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勇者とバナナと練乳と  作者: フェフオウフコポォ
旅の始まりとバナナ

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20/58

20話 恐る恐る帰ってみるよ【挿絵あり】


「ブラボーっ!! ……おおっ…おおっ! ブラボーー!!!」


 俺は買ってきた弁当を落としたのも気にせず、感動のまま両手で拍手をしまくる。もちろん二度目に放ったブラボーの声は、本場の“Bravo”さながらの発声だ。


 なにせ部屋に帰った俺の目に飛び込んだのが、ミニスカ浴衣の黒ストッキングくノ一に、ヴィクトリア調のメイド二人の出迎えだったのだから、普通の男ならば心からの賞賛を送ってしまうものだろう。


 ちゃんとみんな俺の作った服を着てくれていたのだ。なんという眼福か。

 感動のあまり涙すら流しそうな俺の前に、アンネがメイドらしく、しずしずとやってきた。


挿絵(By みてみん)


「おかえりなさいませ。ご主人様。」


 それはそれは冷たい目だった。


 なにこの人。

 表情が読めない。

 怒ってるのか怒ってないのか分からない。

 いや冷たいのは分かる。微妙すぎる。

 ただ、なんでしょう。とても似合ってます。


「え~っと……その、怒ってます?」


 アンネは俺に分かりやすいようにニッゴリ、そうニッ『ゴ』リと、どこかトゲがあるように微笑んでみせた。


「いいえ。全然ですよご主人様。

 そう。全員が裸にひんむかれて放置されてましたが、私自身も体に違和感がありませんし、特に誰かが悪戯か何かされた感じもありませんでした、裸を前にしてご主人様が何かにいそしんだ形跡もありませんでした。」


 なにこの圧迫感。


「それに、なぜか置かれていた新しい装備は前よりも格段に良いものになっていますもの。

 どこに怒る要因があると思われましたか? それともなんですか? ご主人様は何か怒られるような事に心当たりがあるんですか? 下着を作る時にでも何かしましたか?」


 ひぃ。

 何この人コワイ。


 アンネは震える俺に一瞥をくれた。

 だがすぐに小さく息をつき、一転して優しい声色をつくって声をかけてきた。


「まったく……貴方は私のご主人様なのですから、もっとしっかりしてください。

 本当に大丈夫ですよ。誰も別に怒っていませんから。むしろ良い装備をありがとうございます。」


 そう言ってにっこりと微笑んで頭を下げた。


「……え。誰?」


 本音だった。

 いや、心の声だった。


「アンネですよ。」

「いや……え? 『俺』とか……『ッス』とかはどうしたの?」


「新しいスキル『並列思考』のおかげでしょうね。私の中で主観的な考えと客観的な考えの二通りの思考を同時に進める事ができるようになりました。

 ですので、その二面から検討し、じっくり考えた結果、ご主人様と一緒にいるメリットがとても大きいので、ご主人様が好意を持ちそうな話し方に変えてみたのです。」


 理路整然と、本来隠すべき言い難い事をズバズバと口にするアンネ。

 この辺りは元男の思考の影響が大きいのだろう、言わずとも察しろよりも、さっさと言ってしまえという短絡な感じが残っていた。

 ただ『察してちゃん』になられても対応できる自信がないので、正直バッサバッサ切り捨てるくらいの勢いで言ってもらえる方が助かる。


「……もし元の喋り方がよろしければ戻すッスけど?」


 俺の沈黙を見て、首を傾げながらアンネが言った。

 俺の好みを探ってくれているようだ。


「……えっと。じゃあ一人称は『私』で『ス』は使ってみて。」

「わかったッス。」


 ごく自然に言葉使いが変わった。

 普通、自分の癖なんかを瞬時に切り替えるなんて事は出来ない。

 つまり、今のアンネはスキルのせいか、超絶賢くなっているっぽい。

 うん! 冷たくて賢い美女!

 これは、参謀ポジション爆誕の予感っ!


 って……俺は一体何と戦うつもりなんだ!? 参謀とか、明らかに悪の組織っぽいじゃないか!


 首を振って雑念を飛ばし、改めてアンネを見る。


 ロングヘアーの金髪。

 細見でスラリとした身体なのに胸はスライムでバインバイン。

 そして女勇者で一般人と比べるまでもなく強く、並列思考で頭も良い。


 アンネは俺の視線に気づいて、再度首を逆に傾げる。


「なんスか? もしかして武器も見たいッスか?」


 返事を返さない内に、アンネが自分のロングスカートをつまんで、スルスルと少しずつ持ち上げていく。嫌が応にも俺の視界にアンネの足に付けられた華麗な装飾のガーターベルトが飛び込んでくる。


「あああああ! ムラムラ頑張って解消してきたのにヤメテぇ-っ!」


 俺がたまらず本音を漏らすと、アンネは少しだけ片方の口角を上げた後、スカートを下ろした。


 なんだろう。なんでニヤってしたんだろう。

 もう戦って勝てる気がしない。

 いいんだ別に。

 だって、俺。手の平で転がされるのも好きだから。


 とりあえず勝てそうにないアンネの後ろで控えている二人にも目を向ける。


 ニンニンはミニスカ浴衣での足の露出っぷりに、どこか気恥ずかしそうにしているが、黒髪のポニーテールに黒浴衣のミニスカート。そして黒ストッキング……もとい、足用の専用帷子。めちゃくちゃ似合っている。

 持ち前の可愛さが、対極にあるはずの衣装全般のセクシーさと絶妙にマッチングし、背反二律の妙を演出している。


 簡単に言えば、エロ可愛い。

 うん。素晴らしい。


 イモートを見れば、こちらはまさしくメイド。

 ヴィクトリア調のメイド服はセクシーさとは遠く、楚々とした雰囲気を演出している。

 清楚な雰囲気は、それだけで禁断のなんとやらと言った感じの裏のなにがしを連想させるからたまらない。


 思わず、顔を綻ばせていると、イモートが、エプロンに仕込まれたナイフをスっと出して見せた。


 いや、そういった裏じゃない。

 ちがう。確かにおれ、ソレ、つくった。でも、ちがう。

 俺の言う『裏』は昼下がりのメイドのなんとやら的なアレであって、そういう赤い系の裏じゃあないの。やめて、ナイフ光らせないで。こわい。後7本くらい仕込んでるんだっけ。ナイフ。やだこわい。


 とりあえず2人とも微笑んでくれているので、アンネの言ったように、勝手にひんむいて装備を作ったことは許してくれているようだ。


 ホっとしながら、落としたお弁当を拾ってアンネに渡す。

 サンドイッチだから、多少包みを落としたとて問題は無い。


 アンネはお弁当を受けとり、窓の外をチラリと見て口を開いた。


「どうせなら公園に出かけてそこで頂くッスよ。折角のお弁当なんスから。

 イモートは、このお弁当を持っていくっス。ニンニンさんは水筒とかその辺の準備をお願いするッス。

 私はご主人様の対応をするッス。」


 テキパキと指示をだし、俺の横に立ってニコっと微笑むアンネ。


「さぁ行くッス。ご主人様。」

「う、うん。」


 アンネ主導で促されるまま動き始める。

 俺の隣にアンネが並び、後ろをイモートとニンニンがついてくる。


 俺の服は、黒の外套に軍服を着ている。

 そしてアンネも、黒ベースのヴィクリア調メイド。イモートも同様。そしてニンニンは黒のミニスカ浴衣だ。

 人目を引く事間違いなしの異様な集団が出来上がってしまった。


 そしてどうにも、この中で誰がリーダーかと問われたら『アンネじゃね』と思わずにいられない。

 それほどにアンネが堂々とし、逆に俺はアンネの顔色を伺っているのだ。


 そんな諸々を考えている内に公園に到着。

 みんなで囲み合うように座り、お弁当を楽しむ。

 そのついでに、俺は三人を改めて鑑定した。


 --------

 名前:ニンニン デゴザ ルー

 種族:ヒト(エロカワイイ)

 職業:アリエヘン忍者


 レベル:9


 HP:129/81

 MP:110/62

 物攻:43(+10)

 物防:37(+35)(+20)(+10)

 魔攻:34

 魔防:35(+35)(+10)(+10)

 速度:54(+20)(+15)

 幸運:03(+10)


 装備:短刀 色気忍浴衣 細工具足 強化地下足袋

 スキル:情報収集(軽) 単細胞

 ステータス:貧乏 喜び(小)

 --------


 --------

 名前:アンネ ナンデス

 種族:ヒト(クールビューティ)

 職業:女勇者(主:ヤベエ)


 レベル:20


 HP:349/102(+200)

 MP:346/99(+200)

 物攻:68(+200)(+75)

 物防:55(+200)(+25)

 魔攻:63(+200)(+50)

 魔防:52(+200)(+25)

 速度:35(+200)(+30)

 幸運:21(+200)(+25)


 装備:誘惑のグリーヴ 戦闘メイド服

 スキル:勇者(小) 勇者(超越)の従者 並列思考

 ステータス:喜び(大)

 --------


 --------

 名前:イモート ナンデス

 種族:ヒト(カワイイ)

 職業:従者(主:ヤベエ)


 レベル:15


 HP:62/95

 MP:89/99

 物攻:35(+32)

 物防:41(+25)(+3)(+4)

 魔攻:51(+24)

 魔防:48(+25)(+3)

 速度:21(+3)(+4)

 幸運:24(+25)


 装備:仕込みナイフ 戦闘メイド服 ニーソックス 革靴

 スキル:勇者(超越)の従者

 ステータス:喜び(中)

 --------



 ……なんだ。

 みんな喜んでくれてんじゃん。


 そう思い一息つきながらも、アンネの装備に材料を使い過ぎたせいか、3人の装備によるステータス補正のバランスおかしい事、そして、ニンニンに武器を作ってなかったという事に気が付いた。

 どうにも3人の喜びの度合いの差は装備の微妙な差が生み出している可能性が高い。


 とりあえず自分のおでこを軽く叩きつつ、ニンニンの装備をどうしたものか考え始めるのだった。



 ――その頃、あっせん所で現場監督が雄叫びを上げていた。


 「アイツはどこのどいつだっ!!」


 現場監督が、物凄い剣幕でヤベエの情報を集め始めたことなど、当人は知るよしもないのだった。



【イラスト】

朱崎紫童様

http://www.pixiv.net/member.php?id=960665

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