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8、アラベスク  2017年4月23日 19時

 桜木音楽取扱事務所では「桜木亭」でのコンサートを終えた綾香と川原がいた。ステージではまだ桜木がコンサートを続けていた。


「斉藤さん」


 事務所内で川原が綾香に話しかけるのは初めてだった。


「何・・?」

「今日も平常心の演奏でしたね」

「どういう意味?」

「いや・・・」


 川原はにやりと笑って、窓際に座った。


「身近な人が死んでも、生活は普通に営まれる」

「・・・」

「誰にも悲しまれない死」


 川原は綾香の返答を待たずに話し続ける。


「誰もが死んでくれたらいいのにって思ってましたもんね」

「何言ってるの。そんなこと誰も」

「思ってましたよね。斉藤さんも」

「・・・あたしは・・関係ないし。違う科の部長なんて」

「誰が・・殺したんでしょうね」

「自殺でしょ」

「信じてるんですか。あの部長が自殺なんてしないでしょ。むしろ、あのメールの犯人、捕まえて殺してやるくらい思う人ですよね」

「それは・・」

「納得いかないんですよねー。なんで警察がそんなにすぐに自殺としたのかも気になるし。」

「・・」

「ま、自殺にしても他殺にしても死んでくれてありがとうって思ってるので、あたしは」

「どうして・・?川原さんも関係ないよね?」

「逆になんで、関係ないって決めつけるんですか?あたしには理由、ありますよ。死んでほしかった理由。だからって殺してませんけどね。斉藤さんにもありますよね、理由。・・・多分、斉藤さんはあたしにも死んでほしいんだと思うけど」

「・・は?」

「まあいいや。来て欲しくないけど、いずれ分かる時が来ます多分。」


川原はそう言って事務所を出ていった。綾香はしばらく呆然としていたが、思い立ったように電話をかけ始めた。

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