10、正義と愛人 2017年4月24日 10時
俺は1日考えていた。昨日外来に来た変な女のことを。初めは気にしないようにしていたが、やはり俺の中にある「部長は自殺なんてしないのでは?」の思いが高まりついに連絡を取ってしまった。今、近所の喫茶店で彼女と向かい合っている。
「ご連絡ありがとうございます」
「いや・・。」
「さっそく協力者が得られて嬉しいです」
「協力者とかそんなつもりでは・・」
「え、協力してくれるんじゃないんですか?」
「俺はただ真実が知りたいんですよ」
「まあいいですそれでも。で、どこまで知ってます?」
「どこまでって・・何も知りませんよ。こっちには情報はほとんど無いわけだし」
「ふうん。本当に謎だらけですよねーこの事件」
「本当に事件なんですか?」
「間違いないと思います」
「警察は自殺と判断した。なのになぜ言い切れるんです?」
「刑事の勘です」
俺は呆れた。まさか勘だけでこんな行動をとっていたとは。
「・・すみません。俺、帰ります」
「え。ちょっと待ちなさいよ。乗り掛かった舟でしょ?!」
「勘とか・・・」
「勘は大事よ。あとはまあ、山本さんの性格とか、家族周辺とか、その他・・」
「家族?」
「山本さんは家族からは距離を置かれていた。なんでだと思います?」
「・・あの性格だから」
「違います。直接の原因は、山本さんに愛人がいたことです」
「愛人?!」
「声が大きいですよ。そう。愛人です。」
「・・・誰ですか?」
「それは・・・来宮先生は知らない方がいいかも」
「・・でも、乗り掛かった舟です」
「良いんですね」
菜穂はえらく渋り、そして同情するような表情で言った。
「斉藤綾香さんです」
「は?」
「だからそうなるでしょ?先生のとこの看護師さんですよ」
「・・そんなバカな・・」
「あるんですよ。だから知らない方がいいって言ったのに」
俺はかなりショックを受けた。まさか・・あいつが愛人・・?
「私は、彼女が山本さんを殺したのではと思ってます、正直。」
「それは本当に無い!」
「・・やけにむきになりますね」
「あ、いや・・」
「とにかく。これは全て事実ですから。先生?」
「え?」
「先生には院内スパイになってもらいますね」
「院内スパイ?」
「病院って、内部には簡単には潜入できませんから」
「当たり前だろ」
「だから、先生ならどこでも行けるじゃないですか。まあ、常にスパイしてくださいってことじゃないですよ?院内で調べたい事があった時に先生の出番です!」
菜穂はそう言って仕事に戻るんでと言って出ていった。