14話 仲間が顔合わせするよ
「……お~……ヤベエ殿…おかえ…り゛っ!?」
人の気配を感じたのかニンニンが目を覚まし、むにゃむにゃと目を擦る。
だが、すぐに人の多さ、そして見知らぬ人間が間近にいる事に気づいて驚き固まった。
いや、この反応って明らかに一般人過ぎるだろ。
ニンニンは本当に忍者なのか?
そんな思いを飲みこんで笑顔を作る。
「あ~うん。ただいま。後ごめん。件の賊なんだけど殺すのもなんだから、諸々あって俺の従者になったんだ。」
ニンニンから目を離し、アンネとイモートに一度目をやって、ニンニンを親指で指さす。
「アンネ、イモート。この人はニンニンって言う俺のストーカーだ。」
アンネとイモートは俺の言葉を聞いてすぐに、ニンニンを見る目が心底可哀想な人を見る目に変わった。
「……物好きもいるんスね。」
「……人生投げるのは早いでガスよ。」
どういう意味だろうか? 特にイモート。
ニンニンもニンニンでめっちゃくちゃ慌てながら跳び起きている。
「違うでござるっ! そういう意味のストーカーじゃなくて! 国の命令で監視しなきゃいけない意味でのストーカーでゴザルっ!! 追跡でござるよっ!」
一目で必死とわかる程に超絶一生懸命説明している。
アンネもイモートもすぐに納得したのか大きく頷いた。
そしてアンネはふと気が付いたようにニンニンをじろじろと見て、口を開く。
「もしかして……元男っスか?」
なんてカンの良い子なんでしょうか。
ニンニンは満足そうに大きく頷き、盛大に鼻から息を吐きだした。
「そうでゴザル! そうでゴザルっ!
やはり拙者は女には見えない『男らしさ』が溢れているのでゴザルな! うんうん!」
「いや……それはねえッスよ。完璧に女ッス。ただ……なんとなく境遇を考えると……」
アンネは言葉を止め、チラっと俺を見た後すぐにイモートに目を移動し、ニンニンに目を戻す。
「……ねぇ。」
そして一言だけ呟いた。
ニンニンはアンネの言葉にポカンとした後に、やがてハっと何かに気づき、そしてプルプルと震える指でアンネを指した。
「……も…しかして…………そなたも?」
アンネは無念そうにコクリと頷いた。
次いでプルプルと震えるニンニンの指がイモートに向くが、イモートもまた無念そうにコクリと頷く。
ニンニンはプルプルと震え続ける指を動かし、自分を指さす。するとアンネとイモートが同時にコクリと頷いた。
静寂。
静かにニンニンは両手で顔を覆った。
アンネが優しく頷きながらニンニンの肩を抱く。
イモートもそっとニンニンの背中に触れる。
やがて三人は何かを感じあった同士のように強く手を取り合った。
「生きていればいい事あるッスっ!」
「強くなるための試練でガスよっ!」
「そうでゴザルなっ! そうでゴザルなっ!」
しまいには抱き合って涙まで見せ始める始末。
なんだろう、直接何も言われていないんだろうが、ひしひしと責められている感じがする。やるせねぇ。
分かることは分かるが、つい愚痴の一つでもボヤきたくもなる。
「いや……俺いつでも解除するってマジで。
……なんなら今すぐ解除しようか?」
俺の小さく発した言葉を聞きつけた3人の耳が同時にピクリと動き、すぐに動き出した。
「ち、違うでゴザルっ! そういう意味ではないでゴザルっ!」
「そそそそうっスっ! 違うっスっ!」
「そうでガス! でガスっ!」
そう。
ニンニンは男に戻れば、命を懸けた任務の失敗の可能性が格段に高まる。なんせ俺が逃げる。
アンネとイモートにしても、男に戻れば『抹殺』もしくは『詰所に引き渡される』ことになるのだ。
皆、それぞれ理由があって女になっている。
もちろんその理由を付けたのは俺なのだが、俺はお願いされて女体化魔法をかけている立場なのだ。
大事な事だから。もう一度いうが、俺はお願いされて女体化魔法をかけているのだ。
だからこそ俺が責められる謂れなどない。
「だってさ~。今の流れだとぉ? なんか?
どう見ても俺ワルモノだし~~? そんな無理やり女にされたみたいなのってあるぅ?
俺、お願いされて女にしたはずなのにさぁ?」
分かり易く拗ねてみると、3人は慌てながら俺の周りにやってきた。
「そうでゴザルよ! ヤベエ殿はお願いをかなえてくれた優しいお方でゴザル!」
ニンニンが右からにじり寄りつつ必死に声をかけてくる。
「そうッス! オレっち達のお願いを聞いてくれる心の広いご主人様ッス!」
左からアンネがにじり寄りつつ必死に声をかけてくる
「そうでガス! こんな立派なご主人様のお傍にいれるのは幸せでガス!」
正面からイモートが一生懸命にじり寄ってくる。
三方向から綺麗と美人と可愛い女に詰め寄られた。
とんでもない破壊力だ。なにこれ。
こんな経験したことない。
「い、いや。ごめん。ちょ、ちょっと調子にのってイヤミ言ってみただけなんで。ごめん!」
すぐに笑顔になる三人。
三人は思った。
こいつちょろい。と。




