10話 ヒャッハー姉にバナナを食べさせるよ
「な、なな、なにするつもりッスかっ!?」
姉になったヒャッハーは自分の身体の変化と俺の表情から何かを感じ取ったのか、心底怯える様子で身構えている。
妹になったゲスも姉となった元ヒャッハーにしがみついて怯えている。
「いや? 商人襲ってたみたいだし、今おなか減ってるんだったら、干し魚を貰ったしバナナもあるから食べさせようかなと思っただけだが? 魚食うか?」
「「 えっ? 魚くれるの? 」」
途端に目がキラキラしだす姉妹。
うむ。二人とも美人である。
…………
う~む……お腹減ってるみたいだけど、よくよく考えると……これまで悪い事をしてきたのに、なんの罰も無く許されてご褒美が当たるのは、世の中の道理に合わない気がしてくる。
う~ん。
どうしたもんか。
食材を手に持ったまま思案する。
そしてピコンと閃いた。
「うんむ。食べさせてやろう。
食べさせてやるが、これまで悪い事をしてきた人間には『ひどい物』を食べさせて罰を与えることにするっ!」
姉妹は俺の言葉に落胆し、そして『一体何を食べさせられるのか』と怯え始める。
俺はその様子を見ながらバナナを一旦ザックへ戻す。
そして、干し魚に練乳をかけた。
「な、なんてことをするッスかっ!」
「そんな事をしたら折角の魚が台無しになってしまうでガス!」
……
「おい、『ゲス』はどうした? 妹。」
「いや……なんか自然と変わってしまったでガス。」
「ん、なら仕方ないか……ないのか?
まぁ、うん。女の人なら『ゲス』よりもそっちの方が聞こえもいいしな。まぁいいか。」
「そうでガスか?」
「そうでゲスよ。」
とりあえず元ゲスの真似をして返すと、お家芸を取ってしまったせいか変な顔になる妹。
「さて、どちらから罰ゲー……エフン。罰を与えようかな?」
取り直して練乳のかかった干し魚を構える。
それを見て怯え抱き合う姉妹。
だが怯える妹を見た姉は意を決し、妹を庇うように身体を前に出した。
「こうなったのも俺のせいッス! だから……俺が最初ッス!」
震えながらもそう言い放った。
「いい覚悟だ……じゃあ行くぞ! さぁ口を開けるんだ!」
ぐっと目を閉じて口を開く姉。
俺はくふふふと笑いながら、姉の口に練乳がたっぷりかかり白くなった干し魚を、まずは少しだけ差し込む。
姉はゆっくりとそれを咥えこんだ後、あわてて口を離した。
「ひどく生臭いッス!」
そりゃ干した魚をそのままなんて生臭いだろう。
罰としては成功のようだ。
「フッフッフッフ。罰だからなぁ。
ほら。さっさと口を開けるんだよ。」
姉は泣く泣く再度口を開き、その『生臭いモノ』の口内への侵入を許す。
「ほら! ちゃんと味わえっ!」
「グぅ……うぇっ……!」
姉は我慢して口を動かし、ゆっくりと『生臭いモノ』を咥えこんでゆく。
だが、異物に口内を犯され、その生臭さに吐き気が起きているのだろう。時々えづいては吐き気を必死に堪え涙目になっている。
「ほぉら。いっぱい味わえ。お前の好きなモノだろう? あぁん? ほら、こぼすなよ。ちゃんと全部飲みこめよ? ゴックンとな。」
「ん……ん…んぐ……オェ。
……生臭くて……苦くて……絡みついて
飲みこめないッス……」
姉はしばらく涙目のまま、えづきながらも、やがて全部をゴックンと喉を鳴らして飲みこんだ。
「……ちゃんと飲みこんだか?」
「飲んだッスよ! ホラ! 全部。」
姉は口を開け、舌まで出して口内を見せる。
口内を覗き込むと、白い練乳がテラリと糸を引いていたが……確かに飲みこんだようだ。
「フッフッフッフ。だがなぁ、まだまだ魚は残っているぞ?」
そう、一口、二口分程度しか魚は減っていない。
まだ半分以上俺の手に残っていた。
それを振って見せる。
すると干し魚にたっぷり塗られていた練乳が、ぴぴっと姉の顔に飛んだ。
ぱたたっと飛んできた練乳をその顔面で受ける姉。
一瞬落ち込みを見せたが、すぐに顔を上げた。
「ええいっ! もう覚悟を決めたッス。
俺も勇者ッス! 一気に全部来るッスよ!!」
「ほう! いい覚悟だっ!」
俺は姉の覚悟に感銘し、眉をあげる。
姉も口を拭いながらも生臭いモノを少しは食べる事ができた自信からか、こっちをキっと見ている。
しばしの睨み合い。
姉が顔についた練乳を拭い、俺もスっと残った練乳のしたたる生臭いモノを構える。
姉も俺の動きに合わせ、目を閉じ口を開いた。
俺は姉の口の奥まで生臭いモノを一気に突っ込んだ。
「んぅっ! オぇ……えェっ! ……ゥ……く…くさいぃ……」
姉の涙目だった目から涙がこぼれた。
だが、我慢して、大きく口を動かして生臭いモノを味わい始める。
「うぇ…ぇ……好きだった……のに。
……こんなんじゃ……嫌いに…なっちゃうよぉ……」
顔をくしゃくしゃに歪めながらもしっかりと生臭いモノを味わっている。
「ほら頑張れよ。まだまだ終わってねぇぞ? きちんと全部ゴックンしろよ? 吐きだすなよ?」
俺の挑発を受けながら、姉は沸きあがる吐き気と対峙し、そしてなんとか全部飲みこんだ。
荒く肩で息をしながら口元を手で拭う姉。
俺はそれを見て優しく微笑む。
「……良くやったな。
よく耐えた……頑張ったよ。お前はスゴイ。
これでお前が悪い事をしてきたのも……俺は許す。
さぁ。ほら。ここに美味しいバナナがある。
これを食べて口直しすると良い。」
俺は大事そうに取り出したバナナの皮を剥き、姉に見せつける。
剥かれてゆくバナナの実が姉の前で右に左に揺れた。
「あぁ……不思議とバナナが……とても美味しそうに見えるッス……」
うっとりとした顔の姉。
もうバナナから目が離せなくなっている。
俺はうんうんと頷き、ご褒美としてバナナを食べさせてあげる事にした。
「ええんやで……
ほれ。食べさせてやるからな。ア~ン。」
俺の言葉に素直に口をあける姉。
姉の口に優しくバナナを差し込むと、姉は舌を伸ばして俺のバナナを口に迎え入れた。
「んあああぁ……おいしぃぃ。
バナナ……しゅきぃ~。」
姉はもうバナナの虜だった。
妹に目を向けると、姉と同じ目に合うのを想像したのか青くなっていた。
俺は容赦なく妹に向き直る。
「さて、では妹の罰に移ろうか。」




