16話 ニンニンに魔バナナをご馳走するよ
「――だからお前の可能性を諦めるなよっ!」
「そうでゴザルな! 拙者いただくでゴザルっ!」
【詐欺的説得術】が勝手に働いているのは間違いない。
熱血テニスの人みたく力強く「諦めるなよっ!」を何かにつけて連呼したところ、俺は『魔力を込めたバナナ』を食べる実験にニンニンを協力させる事に成功した。
いや……『むしろ食べたいです』とニンニンに言わせる事に成功した。【詐欺的説得術】……性質が悪いぜ。
そんな事を思いつつも、前を向く。
人は前を向いて生きる生き物だからだ。
「じゃあ早速だけど食べる前のニンニンのステータスを確認するね。『鑑定』」
「『鑑定』ってなんでゴザル?」
首を傾けているニンニンのステータスを確認する。
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名前:ニンニン デゴザ ルー
種族:ヒト(可愛い)
職業:アリエヘン忍者
レベル:9
HP:81/81
MP:62/62
物攻:43
物防:37(+1)
魔攻:34
魔防:35(+1)
速度:54
幸運:03
装備:シノビコスチューム(偽)
スキル:情報収集(軽) 幸薄 単細胞
ステータス:貧乏(搾取)
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ふむん。
『心細い(不安大)』が消えている事とHPが回復している事以外は特段変化してる様子は無い。
よし。現状のステータスは確認できたから、これで変化の内容を検証できるな。
「だから『鑑定』ってなんでゴザルか?」
ニンニンを無視してバナナを取り出す。
目を閉じ【魔力付与】を意識して房から千切ったばかりのバナナに魔力を込めてみる。
するとスルスルと自分のMPがバナナに入っていくような感覚がした。アンネ達と契約をした時に感じた何かが動いた感じがするアレだ。
お? なんだ? なんで、こんなに長く動く?
魔力の動きを疑問に思いながらも、しばらく【魔力付与】の魔力を流していると限界が来たのか魔力が動かなくなった。
『成功したんじゃね?』と思い目を開ける。
すると、バナナが薄く光り輝いているではないか。
なんて……綺麗なバナナなんだ……
声を失いそうになる程のバナナ。
思わずただ事ではないバナナに向けて鑑定をする。
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種:魔バナナ(大)
魔力を限界まで注がれ、その漲る魔力によってバナナを超えしバナナ。
大変美味で選ばれし者のみが食すことを許されたスッウィーツゥ。
食した者に対し様々な効果をもたらすが、その効果も魔力量の少ない『魔バナナ(小)』の場合は一時的な変化に限定されるが、『魔バナナ(大)』となると、稀に永続的な効果をもたらすことがある。
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色々神々しいバナナに変化していた。
とりあえず食わせるしかない。
自分で食うのは永続的ななんちゃらが怖すぎて無理だ。
「やばいぞ……ニンニン。
……これ超美味いヤツになったらしい。」
「本当でゴザルか!! 楽しみでゴザル!
それにしても……それが鑑定でゴザルか。味まで分かるとは便利でござるなぁ。」
永続的な効果云々には決して触れず、美味だけを伝えた。
大事な事だが俺は嘘はついていない。隠しているが、伝えている事は全て事実だ。なんせ紳士だからな。
皮を剥いてみる。
するとやはり、その中から神々しい光を放つバナナの実が現れた。
見ているだけで齧りつきたくなってくる程の魔性のバナナだ。
意識を振り絞り、ニンニンの前にその実を向ける。
ニンニンの目の前でそそり立つ神々しいバナナ。
ニンニンはその立派なバナナに当てられたのか、まるで魅入られたように目が空ろになっている。
いや、空ろではない。頬に熱が入ったように紅潮し、ウットリとしているのだ。
「コレ……本当に……拙者が食べても良いのでゴザルか?」
バナナ越しに俺を見たニンニンが最終確認とばかりに俺に問いかけてきた。
美味しそうな立派なバナナを口に含みたくて仕方がない。我慢も限界だと言わんばかりの目。
俺は優しく微笑みながら答える。
「いいんだよ……さぁ、いい思いをさせてあげよう。
ほら、口を開けて。」
ニンニンは俺の魔力で漲ったバナナから香ってくる匂いに我慢できないのか鼻を動かし、そして大きく口を開けた。
ニンニンにバナナを近づけると、少しの嗜虐心が疼き、口に含める事ができるか出来ないかの距離を保つ。すると焦れたニンニンが舌を伸ばした。
俺はニンニンの気持ちに応え、漲るバナナで、そっとニンニンの舌をなでる。
するとニンニンはそれだけでビクンと体を大きく震わせな「ンン」と声を漏らした。
直後、突然ニンニンが俺の腰を両手で掴んだ。驚きのあまり固定された俺の漲るバナナを自ら迎えに行き、咥え始めるニンニン。そして口いっぱいに含み時折歓喜の声を漏らしながら味わい始めた。まるで獣だ。
「おいニンニン。急にがっついてどうしたんだ?」
少し慌てながら、ニンニンの肩を押して口からバナナを引き離す。
するとニンニンはビクリビクリと自分の体を抱きしめながら
「アアっ」
と声をあげ身悶える。
ニンニンの顔がどんどん上気し、その赤味を増してゆく。
「……スゴイのぉ……体が…熱いの、熱くてたまらないのっ! もっと……もっと欲しい……欲しいのぉぉっ!」
興奮し、悶え、にじり寄ってくるニンニン。
俺はその様子に、さらに嗜虐心が刺激される。
「おいおい欲しがり屋さんだなぁ。
んん? どうした、そんなに俺のバナナが欲しいのか? ん?」
「…………欲しいぃ……欲しいですぅ。ヤベエ殿の……バナナ……欲しいぃっ!」
「んん? 殿? 今、殿と言ったのか?」
「あぁん違いますぅっ! ヤベエ……様。ヤベエ様のバナナを私にくださいぃっ!」
「よしよし。そうまで言われたら仕方ないな。ほぅら。お待ちかねのバナナをやろう。」
さらに皮を剥き、ニンニンの口の前にバナナを差し出すと、あっという間にニンニンがむしゃぶりついてきた。
「おいおい、もうちょっと上品に楽しめないのか? 下品だぞ?」
「ムリなのぉっ! こんなの知っちゃったら! もうムリなのぉぉおっ!!」
「ははっ、凄い勢いで咥えていくなぁ。ほらもうそろそろ最後だぞ。しっかり味わえよ。もったいない。」
俺はバナナを全部ニンニンの口に押し込んだ。
ニンニンは体を震わせゴックンと大きく喉を鳴らして飲み込む。
次の瞬間には、身体の内側から湧き上がったであろう快感に飲み込まれたように荒く息をしながらその場に倒れこんだ。
頬の紅潮は引かない。ふるり、ふるりと、時折体を震わせる意識を失ったニンニン。
とりあえず鑑定をかけてみる。
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名前:ニンニン デゴザ ルー
種族:ヒト(可愛い)
職業:アリエヘン忍者
レベル:9
HP:131/81
MP:112/62
物攻:43
物防:37(+1)
魔攻:34
魔防:35(+1)
速度:54
幸運:03
装備:シノビコスチューム(偽)
スキル:情報収集(軽) 単細胞
ステータス:貧乏 恍惚
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HPとMPが上限を超えている。
それと、スキルであったはずの『幸薄』とステータスの貧乏の横にあった『(搾取)』が消えていた。
……魔バナナすげぇ。




