていたから、ちょっと難しいだろうか?
なんだろう? 暗に私は忙しいから変なことに構っているヒマはないですよ。とか言われたような気がする。
ちなみにマツタケコは未だ困惑中だ。
ニンニンはマツに手がかからなくなったから、いつもどおりポケっとしている。
ポケっと?
……うん。暇そうだ。
ニンニン! 君に決めた!
アンネ達も自分が飲まないと分かれば実験に協力的にもなるだろう。うん。よし。魔練乳の効果をみんなに知ってもらう為に、ニンニンに魔練乳を飲んで貰おう!
「みんな聞いてほしい……魔練乳の効果についてなんだけど、単純に飲むと、すごく強くなる事が分かった。ただ副作用として、酔う。あと……ちょっとだけ敏感になる。」
『敏感になる』という言葉で、マツを見ている皆が引いた感がした。
だが『強くなる』という言葉には、それなりに興味があったようで、俺が続きを話すのを静かに待っている。
「ただ話を聞いただけだと分からないだろうから……どうだろう。提案なんだが、例えば、ニンニンと誰かが手合わせをする。そして手合せの後にニンニンに魔練乳を飲んでもらって再度手合せする。そうやって、飲む前と飲んだ後の強さの違いを体験してもらう、なんていうのは。」
「な、なな、ななな、なんででゴザルっ!! 嫌でゴザルよっ!」
全員の注目がニンニンに集まる中、ニンニンが慌てて実験台になってたまるかといった雰囲気で、断り始めた。
その時アンネとふと目が合った。
『なるほど。ニンニンが人柱ですね。ご主人様。』
『そう。だってみんなイヤそうなんだもん』
『分かりました。』
と、アイコンタクトでの意思疎通が行われ、すぐにアンネが動いた。
「今回のご主人様の練乳騒動は置いておいて……実は、私はニンニンさんの忍者という職業がどのような戦い方をするのか興味があったんですよ。
もし宜しければですが、忍者の戦い方というものを、手合わせという形でお披露目頂けませんか? 稀有で有能な職業と聞きますし。」
「け、稀有で有能……でござるか?」
ニンニンが少し照れたような顔をした。
それを見たイモートがアンネのやり取りから察したように声を続けた。
「あ、実は私も興味があったでガスよ。
私たちみたいな無能と違って、立派な職業についていた忍者の姿を、一目見てみたいでガス。」
「り、立派でござるか?」
ニンニンの顔が少し笑い始めている。
これはもう放っておいてもアンネとイモートの誘導でいいようになりそうだ。
で、あれば、俺はニンニンが練乳を飲みやすい状態にすればいい。
そう。魔練乳をさらに使いやすい形に変化させるのだ! やって見せよう。
マツに飲ませた時に分かったが魔練乳は粘度が高いから、今の瓶に入った状態じゃあ使いにくい。
元の世界の知識がある俺は、粘度の高い液体の使いやすい形を知っている。
『チューブ型』だ。
なんせ強く握れば勢いよく放出され、色々迸る! うん! やっぱりチューブ型を作らなきゃなっ!
ただアレってプラスチックだよね……原料になりそうな素材とかあるんかいな?
なにかいい材料ないか見回してみると、マツが落とした『魔晶石』が転がっていたので、拾い上げ鑑定をしてみる。
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種:魔晶石の欠片
鉱物資源。燃料など様々な利用が可能な魔晶石の小さな欠片
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燃料?
…………もしかして石油とか石炭みたいに使えるのか?
で、あれば……これはやってみるしかねぇだろう!
トイレットペーパーを作り出した時のように建物の付属品のような形で想像する。
建物……冷蔵庫があるよな……その中には練乳もあって当然だし、冷蔵庫に入っている練乳はやっぱりチューブ型だよな。と、そこまで想像した時、魔練乳と魔晶石が消えた。
そして元の世界で使い慣れた形のものと同じようなチューブ型の魔練乳が5つ完成していた。
完成品に鑑定をかけてみる。
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種:魔練乳(大) チューブタイプ
その漲みなぎる魔力によって練乳を超えし練乳。
大変美味。選ばれし者のみが使う事が出来る甘味料。
食した者に対し、増強の効果をもたらす。
使いやすく保存に優れたチューブタイプ。
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思わずガッツポーズをして皆を見る。
たが、皆の注目はなかった。なぜなら既にニンニンとアンネの手合わせが始まっていたからだ。
俺も手合せに目を向けると、どうにもアンネに軽くあしらわれているニンニンの姿が目に入るだけ。
レベル差があるから当然だとも思うが、なんとなくそれだけじゃなく技量的にも、大人対子供に近いような感じがある。具体的にはアンネの生暖かい気遣いがビンビンに感じられる手合せだった。
ただニンニンが少しムキになっているので、諦めるまで、久しぶりにみんなを鑑定してみる。
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名前:アンネ ナンデス
種族:ヒト(クールビューティ)
職業:女勇者(主:ヤベエ)
レベル:20
HP:299/102(+200)
MP:299/99(+200)
物攻:68(+200)(+75)
物防:55(+200)(+25)
魔攻:63(+200)(+50)
魔防:52(+200)(+25)
速度:35(+200)(+30)
幸運:21(+200)(+25)
装備:誘惑のグリーヴ 戦闘メイド服
スキル:勇者(小) 勇者(超越)の従者 並列思考(中)
ステータス:接待プレイ
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名前:イモート ナンデス
種族:ヒト(カワイイ)
職業:従者(主:ヤベエ)
レベル:15
HP:94/95
MP:99/99
物攻:35(+320)
物防:41(+25)(+3)(+4)
魔攻:51(+320)
魔防:48(+25)(+3)
速度:21(+3)(+4)
幸運:24(+25)
装備:仕込み金剛ナイフ 戦闘メイド服 ニーソックス 革靴
スキル:勇者(超越)の従者 見習い(強) 情報収集(軽)
ステータス:普通
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名前:ロウリィ バッバ
種族:ヤーマンッバ人|(求婚魔)
職業:ヤーマノサッチ国主(主:ヤベエ)
レベル:81
HP:695/645
MP:542/792
物攻:202
物防:246(+15)
魔攻:289
魔防:235(+30)
速度:273
幸運:198
装備:ハダジュヴァン
スキル:鬼頭流格闘術 松竹拳2~10倍
超ヤーマンッバ人 超ヤーマンッバ人2 超ヤーマンッバ人3
覚醒変化(成熟体) M気質(小) 勇者(超越)の従者
魔力効率運用
ステータス:興奮(小)
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名前:ニンニン デゴザ ルー
種族:ヒト(エロカワイイ)
職業:忍者
レベル:9
HP:65/81
MP:55/62
物攻:43(+120)
物防:37(+35)(+20)(+10)
魔攻:34(+120)
魔防:35(+35)(+10)(+10)
速度:54(+20)(+15)
幸運:03(+10)
装備:金剛短刀 忍浴衣 細工具足 強化地下足袋
スキル:情報収集(大) 色仕掛け(中) 単細胞
ステータス:真剣 半泣き
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鑑定して、よりはっきりと理解できる実力差。
接待プレイのアンネとガチなのにあしらわれているニンニン。
やっぱり不遇な子だった。
俺はニンニンの事を思うと、なぜか少し泣きそうな気分になってしまう。
気が付けば身体が勝手に動き、アンネとニンニンの間に飛び込んで手合わせを止めていた。
「しゅーりょーしゅーりょー! 手合わせもうOKOK! OKだから! もうやめたげてーっ!」
アンネがどこか申し訳なさげにすぐに手をとめたので、すぐさまニンニンに振り返る。
「うぅ~~~……」
唸りながら涙目のニンニンが目に入った。
アンネに手も足も出なかったことが相当に悔しかったようだ。
地団太でも踏みだしそうだが、堪えている。
俺はニンニンの肩に手を置いて声をかける
「ニンニン! 強くなってもっかい頑張ってみよ!」
「うぅ~~~……」
ヤバい。きっとこの子泣く。
現にちょっと地団太を踏みはじめた。
「大丈夫! 大丈夫だから!
ニンニンもこれ飲んだら強くなれるからっ! はいあーんして!」
励ましながら、チューブの魔練乳のキャップを取ってニンニンの前に差し出す。
すると悔しさで頭がいっぱいで、泣かないことに意識がいっぱいに見えるニンニン。
「……う゛んっ」
とりあえず頷いて口を開けた。
どうやら悔しさが勝って、魔練乳の事は頭から抜け落ちているようだ。
「よしよし。ちゃんと強くなろうね。」
そう言葉をかけて開けた口目がけてチューブをぎゅっと握った。
その瞬間、ニンニンが正気に戻った。
そう、魔練乳を口にすれば、マツのようになるのだ。
危機感を感じたニンニンが顔をそむけた。だが、既に練乳は放出されている。
結果、俺の握ったチューブから放たれた練乳は勢いよく飛んでニンニンの顔にぶっかかった。
だが、ぶっかけられた練乳は、なんとかニンニンの口に入っていた。
少しでも口に入れば、もうこちらのもの。
「ふふ。
……んふふふ……んふっ……おいしい。
ネットリ……濃厚で絡みついておいしぃ~。」
あっという間に酔っぱらい始めたニンニンは、自らチューブを掴み、その先端を舌でねぶってて味わい始めた。そして恍惚とした表情を浮かべている。
魔練乳の効果が発動している事を悟りニンニンを鑑定してみる。
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名前:ニンニン デゴザ ルー
種族:ヒト(エロカワイイ)
職業:忍者
レベル:9
HP:65/81
MP:55/62
物攻:43(+100)(+120)
物防:37(+100)(+35)(+20)(+10)
魔攻:34(+100)(+120)
魔防:35(+100)(+35)(+10)(+10)
速度:54(+100)(+20)(+15)
幸運:03(+10)
装備:短刀 忍浴衣 細工具足 強化地下足袋
スキル:情報収集(大) 色仕掛け(中) 単細胞 (+敏感(中))
ステータス:酩酊初期
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とりあえず、マツのように回復魔法で酩酊状態を回復させようと手を伸ばす。
「ふへっ、ふへへ。」
だが回復をさせる間もなくニンニンは動き出していた。
「負ける気がしないのら~~」
笑いながらアンネに切りかかっていた。
別にニンニンの胸元の練乳に目を奪われていたワケではない。
敏感をどうやって確認しようか悩んでいたワケでもない。本当だ。
チャレンジ.B 様
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