30話 國主にバナナをくわせるよ【挿絵あり】
「ふーっはっはっはっは! よう来たのう化け物! おんしのような者が来るのを待ちわびておったぞ!」
空から甲高い声と笑い声が響いた。
空から? と思い目を向ければ、空中で静止している人間らしき姿。
よくよく見てみれば、長い銀髪を風になびかせ、肌襦袢のような着物1枚しか着ていないのか、生足や胸元を覗かせた女がいた。
「……なんだあの幼女?」
俺の呟きを拾ったマツが、手の甲でビシリとツッコミを入れていた。
「……あれが國主様。」
「うそっ! あんなんただのちんちくりんやん!」
思わず口から本音が漏れてしまう。
だが、ちんちくりんは俺に言われた事など気にする様子もなく、ただ、ふぅ と小さく息をついた。
「ヤレヤレ……我の見た目に惑わされておるようじゃあ、まだまだよの。
これでは大した期待もできんか。噂は所詮噂という事かの……まぁそれでもわざわざここまできてやったのじゃから、せいぜい暇つぶし程度にはなる事を祈っておるぞ。」
ちんちくりんが俺目がけて急降下し殴りかかってきた。
殴りかかってくる細い手。
あまりに小さいお手々《てて》だ。
こんなんで殴りでもしたら手首とか色々痛めてしまう。それはいけない。幼女にそんな思いをさせたら泣いてしまうだろう!
当たらないギリギリ。紙一重で幼女の空中からの急降下爆撃パンチを避ける。
幼女のパンチを避けた途端に、まるで俺がパンチを紙一重で避ける事を見越していたかのように、急降下の反動を万全に活かした足が迫ってくる。
迫る細い脚。
あまりに小さい足の裏だ。
幼女の太ももも見えるのだが、所詮幼女。
アンネの脚線美を目の当たりにしたことのある俺にとって、幼女の太ももなど少ししか目を引かないので、大した問題など無い。
しかし、細い太ももに足首だ。
こんな細い脚で俺を蹴ったら、やっぱりその攻撃で身体痛めるかもしれん。
またも紙一重で避ける俺。
急降下の反動を活かした蹴りを躱すと、俺の頭上を超える蹴りあげを見せていた幼女が体をくるりと回転させ、逆の足での浴びせ蹴りでかかとが迫る。
やっぱり小さい足の裏だ。一歩引いてギロチンのように落ちてきた足を避ける。
そのままの体勢で地に足を下ろした幼女が、ギロチンにしていた足を軸にして回転し、猛回転での足払いが続く。
しかし動きが早い。
急降下からこれまでの動きは、マツタケコが瞬きをするかしないか程度の時間しか経っていないはず。
しかもなんだかんだ小さいながらも次々と絶え間なく連撃を繰り出してくるちんちくりんの技の切れの良さは目を引く。
「なんじゃ、やりおるのう! だが避けるだけしか能が無いではないか。」
ニヤニヤとしながら言う幼女。
正直幼女の相手などしたことが無いから困ってしまい、それが顔に出る。
「ふんっ! いつまで避けきれるかのう。そろそろ本気でゆくぞ。」
俺の顔にでた言葉『う~ん、子供の相手ってなぁ……』を読み取ったのか幼女が機嫌悪そうな顔になっていた。
「万痛打撃っ!!」
ちんちくりんの拳が更に速度を上げた。
まるで百にも千にも見える速さで繰り出され、同時に迫ってくる。
なんて速さだ。
正直人間の技じゃない。そう確信した。
もちろん全部綺麗に避けるわけだが。
まさか全部を躱されると思っていなかったらしいちんちくりんが目を見開いて攻撃を止めた。
「なかなかやりおるな……おんし、名はなんという?」
「あ、ども。ヤベエです。」
とりあえずヘコっと頭を下げる。
いつの間にか、なんとなく偉そうな幼女の雰囲気につられていた。
「うむ……気に入ったぞヤベエ! おんしには手加減無しじゃ!
本気の万痛打撃を見せてやろうっ!!」
ギラリと輝く目、そして次の瞬間に血を蹴る幼女。
迫る幼女と同時に、まるで千にも万にも見える拳と足が迫る。
まるで攻撃の壁が迫ってくるようだ
まぁ、やっぱり避けるが。
全部1撃1撃を、きっちりと。
通り過ぎた幼女がぎぎぎ、と振り向いた。
俺はポリポリと頭を掻く。
それを見た幼女がダンダンと足を踏み鳴らした。地団太だ。
「おぬしなぜ打ってこん! バカにしておるのかっ!?」
むすー! と言った雰囲気で鼻息の荒い幼女。
「いや、だって俺、別に幼女を嬲って楽しむ趣味はないし……」
「ほう? ならば、これで……どうじゃっ!」
「ああっ! 國主様がまさか、覚醒変化をっ!?」
マツが説明セリフを吐き捨てた。
國主もそれを律儀に聞き終えてから、舞うように意味ありげに両手を動かす。
するとちんちくりんが変化し始めた。
この人達変身好きね。
そんな事を思っていると幼女の姿が、もりもり変化してゆく。
身長が伸び、スッカスカにはだけていた肌襦袢がはちきれんばかりのムチムチプリンプリンへ、伸びていた細い脚の肉付きも良くなってゆく。
「フゥ……この姿になるのも久しぶりじゃのう……ほれ。どうじゃ? この姿なれば、もう遠慮する必要もあるまいて?」
妖艶に指を誘うように動かす。
『ほれ、かかってこい』と元ちんちくりんが手招きしているのだ。
前かがみになっているから、谷間がボンボボボボーンだ。これは――
「もっと遠慮するわっ!」
攻撃したついでにどっかに触れてしまったりしたら痴漢になってしまうっ! 捕まるだろうが!
それに万が一、色々なところに触ってしまいでもしたら、マツタケコの心拍数測定で結構色々になっている俺はもう、色々止まらんかもしれんっ!
これは無理だ!
とてもじゃないが触れられない! 接触は避けるべきだ!
「フッフッフ、これでもまだ来ぬと言うのか……であれば、こちらから行くぞっ!
くらえっ! 真・万痛打撃ぇっ!」
これまで以上の速度で迫りくる手足。これは危険だ。
何が危険って、激しく動いて迫ってきている!
つまり、おおおお、おっぱいが間近でかなり揺れている!
ムッチムチな、ななな、生足がたくさん迫ってくるっ! おおおお、おしりも見えそうだっ!
あああああっ! なんの拷問なんだ一体!
だめだだめだ、もうだめだ! これ以上好きにさせてはいけない!
どうすればいいっ!?
一瞬だけ考え、俺はフっと冷静になった。
俺が困った時に頼る物は決まっていたからだ。
そうだ。バナナを食わせよう。
これまでに無い信頼感。
俺のバナナに対する信頼感は、すでに絶対的なモノになっていたのだ。
こいつに俺のバナナを味わわせてやる。
そう思った瞬間、元ちんちくりん……現、色々立派な國主は止まり、慌てて距離を取って空中に浮かんだ。
そして片眉を上げながら口を開いた。
「ほう……ようやくヤル気になりおったか。」
「ああ……俺のとっておきをお前に食らわせてやる。もう決めたからな。覚悟しろよ。」
「ふっふっふ。それはそれは楽しみじゃのう……じゃがそう言われたとて、タダでは食らわんぞ?」
「諦めろ。俺が食らわせると言ったら絶対に食らわせる。しっかりと味わえよ。」
「これは大した自信じゃのう。」
距離を取った國主を一瞥し、俺はバナナを取り出して魔力を込め始める。
その様子を見ていたマツが、バナナを見て思い出したのか「あ。」と一言声を上げ、顔を赤くした。
魔力を籠め終わったバナナの皮を剥いていく。
すると、マツが羨ましそうな目線をバナナ、そしてこれから味わう國主と交互に向け、指を噛んだ。
だが、焦ったのは國主だ。
まさか離れていても美味そうと感じてしまうバナナが出てくるなど微塵も考えていなかったのだろう、心底動揺したような雰囲気になっている。
「な、なんじゃっ!? そんなモノで何をしようと言うのじゃっ!」
そう焦ったように言った國主の前に、俺は本気で移動した。
一瞬で間を詰められた國主。
「な、な、な……」
唖然とした表情になった國主を、俺の移動によって発生したであろう風が遅れて襲った。
あまりの速度にあっけにとられ口を大きく開けている國主。
俺の前で口を開けているだなんて、誘っているにも等しい。
俺は、一度小さく笑い、そしてその口に俺のバナナを容赦なく突っ込んだ。
「なああっにぃ…っ! をおぉぉ…!? ぉオおっ!!」
國主は抵抗を試みる。
だが、俺のバナナには逆らえない。
もがきながら発している声に艶が発し、それに呼応するように、体から力が抜け始めていた。
余りの脱力に空中に浮かんでいる事が辛そうになる國主を掴んで抱え落ちないように抱きかかえる。
もちろん俺のバナナを國主の口に突っ込んだままだ。
國主は俺に突っ込まれたバナナから官能を感じ始めたたのか、無心にしゃぶり味わい始めた。何度もバナナを味わわせてきた俺は、その動きから堕ちた事を察し、すぐさま國主の口に突っ込んでいたバナナを引き抜く。
「ん……んああぁあぁああっ!」
遠ざかるバナナを離すまいと抗う國主。
だが俺に力で勝つ事はできず、抑え込まれてしまう。
「な? 絶対食らわせただろ?」
「む、むぅぅ……」
バナナをちらつかせながら、半笑で問う。
「ほら。続きを楽しみたいだろう? 言ってみろよ。自分の口でさぁ。」
「そ…そん…な、ものぉ……」
國主は必死に『言うもんか』と堪えている。だが、その頬の紅潮が、一度覚えてしまった快楽が身体の中で暴れていることを示していた。その快楽が、なんとか口を開かせようとしているのが見て取れる。
俺は口に触れるか触れないかの距離で、バナナをちらつかせる。
必死に口を閉じようと涎を垂らしている國主の口まわりをバナナでひと撫ですると、國主はその香りに喘ぎ、口が自然とバナナを捉えようとするが、そうはさせず力で押さえつける。
國主がなんとか現状を打開しようと試みてはいるが、もうどうにもならない。
俺はこれまで俺のバナナを味わってきた女を見てきた。
その様子から『コイツはもう言いなりだ』と確信する。
そう確信した俺は國主を抱きしめたまま地上に降り、その場で國主を解放した。
「え……?」
國主は戸惑った。
拘束されたまま無理矢理バナナをその口に突っ込まれたのなら言い訳もできただろう。
だが、解放されてしまったのだ。
俺は敢えて國主から離れて距離を取り、どっかりと見下したように胡坐をかいて座る。
「ほらよぉ、続きを楽しみたいってんなら……ここまで来て俺にお願いしてみろよ。」
さっきまで口に入っていたであろう事を伺わせる、國主の唾液のついたバナナを見せつけるように振る。そしてただ、その場で待つ俺。
國主は怒りなのか、それとも我慢の限界なのか、身悶え震えている。
だが、一歩。また一歩と、俺に確実に近づいていた。
そして、俺の近くまで辿りつき、俺の前で四つん這いになった。
「早……っ! く…っ」
悔しそうに唇を噛んでいるが、我慢できないという感情が言葉に出ていた。
だが、意地悪く焦らす。
「なんだって?」
「早、くっ、わ、私……にいぃっ!
バア…ッナアッナア…を…っくう、だあさぁぁあいぃ……」
堪えきれず懇願する國主。
俺はそっと國主を抱き寄せ。
その涎の流れる口に優しくバナナをあて、そして突っ込んだ。
「ああうっ! あ……ぁっ!あ………あうあ……あぁ…ぁあ…ぁぁっ!」
國主はゆっくりと味わう。じっくりと。
俺の腕の中で俺のバナナを楽しんだのだ。
最後には全てを味わい尽くそうと、舐めつくすようにしゃぶり、ゴクリとその白い実をすべて飲み干していた。
「最…!っ高……」
薄く微笑みながら國主は快感に身を震わせ、迫りくる享楽の渦に飲み込まれていくのだった。
【イラスト】
朱崎紫童様
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