38話 ヤーマノサッチの中心に入るよ
4人が、くったりしているので、とりあえず全員を横一列に並べる。
そしていつもの如く
「どうしたもんか」
と呟きながら悩む俺。
真剣に悩みつつ4人を観察していると、アンネの胸が不自然にポヨンポヨンとし、それに合わせてアンネが「……ん……ん」とか声を漏らしている。
これはイカン。大変だ。
アンネの胸に住むすらりんがご乱心だ。
ご乱心になる理由など一つしかない。
「すらりん、すらりん。バナナ欲しいの?」
「……ンンっ!」
アンネの胸がブルンブルン反応した。
その証拠にアンネの声がした。
こらこらすらりん。イカンじゃないか。
アンネの胸で暴れると、アンネが声を漏らすだろう?
「すらりんすらりん。そんなことをしている子にはバナナ上げないぞう。」
「ン……ンーっ!」
アンネの胸が細かくブルブルブルブルブルと反応した。
すらりんが、バナナをもらえない恐怖で震えたのだろう。
こらこらすらりん。イカンじゃないか。
「……ンンっ!」
こらこらすらりん。イカンじゃないか。
「ン……ンーっ!」
こらこらすらりん。
「んんーっ!」
イイじゃないか
「んっ!」
こらすら
「んーっ!」
すらりんと問答を繰り返し過ぎたのか、アンネが目を覚まして怒られた。どうやらすらりんの刺激で目覚める条件を達したらしい。正直スマンかった。
ちゃんとすらりんにバナナを上げて、また「んんっ」というアンネの声を聞いた後、清浄魔法をかけた。
アンネが復活したので、俺が何かしらをして皆を起こす事が色々難しくなった気がしたので、ただ起きるのを待つのも面白くない。なので全員に浮遊魔法をかけてヤーマノサッチの国の中心へ向かう事にした。
ヤーマノサッチの国の中心にはまだ行った事が無いが、ロウリィが飛んできた方向に一直線に向かえば間違いなく着くだろう。
皆に浮遊魔法をかけているので走りだしと停止にさえ気をつければ、俺の得意な速度で移動する事も問題ない。
走り出すとあっという間に城や街なみが見えてきた。その風景に盛大に吹き出しつつも感動を覚えた。
とりあえず初めに出た俺のセリフは「江戸時代か!」だった。
アリエヘンやアリエナイの街は、石造りやレンガ等を利用した作りが中心で、何となく中世ヨーロッパを思い起こさせるような雰囲気があったのだが、ヤーマノサッチは平屋の木造建築に瓦と漆喰の城、農業は稲作。明らかにアジアンテイストの和風よりだ。
ちょっと離れただけでなんでこんなに文化の差があるんだ!
「ここまで違うとは……驚きですね。
ヤーマノサッチの国は縄張り意識が強く特定の人間と最低限の付き合いしかしないと聞きましたが……まさか独自の文化を持っているとは。」
アンネが感心したように頷いている。
なにはともあれ、俺は日本の原風景のような景観だけでヤーマノサッチの国をいたく気に入ってしまった。
ロウリィは國主という事だったし、とりあえず城に向かえば何とかなるだろうと思い、瓦と白の漆喰で目立っている城に向かう事にした。
流石に城下町を浮いていくのもなんだな。という事で、徒歩に切り替える。
アンネにイモートを担いでもらい、ニンニンとロウリィは俺が肩に担ぐ。
「んじゃ、行こうか。」
「ええ、かしこまりましたご主人様。ただひとつ確認をば。」
「え?……な…なに?」
肩に担ぐついでにニンニンの豊満な感じを色々楽しむつもりがバレたのだろうか?
アンネが確認とか言いだすとなんか怖い。
「ニンニンさんはミニスカートですので、その担ぎ方だと街を歩くだけで、街の男性陣に大サービスになる……という事を理解した上で肩に担がれておられます?」
「おわぁー!」
慌ててニンニンを下ろそうとしたが、あまりに慌てたせいで、もう片方に担いでいたロウリィを、どすんと落としてしまった。
しまった! 大丈夫か!? とロウリィの様子を見ると落とされたハズなのに、にやけた顔をしていた。
『コレはなんかもう大丈夫だ……』と諦めてニンニンをゆっくり下ろして持ち方を考える。
ミニスカートの人のパンツを見せないようにして運ぶ時って、どうやったらいいんだ?
担ぐ?
アウト。
おんぶ?
アウト。
お姫様だっこ?
若干セウト。セウトだがロウリィと2人はムリ。
う~ん……
「ご安心くださいご主人様。私に考えがあります。
ロウリィにだけ浮遊術をおかけください。私がロウリィにつないだ紐を持って引っ張れば運ぶことが出来ます。そうすればご主人様はニンニンさんが恥をかかないように運ぶことができますので、宜しくお願いします。」
流石アンネだ。頼りになる。
アンネに任せておけば大丈夫だ。
アンネの指示通りに動く。
なんせ今の俺は城下町や城の作りに興味津々だ。
一刻も早く城下町や城を見たい。なので、すべてアンネに任せる。
城下町で色々なヤーマンッバ人とすれ違ったが、戦闘民族と言われているにも関わらず遠巻きに見てくる人が多い気がした。
無駄に喧嘩を売られてトラブルにならないし、それだけで大分有難い。
文化は大きく違うが、ヤーマンッバ人の着ている服はアリエヘンとかとそう変わらないように思える。
だが時々『もんぺ』のような服を着ている人もいた。木綿や麻もあるんだろうな。
キョロキョロと街を見ていれば、商売をやっているような店構えもあったりと、なんだかウキウキワクワクしてしまい、自然と顔がにこやかになっているのを感じる。
観光がてら移動すると、いつの間にやら城の前まで来ていた。
さぁどうしようかと思い、國主のロウリィの様子を見ようと振り返った時。城下町の人間に遠巻きに眺められていた理由が分かった。
「……アンネ?」
「はい?」
ニッコリと微笑んだアンネの持っているロープ。
そのロープの先には、未だ意識の戻っていない國主の両腕が繋がっていて、その國主は、地面に引き摺る程の位置でしか浮いていなかったのだ。
どう見ても國主が俺達に痛い目を見せられた上で気を失い、見せしめに引きずられているようにしか見えない。
最強の國主に対してこんな扱いをしながら、変にニコニコしながら城に進む一向。
そりゃあ遠巻きにしか見れんわ。
俺が思わず頭を抱えると、しれっとした顔のアンネが「なにか?」とだけ言った。
だが何も言葉と違えるような事はしていない。
流石の俺も、これを見てアンネはロウリィの事が嫌いだわ。と気が付いたのだった。
ロウリィの繋がれているロープを俺が預り、ちゃんと浮遊させて城の者に尋ねてみると、マツタケコが伝えてくれていたせいかスムーズに國主の主として迎え入れられた。
こうした一連の流れから、俺は『國主をゴミ扱いするほどの強者』と恐れを抱かれながら、ヤーマノサッチ国の主として入城する事になった。
さぁ、ダイヤとか米とか施設建造とかで儲けるぞっ!




