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36、その幕切れ 2017年4月27日 11時30分

 菜穂は分かっていた。綾香の手に握られている小さなスイッチの正体を。あのスイッチが押されればこの病院は爆発する。逆に言えばあのスイッチが手に入れば全てが解決する・・。菜穂のその気配に綾香が気が付き再び対峙した。


「残念です・・・」

「・・・どっちの意味か分からないけれど、そうね」

「・・どっちもですよ。あなたは犯罪者です。でも同時に被害者です。」

「・・・私を殺すの?」

「・・・・殺したくない」

「時間が無いわね・・・」


 綾香はふっと顔だけを外に向けた。その様子に気が付いた外の深川は許可なく拳銃を握る菜穂を睨みながらも戦闘態勢に入った。それに気が付いた菜穂は拳銃を握りなおす。そして綾香の持つスイッチを狙って引金を引いた。


「・・・え?」


 次の瞬間、崩れ落ちたのは来宮だった。綾香を守るように覆いかぶさりわき腹から血を流していた。それまで静寂に包まれていた院内に悲鳴が響きどよめきが広がった。そうしているうちに深川率いる警察が院内に乗り込み多くの患者とスタッフを保護し爆弾の捜索と解除に向かった。


「先生、どうして!?」

「お前は死んじゃだめだよ。生きて償わないと。あと・・・生きて、もっと賢い方法で復讐しないとな・・・・」


 来宮がそう言ったとき綾香を押しのけて医師たちが来宮を取り囲む。


「来宮、お前バカか?!なんでだよ・・・」


 来宮を良く知る外科医が嘆く。


「ふふ・・すみません・・・。」


そう言って失血で意識が朦朧とする来宮はストレッチャーに乗せられ運ばれた。病院の外では演説を続けていた双葉と院長、そして池橋の3人が予想外の事態に厳しい表情で立っていた。院内には無表情で立ったままの菜穂と、涙と感情が抑え切れなくなった綾香とその様子を見つめる深川とその部下だけが残った。


「斉藤綾香。医療センター立てこもり及び殺人未遂の現行犯、また産婦人科部長殺人容疑で逮捕する。」


 深川がそう言うと綾香は泣きながらも素直に従う。深川は綾香を部下に任せる。


「綾香さん!」


 菜穂が震える声で綾香に声をかける。


「・・・本当にバカよね。私もあなたも、彼も」


綾香はそう答えてから、連行された。何も言えない菜穂に深川が声をかける。


「・・・分かってるな」

「・・・はい」

「警察、続けるか?」


 深川のその問いに菜穂は一呼吸開けてから一気に答える。


「・・・・世の中、分かりません。どんな場所にも悪意と憎しみにあふれた人間がいる。また、それによって苦しむ人間がいる。その人たちを全員捕まえるなり救うなりするまでは私に辞める理由はありません。じゃないと・・・綾香さんと来宮先生にどんな顔したらいいのか本当に分からないですから・・・・・・決断、ありがとうございました」


 菜穂はそう言うと病院を出ていこうとした。


「おい、磯山。刑事、続けるなら仕事していけ」

「・・・」

「川原双葉と院長だよ。同行しろ」


 菜穂は無言で出ていった。そして群がろうとする記者を押しのけて呆然と見ていた院長と双葉に同行を求め共に去っていった。


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