少年編 - 4話
今回はかなり短めです。ご了承ください。
そう言ってクロードさんは僕の頭を手でポンと軽く叩くと、近くに置いていた大きな荷物袋へ向かい、中から大きめの黒い箱を取り出した。
「それなりにモノになったみてえだしよ、誕生日祝いで渡しておこうと思ってな!ほれ、俺が作った装備品だ。バルドにやりてえモン全部作る......ってわけにはいかなかったけどよ、持ってきた奴はかなりの完成度だぜ!かつての知り合いの魔導師にちょいと手伝ってもらったからよ!まずはこれだ、あとこれと......これの3つだな」
そう言って取り出した装備品を一気にどさっと僕が差し出した腕の上に乗せてきた。
「片手用の剣と魔導グローブ、あとローブだ!全部魔導具だからよ、一つずつ説明してやる。その片手剣を抜いてみろ」
他の装備を置いて、漆黒の鞘から剣を引き抜く。刀身から柄まで漆黒に染まっており、心なしか黒く鈍い靄がかかったように見える。何となく禍々しい雰囲気を醸している。鍔の部分には中心部が赤黒く揺らぐ紫色の石の様な物が埋め込まれている。
「そいつの名前は”ダークリソーヴ”だ!ブラ......凄腕の魔女に譲ってもらった特殊な魔石を埋め込んでてよ、仕組みは知らねえがある程度の規模の闇魔法なら触れただけで吸収しちまうらしい!一生モンの武器になるたぁ思うが、これから森を抜けるにも丁度いいだろ!だがバルド、その剣は誰にも渡すなよ。闇に適性の無い者が吸収しちまうと魔力に侵されちまう。ちなみに軽いだろうがよ、斬れ味は保証するぜ!軽量化を付与してんのは重さが無くても充分だからだ」
確かに相当軽い!全長1メートル程の剣にも関わらず重さは1キロも無く、僕でも無理なく扱えそうだ。
「ガハハどうだ!使ってみりゃ気に入ってもらえるはずだ!そんで次はそれだ」
そう言うとクロードさんはグローブを指差した。黒い布製の指貫きグローブで、手の甲の部分に金属製のプレート付いておりそこには魔法陣が刻印されている。僕はそれを手にとって両手に装着する。
「この魔法陣は?」
「それは修復魔法の魔法陣だ!......闇属性を扱えるヤツはどうやら回復魔法使えねえらしい。ソイツは修復魔法って言ってな、魔力と体力を使ってお前自身だろうが触れてる物だろうが直せるって話だ。ただし規模がでけえを使うと生命力を持っていかれちまって危険らしいから気をつけて使えよな。ちなみに刻印されてる金属はオリハルコン製で相当丈夫だから防具にもなるぜ!」
無茶苦茶便利だ......こんなものがあるならもっと汎用されていてもおかしくない。使える条件があるのだろうか、それとも生命力を持っていかれるリスクが高いのだろうか。
それと闇属性の適性者は回復魔法が使えない......というのは、魔族が回復魔法を使えないということだろう。
「ありがとうクロードさん!これも森を抜けるのに役立ちそうです!」
「おうよ!......ちなみにそれは回復魔法とは根本的に違うらしくてよ、代償魔法っつー奴のひとつらしい。基本使うなって話だ。」
代償魔法......?聞いたことの無い種類の魔法だけど、恐らく魔力以外にも何かと対価にする魔法があるってことだろう。この場合は生命力がそうなのかな。
「そんで最後だ、こいつぁ便利だぜ!その黒いローブは2つの能力がある。一つ目は認識阻害だ。消えたり気づかれなかったりするもんじゃねえが、お前がどんな状態でも自然な一個人にしか見えねえってもんだ。例えば軍で周りが甲冑だらけの中でも、お前が浮いて注目されたりしねえし、逆に誰にも存在が知覚されねえわけでもねえ。そして二つ目は収納魔法だ。内側の魔法陣に魔力を込めるとまあまあの量の物を収納できるぜ!食料とかいろいろ明日詰めてけ!ちなみに生き物は入れたら死ぬらしいから間違えても自分で入るなよ、ガハハハ!!」
入ったら死ぬのか、中が気になっていたから先にそれを知れてよかった。まあ自分で入ったら誰が出してくれるんだって話だけども。......それにしても、この村はかなり文明が遅れてるのかな、それともこの装備品が異常にすごいのか。
「ーー最後に忠告しておくことがある。信頼してねえ奴にその3つは絶対見せるな!無関係の奴には認識阻害で使ってもバレねえだろうが、ちょっとでもお前と親しいやつに注視されりゃばれっからな!......バルドも感づいてるとは思うがよ、この装備品共に付与された効果は過剰技術だ。最高の魔術師が作った付与魔法を、最高レベルの錬成師が何度も失敗しながら奇跡的に付与できたようなもんだ。欲しがる輩は多い」
「わかりました、肝に銘じておきます。本当にこんなに凄いものをありがとうございます!」
自分で最高レベルって言っちゃえる程の実力がクロードさんにはあるのだろう。僕もこの自信が欲しいな。この数日でかなり強くなったが、まだ外の世界には不安だらけだ。
「おうよ!後は段取りについて話して寝るぞ。明日の明朝には出発する。大変だぞ!」
「はい!!」
そう言って段取りについて話して食事をして、日が落ちてすぐに眠りについた。