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11、有住家のメイド 2017年4月24日 10時

 凛久は今日からメイドとして有住家に潜入した。


「ほら、そこ汚れてるわよ。はやく掃除して!」


 どう見てもそこまで汚れていない床を指してきつく言ってくる。こんなことが働き始めてから続いている。普通のメイドだったら1日で辞めてしまいそうなほどブラックな職場だった。


「・・逆に前のメイドどれだけ忍耐強かったのよ・・・」

「何か言った?無駄口叩いてないでさっさと手を動かしなさいよ!雇ってるのはこっちなのよ!」


 特に奥様には強く当たられた。特によく言う口癖があった。


「あなたは双葉の代わりなのよ!必死に働きなさいよ!」


午後になり奥様が席を外し家の中には次女の咲楽と凛久だけになった。


「失礼します」

「・・・」


 咲楽の部屋を訪れると、彼女は机に向かっていた。


「お勉強ですか?」

「・・・」


 話しかけても咲楽は答えない。凛久は諦めて無言で掃除を始めた。しばらくすると咲楽から声をかけられた。


「あなた・・」

「・・はい?」

「あなた、おかしくなりたくなかったら早くやめた方がいいよ」


 咲楽は15歳の中学3年生だ。そんな子が達観した表情でこんなことを言う。


「おかしく・・?」

「朝からいたら分かるでしょ?この家ではメイドに人権は無いの。」

「・・でも前のメイドさんは長く勤めていらしたのでは?」

「それは・・・・・」


長い沈黙。


「聞いて良いですか?」

「何?」

「双葉さんって誰ですか?」

「・・・姉。」

「・・」

「この家の長女で・・・前のメイド。1ヶ月前に出ていった。」


 長女が前のメイド・・・?凛久は一瞬考えた。実の娘をメイドに使う親がいるのか・・・?咲楽がそれ以上は話したくない雰囲気だったので凛久は部屋を出た。



 その夜、リビングの前の廊下を通ると、中で奥様と旦那様が話しているのが見えた。凛久は気づかれないようにそっと中を覗いた。


 『自殺になりましたね。山本先生』

 『当然だろう。俺が交渉したんだ』

 『でも本当に双葉がやったんでしょうか?』

 『本当かどうかはこの際どうでもいい。ただリスクは減らしておくべきだからな。』

 『とにかく。あの子を見つけ出さないと』

 『ああそうだな。山本が死んで、今度は社長がビラを撒かれて社会的信頼を失ったらしい』

 『それもまさか・・・。』

 『双葉の仕業かもしれん・・・。』


 なぜこの二人が、神戸で起きている事件を話題にしているのか、そしてそれをなぜ娘の仕業だと思っているのか、凛久は混乱してきていた。その時、後ろから急に肩を叩かれた。凛久は驚いて思わず声が出そうになるがなんとか踏みとどまり振り返った。


「殺されたくなかったら、こういう事しない方がいいですよ」


 咲楽は平然と言う。凛久が答えずどうするべきかと咲楽を見つめていると咲楽は言った。


「両親は秘密の会話をしています。バレたらこの家が終わるくらいの。・・・でも、あなた何か知ってるんですよね?」

「・・・・え?」

「あなたは、お姉さんを助けに来たんですよね」


 咲楽はじっと凛久を見つめた。凛久は本当はよく分かっていなかったが頷いて咲楽をメイド室に連れ込んだ。


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