16、看護助手 2017年4月25日 17時
呼吸器内科病棟には楓がいた。そこに呑気に池橋がやってきた。
「楓ちゃん。なんでこんなに人少ないの?!」
「今日は元々そういうシフトなのよ。今みんな食事の準備とかで忙しいし」
そう言っている間にも慌ただしく行き来する人たちが前を通る。
「あたしは書類整理もあるし大変なのよ」
「ふうん。あの子は?」
「え?」
「川原さん。手伝ってもらえばよかったのに」
池橋がそう言うと楓はあからさまに呆れた顔をした。
「先生、ほんと何も知らないんだから」
「なんだよそれ」
「あの子はね、勤務中は仕事をこなす。でも残業は一切NG。」
「残業代出るよーって言ってあげればいいじゃない」
「出ないものを出るって言えないじゃない」
「それは君の・・・」
「嫌よ。なんであたしがポケットマネー出さなきゃなんないのよ」
「言ってないのによく分かったねー」
「先生ほどわかりやすい人居ないのよ」
池橋と楓が意味のない言い争いを繰り広げていると、そこに意外な人物がやってきた。
「よっ、久しぶり」
「おっ・・!坂原じゃねえか」
「誰?」
「高校の同期の探偵」
「探偵さん?!」
「初めまして、坂原です」
「こんなところまできて何の用だよ」
「川原双葉さんは?」
「もう帰りましたけど?」
「今丁度彼女の話してたところだよ」
「そう・・・」
「ていうかさ、3日後にまた来いって言ったのに来ないんだよ」
「誰が?」
「りっちゃんでしょ?」
「・・・・・ああ!」
「お前・・・やっぱなんか知ってんのか」
「知ってるっていうか・・・」
「何?」
二人に疑惑の目を向けられた坂原は近くの倉庫に二人を押し込んだ。
「おいなんだよこんなところに連れ込んで」
「りっちゃんはね、今東京にいる」
「東京?!」
「ある事件を調べるために、潜入捜査に行ってる」
「お前・・・それ危ないだろ」
「・・大丈夫だよ。りっちゃんなら・・それに、潜入したことで分かってきたことがある」
「え?」
「産科部長はやっぱり他殺だ」
「は?!」
「あと、川原双葉が絡んでるかもしれない」
「何、どういうこと?」
「詳しく言うと長くなるから。とにかく、また何かこの病院で起きるかもしれない。その時は協力してほしい。」
「・・・・」
「りっちゃんを助けることにもなるし」
「・・・・それは・・お前・・」
「川原双葉、どこ行ったか知らない?」
「今ですか?」
「そう今」
「・・・多分、岡崎にある桜木亭っていう蕎麦屋だと思います」
「蕎麦屋?」
「コンサートレストランだよ。彼女ピアノ弾くんだよ、そこで」
「恐らく今日もライブあるんじゃないかな」
「ありがと」
「ちょ・・おい!」
坂原はそれを聞いて二人を置いて急いで出ていった。