12、動揺と新たな疑惑 2017年4月25日 13時
刑事と会った翌日、日々の業務に忙殺されていつの間にか昼を回っていた。
「先生、お昼食べないの?」
「!・・ああ」
「ふーん。そう」
ダメだ。さっきあの女から聞いてしまったことが頭をよぎる。まさか・・・まさかあいつが産科部長の愛人だったなんて・・。ショックだ・・。
「ちょっと先生・・・。そんなところでへたり込んでないで休んで来たら?」
「そうだな・・・」
しばらくお前の顔は見ない方がよさそうだ。と言うわけで俺は休み時間を使って坂原の事務所に行った。
「何落ち込んでんの?」
「え?・・・なんもねえよ。それより、娘探しどうなった?」
「ああ。潜入捜査中」
「潜入捜査?」
「有住不動産にね」
「有住不動産・・?」
「関東では超有名な金持ちだよ。」
「なんでそんなとこに」
「白野礼子の娘は、有住不動産の娘かもしれない」
「・・どういうこと?」
説明を聞いて納得した。にしてもまた愛人かよ・・・。
「で、東京だろ?お前どうやって潜入してんだよ」
「俺が潜入してるわけないだろ。」
「・・・お前、りっちゃん!」
「助手なんだから良いでしょ」
「これ、池橋知ってんの?」
「さあ。急だったから言わずに行ったんじゃないかなあ。」
「・・・バレたら大変だぞ」
「大丈夫だよ。そんな長い間潜入させるわけじゃないし」
「・・あっそ」
「何その反応。来宮が頼んできたことを調べてるんだよ?」
「はいはい。ありがとうございます」
「やっぱ機嫌悪くない?なんかあったの?」
「・・・産科部長が死んだろ?」
「・・ああ。うん」
「それで女刑事に捕まっちゃってさ」
「え?来宮殺したの?」
「違うわ。だったらこんなところに居ないだろ!そういう意味じゃなくて。協力してくれって言われてさ・・・」
「ふうん。警察も大変だね」
「いや・・まあいいや。で、その女がさ・・。部長には愛人がいたって言うんだよ」
「うん・・。で、それが斉藤さんだったんだ」
「お前・・!なんで知ってるんだよ」
「いや今の流れだと知らなくても分かるよ」
「・・・」
「まあ。人間いろいろあるよ」
「で、その女刑事、斉藤が部長を殺したんじゃないかって疑ってんだよ」
「はあん。まあ、愛人が殺しちゃう事件も無いわけじゃないもんね」
「あいつは絶対そんなことしないよ」
「でも・・。その刑事単独行動してるの?ちょっとどうなんだろ・・・」
「なんとか、あいつの疑惑を晴らしたいんだよ」
「・・・新たな依頼ってことでいい?」
「そうだな。協力してくれ、俺に」
「来宮は刑事に協力して、僕は来宮に協力するの?」
「回りくどいこと言ってんじゃねえよ」
「まあいいや。丁度さ、新たな容疑者が生まれそうな情報があるんだ」
「え?」
「りっちゃんが送ってきた情報」
「そっちのことと関係あるのか?」
「それがさ、バリバリ関係ありそうなんだよね」
俺は不敵な笑みを浮かべる坂原の話に聞き入った。