19、見えない閃光 2017年4月26日 7時
有住達治は自宅の書斎で電話を受けていた。
『何・・・?やはりそうか・・・。川原直也という男・・・。まあいい。私が言えばすぐに取り消しになるだろう。あいつさえ連れて帰れば神戸での一連の騒ぎも収まるだろ・・・。これ以上騒がれて、余計な事まで掘り起こされたら困るからな。ああ・・』
有住は電話を切り椅子に腰をかける。
「まったく・・・私を困らせしかしないやつだな」
有住はそう言いながら再び電話を取った。そしてある役人に電話をかける。
『・・・ああ。私だ。すまんな、朝早くに。いや・・。ちょっと頼みたいことがあってな。娘の婚姻届についてなんだが・・・』
有住はその男に報酬は払うと約束し電話を切った。この世のすべてを握っているような表情で、1人で笑った。
同じころ、神戸のある墓地に近藤有紀理が居た。彼女は墓を掃除しながら1人呟いていた。
「お父さん・・・・もうすぐ全部終わるから・・・会いに行くね」
また同じころ、俺は坂原に電話をしていた。
『もしもし』
『こんな朝っぱらからなんだよ』
『お前昨日電話出ないから』
「仕方ないだろ。双葉んとこ行ってたんだから」
『昨日、白野礼子に伝えてきた』
『うん』
『逢わないって』
『え?』
『逢いたくないらしい』
『なんだよそれ。じゃあ探し損だ』
『でも新事実が分かった』
『何?』
『白野さんにさ、双葉さんが部長を殺したかもしれないって話したら』
『うん』
『次のターゲットは、院長かもしれないって』
『・・・マジか。それ本当?』
『・・おそらく、院長も絡んでる、偽装に』
『・・昨日、双葉に会いに行ったから・・・。決行は今日か明日か明後日か・・』
『とにかく。分かった以上なんとしても』
『殺させちゃダメだ』
そう言って電話を切った。