6話関空防衛戦・後編
「・・・・・・!!」
外の状況に俺は言葉を失った。
そこは、一言で表せば地獄。ところどころに人が倒れている。
「野上君!!?」
遠くから金堂さんが走ってくる。
「何やってるんだ!!早く逃げろ!!」
「金堂さん!これって・・・・・・」
遠くで銃器(たぶん対神兵器)を持った人達が、背中に羽のついた人(たぶん天使)と戦っている。
「ああそうだよ。あの羽がついてる奴らが天使だ」
「・・・・・・そんな!」
倒れている人達は、ほとんど羽の無い人、つまり味方ということになる。
「おされてる・・・・・・?」
「ああ・・・・・・たぶん長くはもたない。早くここから逃げるんだ」
「・・・・・・」
「シナプスに連絡して空間転移させるからちょっとま」
「いえ、俺も戦います」
言葉をさえぎり言う。
「!・・・・・・無茶だ!君はまだ高校生なんだろう」
「スキルを奪えと言われたんですけど」
「・・・・・・!!話を聞け!」
金堂さんが叫ぶ。
「君までここで戦い、死ぬ必要はない!!」
「大丈夫ですよ。俺は負けませんから」
「・・・・・・どこからそんな自信が湧いてくるんだ?」
さっきまでと違い、静かな声で金堂さんが問う。
「スキルがあれば・・・・・・」
「じゃあ、無理だ」
金堂さんは声を荒げて言う。
「俺が、君の奪うスキルを2つ持っている。だが君には奪わせない」
「そうですか。ならいいです。自分のスキルを使うんで」
え、と金堂さんは口を開けたまま固まる。
「俺は自分のスキルを知っていたんですよ?なら、もうスキルを奪い合成していてもおかしくない」
「・・・・・・っ!!!」
戦場の方を向き言う。
「能力封印、解除」
ハンドガンを構え、跳ぶ。
俺は生まれた時から能力、奪略を持っていた。
親がそっち方面の仕事をしているため、親は機械にも反応しない俺の能力を見つけた。
ある日、父が知らない人を自分のところに連れてきた。聞くとその人は俺のスキルでスキルを奪ってほしいらしい。自分のスキルをいまいちよくわかっていなかった俺は、どうしたらいいかわからなかった。その様子を見た父が、ここを触れ、とダミーゴッドの目を指す。俺は言われた通りにその人の目を触った。次の瞬間、自分の中に何かが入ってくる感じがした。驚いた俺は急いで手を目から離す。これが一番最初の奪略だった。
あれからスキルを持つ人達が来ることが増えた。その人達全員を奪略した。
ある日からスキルを持つ人達は来なくなった。同じ時期に父からスキルの説明がされた。そのとき俺は小6だった。
そのころ若干厨二病だった俺はとても興奮した。しかも奪うだけじゃなく奪ったスキルを合成できるなんて厨二病だった俺には最高のゲームだった。
その夜から合成を始める。案外難しいもので間違えると変なスキルや、前より弱いスキルになってしまう。中学受験そっちのけで合成に没頭した。
中学校に入学するころにやっと出来のいいスキルが一つ完成した。そのスキルは跳んだ後に空気の壁を作ることでそこを足場にし跳べるという、どこかの赤いおじさんが使っているようなスキルだった。
中学二年生。父から自分のスキルを隠すように言われる。いままで誰にも教えてなかったので、父から言われたことを守ることはできた。
高校に入学するころ父にスキルを使うなと言われた。これは困った。ばれない程度に部活などでスキルを使っていたからである。抵抗する俺に父は1つのスキルを作らせた。名前は能力封印。自分の持っているスキルを感知させられなくなるが、スキルを使えなくなってしまうというものだった。
しかも解除するには、天使か神が近くにいる時か、異性とキスした時だけらしい。どこのラノべの主人公だよ。
異性とキスなんて彼女いない歴自分の年である俺にできるわけがない。幼馴染はいるが、いきなりキスしてくれとか言えるわけない。天使とかにあえる状況がおこらない。要するにスキルが使えない。
しかし、今まさにそういう状況じゃないか。作ったけど使えなかった完成系を使える時がきた。
「能力封印、解除」
ハンドガンを構え、跳ぶ。
異様な光景。今、目の前に広がっているのはまさにそんな光景。
俺、金堂 武が部隊に入隊していろいろ見てきたがこんなのは初めてだ。
「野上君、君はいったい・・・・・・」
さっきまで少年がいたところを見ながらつぶやく。
バン
銃声が鳴る。
少年のいる方を向く。少年の周りには羽のついた首から上が無い死体が無数に倒れている。
最後の天使が倒れる。その天使も首から上が無い。
2065年9月21日午後8時36分関空防衛戦は一人の少年の手により、人類の勝利で幕を閉じた。
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