36話 見せつけバナナするよ
「なんでもバナナで終わらせようとしないっ!」
「はい! ごめんなさいっ!」
バナナを取り出そうとしたら、アンネにスパーンとツッコミを入れられた。
ロウリィもアンネの行動には賛成だったようで、うんうんと頷いている。さっきまで反目し合っていた癖に。
「いいですか? まずはきちんと何が問題なのかを認識してください。
今回の場合『なぜ旦那様なのか』です! ちゃんと説明してください!」
「いや……それはなんかロウリィが勝手に言ってるだけで、俺が言えって命令したたわけじゃないし……」
「子作りとも言っていましたが?」
「それもロウリィが勝手に言ってるだけ!」
微妙にしぶしぶその言葉を飲み込もうとするアンネに対して、ロウリィが余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》といった表情で言った。
「今はまだ…な。」
ロウリィの言葉を聞いたアンネのこめかみ当たりから、ビキビキビキ……という擬音が聞こえてくる気がした。
「なんじゃ? 旦那様がどの女を好こうが自由じゃろ? 我は旦那様に好かれる自信があるからのう。みっともなく焦ったりはせん。そう。ヌシのように我に旦那様を取られると思って怒るなどな。なんとも狭量な女よのぉ。」
「いやいや、それは無いでしょ。だってアンネは元男だし。」
「なんじゃと!?」
ロウリィの言葉に瞬間的に俺が反応してしまった。
アンネはピクリとだけ片眉を上げ、ロウリィは心底驚いたような表情になった。
「本当かえ? どうにも……むう? いや、やっぱり女にしか見えんが?」
「それは……俺の女体化魔法の威力と言うか……」
「あぁ、なんじゃ旦那様の仕業かえ。それなら納得と言えば納得じゃが。」
アンネを改めて隅々まで探るように見るロウリィ。
続いてイモートとニンニンに視線を向け『もしや?』みたいな雰囲気で二人を指さして、アンネを見る。
アンネはどこか羽虫でも見るように嫌そうにしながらもコクリと頷いてみせた。
『う~ん?』と、ロウリィは首を捻る。
そして、少し考えて俺に声をかけた。
「心まで女にしてしまうのかえ?」
「いやいやいや。流石にそれは無いと思う。」
俺は思わず笑いながら返す。
だってみんな俺が無理矢理理由つけて女体化させたんだもの。
隙あらば男に戻りたいはずだ。
もちろん自分から言いだすまで戻す気ないけど。
主に俺の為に。うふふふ。
「……ふぅん。」
意味ありげに3人を見るロウリィ。
「で、あれば! 正しく旦那様の妻となれるのは我だけのようじゃなぁ! アァッハッハッハ!」
まるで勝ち誇ったかのように、3人に投げつけるようにして声を放つ。
アンネは何となく悔しそうに見えるし、イモートは何を考えているかわからない様な顔。ニンニンはやっぱりポケっとしていた。
「……ロウリィは65才だけどね」
なんとなく面白くなく、俺はつい呟いてしまった。
アンネ達は『へっ?』と言う顔をした後、ロウリィをマジマジと見廻す。
ロウリィは黙りこみ、なにやら下唇を噛んで俺を睨んでいるようにも見えた。
アンネはそんなロウリィを一通り見て薄く笑う。
「これはこれは。たいっへん失礼いたしました。
年長者とは思っておりませんでしたので……まさかそんなにも 年! 長! 者! だったとは。
まぁ? そのお年でしたら、それはもうご主人様のような若いツバメが欲しくて仕方ないでしょうねェ?
ただ年増……失礼。お年に見合った程度に性欲を押さえる理性が欲しいですけど。
いかんせんお年を召し過ぎかと思いますので、ツバメはツバメでも、もう少し見合った年代の方を捕まえる方が良いのではないでは?
年! 相! 応! に!」
勝ち誇ったように言葉を投げつけた。
今度はロウリィのこめかみ当たりからビキビキビキという擬音が聞こえてきそうだ。
二人は睨み合う。
なぜかその間に火花が散ったような錯覚を覚える。
ダメだ。
もう俺にはどうしていいかわからない。
ご主人様命令で仲良くさせてもきっと軋轢を生む。
自分から仲良くさせないとだめだ!
ええいっ!
こうなったらやっぱりバナナを食わせよう!!
俺はイモートとニンニンを手招きする。
二人は『?』と、疑問符が頭に浮かんでいるような表情で近づいてきた。
俺はバナナを手に取り魔力を込めると、途端に二人の目が潤むのを感じた。
またさっきまで睨み合いをしていたアンネとロウリィもコッチを見ているような気配を感じ取る。
「さぁ! ケンカしているヤツらは放っておいてバナナタイムとしゃれこもうじゃないか!」
俺はたまにはイモートからバナナを食べさせる事にした。
その場で胡坐をかいて座り、イモートにだけ手招きする。
ニンニンが『自分は!?』という風に自身を指さしているが、手のひらを向けて『待て』のジェスチャーを返す。
イモートは体の疼きが我慢できないのか、内股になりながら近づいてきた。
目の前にやってきたイモートに対して、自分の腿をパンパンと叩き、腿に腰掛けて座るよう促すと、イモートはもじもじしながらも腿の上に腰を下ろす。
左手でバナナを持ちながら、右手で優しくイモートを抱き抱える。
俺の手が腰に回った瞬間ヒクンとイモートが反応したが、その辺は我慢してもらおう。
これはケンカしている二人に対してバナナを美味しそうに食べているのを見せつけるお仕置きなのだ。だから2人からバナナを食べているイモートの様子がしっかり分からないと駄目なのだ。
「イモート、さぁ。舌を出して。」
ご主人様命令として命じていないにも関わらず、恥ずかしそうにしながらも舌を少しずつ出し始めるイモート。
俺のバナナを味わえるかもしれない可能性の前に、少しの恥ずかしさなど障害にもならないのだ。
俺はまじまじとその様子を見ていて『なんて可愛いんだ』と感動を覚える。
もちろん劣情を覚えないよう気をつけている。
ゆっくりと愛おしむように妹の舌にそっと俺のバナナを這わせた。
するとイモートの舌がチロチロと動き、バナナの感触。ニオイ。甘味をその舌の先端で味わい始めた。
やはり多少の嗜虐心が疼き、俺はバナナを舌から遠ざける。
すると、涎を垂らしながら切なく悲しそうな顔をするイモート。
「おーっとイモート。まだ咥えちゃあダメだぞ?
大丈夫。ちゃんと後で全部食べさせてあげるから。
今はゆぅっくり舌で転がして楽しむんだ。」
相当嬉しかったのかパァっと顔が明るくしながらコクコクと頷くイモート。
俺はその笑顔の魅力に負けて、溢れる涎で濡れそぼったイモートの口に少しずつバナナを差し込んだ。
「んんんっ……くぅ…ぅうっん……っくぅううぅ」
次第に熱を帯び始めたように俺のバナナにむしゃぶりつき始めるイモート。
「あぁ…ああ! むぅ…う! ちゅぅ、むぁ……」
ニンニンはもちろん、アンネとロウリィも熱い視線を俺とイモートに送っている。
「よしよし、全部しっかり味わっていいぞ。」
俺の言葉に、すぐにむしゃぶりつくように口を動かし始めた。
「ごぉ主…人……! 様…のぉ、バァ…ナ……ァア、ぉお…おっいぃ…しぃっい!」
イモートは体内に俺の白い実を全てを飲みこむと絶頂を迎えた。
ビクンビクンと大きく震えるイモートを抱きかかえ、そっと頭を撫でる。
やがて大きな痙攣は収まり、小さく痙攣するだけになったイモート。
そっと隣に寝かせ、そして、ニンニンに向けて『来い』のジェスチャーをする。
ニンニンはまるで何かに意識が乗っ取られたように、ふらふらとおぼつかない足元で俺の下へと歩き始めた。
アンネとロウリィも睨み合うのもやめて、赤く頬を紅潮させながら俺の持つ2本目のバナナの行く末を見守っているのだった。




