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愛煙家

作者: 瀬川潮

 酷く患った末、父が肺がんで亡くなった。

 私は葬儀の間中、臨終に立ち会えなかった事を悔いたものだ。生前は父の少々乱暴な言動が嫌いだったので煙たく感じ何かと避けていたのだが、もうこの世にいないとなると寂しさだけが募る。

「むしろ本望」

 とは、晩年の父の口癖だ。他の家族が嫌煙家だったこともあるのだろう、むせながら「タバコに罪はない。愛煙家の寿命だ」と繰り返していたという。

 葬儀だ届出だなど忙しい日々が過ぎ、身辺が落ち着いてから母と一緒に実家を整理していたら押し入れの奥から家電製品の箱を見つけた。空箱かと思いきや、中に何かが入っている確かな手ごたえがある。未開封か。いや、一度開けてしまい込み、二度と日の目を見る事はなかったという体だ。

 中にはパッケージの写真通り小鳥の人形が収まっていた。スイッチを入れると、「タバコは吸わないで。タバコは健康に良くありません」とかまびすしい。おそらく、母が贈った物だろう。タバコではなく部屋の線香の煙に反応したのか。えらく敏感である。

 きっと父には煙たがられたに違いないと目に染みた。



   おしまい

 ふらっと、瀨川です。


 自ブログに掲載した旧作品です。2006年4月26日。

 ややしんみりと。

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