第0話 お話が始まったお話
少年を食らったことに満足したらしい感染者たちは、次なる獲物を求めて空き教室から出て行った。狭く、黴臭いロッカーの中にまで血の臭いが入り込んできたが、僕は外に出ようとは思わなかった。
少なくとも感染者たちは普通の人間と同じように、視覚や聴覚を用いて人間を探しているようだ。もしもそれ以外の探知手段があるのならば、ロッカーの中に隠れただけの僕はとっくに見つかって外に引きずり出されているはずだ。そして連中は、思ったほど賢くはないらしい。部屋の中を隅々まで探し回ることをせず、追いかけていた少年を食っただけで外へ出て行ってしまった。
このロッカーに隠れ、感染者がいなくなるのを待つ。それが僕がパニックに陥る寸前の頭で導き出した結論だった。感染者たちは積極的に人間を探して回ろうとはしていない。ならば姿を隠してじっとしていれば、見つかることはないだろう。
外から聞こえてくる悲鳴や破壊音は、相変わらず止むことはなかった。未だに校内のあちこちで虐殺が繰り広げられているのだ。今まさに殺されようとしている人々の絶叫や呪詛の言葉は、耳を塞いでも聞こえてくる。目を閉じても、今まさに食い殺されようとしている人々の姿が脳裏に浮かぶ。
こんな狭いロッカーに隠れ、息を殺して一人だけ助かろうとしている自分が情けなかった。出来ることなら僕だってこんな場所を飛び出して、映画のヒーローたちのように生きている人を一人でも助けたい。でも僕にはそれだけの実力がなかった。誰かを助けようとしたところで、死人が一人増えるだけだ。それか人々を襲う怪物の仲間入りをするか、そのどちらかだろう。
狭いロッカーの中では、自分の心臓の鼓動すら反響して聞こえるような気がした。そこだけ静かなロッカーの中で、僕は己の過ちとひたすら向き合わなければならなかった。
もしもあの時僕が門を開けずに、咬まれていた大学生を追い返していたら。頭に浮かぶのはそのことばかりだった。僕のせいでこの中学校に感染者が入り込み、大勢の人たちが死んだ。そして今も地獄を味わっている人々が外にいる。
仕方なかった、僕に責任はないと何度も言い訳を繰り返した。あの時点で僕はどんなルートで感染が広がるかなんて、これっぽっちも知らなかった。テレビもラジオでもウイルスの感染により暴徒になると言っていただけで、咬まれて感染するなんて情報はなかった。誰も、何も知らなかったのだ。
ならば怪我をした人を助けようという僕の行動は間違っていなかったはずだ。たとえ僕があの大学生を追い返したとしても、他の人が彼を助けようとして中学校に入れていたかもしれない。誰だって怪我人がいたら助けようと思うだろうし、それを非難する人間はいない。僕はたまたま最悪の時に、ババを引いてしまっただけだ。
僕がやらずとも、他の人が彼を避難所に招き入れていた。裏門から入れなかったら大学生は、開いていた正門に回り込んででも避難所に入り込んでいただろう。そしてやはり校庭で発症し、感染を広めていた。
それに感染は街にも広がっていて、中学校で感染者が発生した数分後には正門から外の感染者たちが押し寄せてきていた。僕があの大学生を中学校に入れなかったとしても、この避難所が感染者たちに蹂躙されることに変わりはなかった。避難所にいた人々の運命はとっくの昔に決まっていた、それが数分早まっただけのことだ。
そう自分に言い聞かせても、罪悪感は拭えなかった。あの時ああしていれば、こんなことにはならなかった。そんな仮定の話ばかりが頭を巡る。
もしも咬まれた大学生を追い返していたら。あるいは久しぶりに来た中学校の懐かしさになんて浸ることなく、吉岡と一緒に管理棟を見に行こうとしなければ。そもそも避難所になんて来なければ、あんな事態を招くことはなかったのではないか。
ほんの十数分で、多くの死を目の当たりにした。死んでいった人々の顔が脳裏に焼き付いて消えない。彼らの悲鳴が、唐突に訪れた理不尽な死への怨嗟の声が、耳から離れない。
僕は狭いロッカーの中で、ひたすら死への恐怖と己が犯してしまった罪の大きさに震え続けていた。
そして唐突に、悲鳴は止んだ。耳が痛くなるほどの静寂が、僕を包み込んでいた。
意を決して、ロッカーから出る。錆びついたロッカーの扉は開く時に掠れた金属音を響かせたが、感染者が姿を現すことはなかった。
ロッカーの前には、一つの死体が転がっていた。さっき僕が見捨ててしまった少年の死体だった。うつ伏せになった死体のブレザータイプの学生服とワイシャツは引き裂かれ、脇腹あたりの肉はごっそりと消え失せていた。本来内臓が収まっているはずの場所には、何もなかった。
光の消えた瞳が、僕を見上げていた。お前のせいで俺は死んだんだ。死体がそう言っているような気がした。
もう耐えられなかった。僕はその場に跪くと、勢いよく吐いていた。白い吐瀉物が床の血だまりの上に落ちて、ピンク色に染まった。
僕が扉を閉めていなかったら、彼は助かっていたのだろうか? もしも目の前で死んでいる少年が助かっていたら、僕も多少は救われていただろう。こんな状況であってもいいことをしたんだと、少しは自分の行いを誇ることが出来たかもしれない。でも僕がやったことは、その正反対の行為だった。
僕に見殺しにされた時、この少年は何を思ったのだろうか。たぶんその答えは知らない方がいいだろう。きっと彼が思ったことの中には、自分を助けようとしなかった僕への憎悪と遺恨の念があるに違いない。
これ以上死人について考えていたら、気が狂いそうだった。そうだ、早く父さんと母さんを探さなければ。二人は体育館にいると言っていた。体育館はどうなった?
立ち上がり、閉め切られていたカーテンを開く。途端に視界いっぱいにオレンジ色の光が目に飛び込んできた。街が燃えていた。
学校の近くの住宅街で火の手が上がっていた。炎は次々と隣接する家屋に燃え広がり、そしてそれを消し止めるはずの消防の姿はなく、サイレンの音も聞こえない。
避難民たちが閉めたはずの重い鉄製の門は、校庭に向かって内側に倒れていた。感染者たちが強引に突破したのだろう。校門の前の道路には二台のパトカーが、パトランプを回転させたまま止まっている。しかし銃を撃っていたはずの警察官の姿は、影も形も見当たらなかった。
父さんと母さんを探さなければ。その言葉で余計な思考を無理やり頭の中から追い出すと、僕は体育館に向かうべく廊下に出た。他のことを考えていると、不安と恐怖に飲み込まれそうだった。
住民たちの立ち入りが禁じられていたはずの管理棟のあちこちにも、死体は転がっていた。それらの死体をなるべく見ないようにして、僕は一階の窓から駐車場に出た。時刻は既に、深夜12時を回っていた。
幸いにも非常用の発電機は破壊されなかったようで、こんな状況であっても学校中の明かりは点いている。しかし明るいおかげで、そこら中に広がっている凄惨な光景は、夜の闇に隠されることなく僕の目に入ってくることになった。
校庭の土は、流された血で真っ赤に染まっていた。グラウンドに散乱する中身の詰まったごみ袋のように見えたものは、全て人間の死体だ。多くの死体が転がる中、僕以外に動いている者は誰一人としていない。感染者さえも姿が見えなかった。
きっと学校から逃げ出した人は少なからずいるだろう。感染者たちは、その人たちを追って行ったのかもしれない。校庭や校舎の死体は確かに数が多いが、避難してきた人たちの数に比べればかなり少ない。もっとも、死んでいない人間は全員感染者になったという恐ろしい考えも頭に浮かんだが。
しかし学校内にまだ感染者が残っている可能性は十分ある。連中と素手でやりあっても勝ち目はない。武器が必要だった。
駐車場に置かれていたままの建築資材を覆うシートをめくり、角材か何か置いてないか見て回る。あるのはとても振り回せるような代物ではない足場用の鉄パイプや防塵用のネットばかりだったが、30センチほどの鉄筋用と思しき鉄棒が何本かあった。もっと強力でリーチのある武器が欲しいところだが、今はこれで我慢するしかない。
鉄棒を握りしめ、体育館へ向かう。体育館の窓からは光が漏れていたが、中からは物音ひとつ聞こえなかった。すぐに、その理由がわかった。
管理棟側から死角になっている体育館の入り口の扉は、大きく壊れていた。開け閉めするにも大きな力がいる鉄製のスライド式の扉は、真ん中からひしゃげてレールから外れていた。体育館の入り口から、真っ赤な血が外へと流れ出している。
「そんな……」
父さんと母さんはどうなった? 思わず体育館へと足を踏み入れた僕は、そこに広がる光景を見て再び吐いていた。体育館の床には、折り重なるようにして無数の死体が転がっていた。
体育館の中に逃げ込み立てこもったはいいものの、それも長くは続かなかったのだろう。扉を破壊し侵入してきた感染者達から一歩でも遠ざかろうとしていたのか、死体はどれも壁際で山のように折り重なって倒れていた。
強烈な鉄の臭いで、既に嗅覚は麻痺していた。血だらけでひどく損壊した死体ばかりだが、この中に父さんと母さんがいないかを確かめなければならない。この中に父さんと母さんの死体がなければ、二人はまだ生きている。
近くでうつ伏せに倒れていた、茶色いセーターを着た女性の死体をひっくり返す。確か母さんも学校に来た時、茶色いセーターを着ていた。髪型もよく似ている。まさか……と思いつつ、僕は意を決してその顔を覗き込んだ。血で赤く汚れていたが、母さんの顔ではなかった。
よかった。そう思い、そしてそんなことを思ってしまった自分を嫌悪する。人が死んでいるのだ、それのどこが「よかった」? 彼らが死ぬ原因の一端を担ったのは僕自身なのに?
父さんと母さんに似た服装や背格好の死体を一つ一つ確認していくたびに、僕は自分の心がベルトグラインダーにかけられて削られていくかのように感じていた。それも確認した死体の数が20を超えるころには、僕は何も感じることなく黙々と作業をこなすように死体の顔を見るようになっていた。
数時間を費やしたが、結局体育館の中に父さんと母さんはいなかった。ということは、どこかで生きているのかもしれない。暗闇の中、わずかな光が見えた気がした。
まだまだ外に死体はたくさんある。それらを全て確認していったら、朝になっても終わらないだろう。何かいい方法はないか。そう思ったその時、唐突に携帯電話の存在を思い出した。
電話をかければ一発で済む話じゃないか。便利な文明の利器の存在を忘れていた自分に腹が立った。電話をかけようとスマートフォンを取り出し、画面の表示が『圏外』でないことに安堵する。どうやらまだ、インフラ関係は無事らしい。
アドレス帳から母の電話番号を呼び出し、発信ボタンを押そうとして指が止まった。もし母さんの近くに感染者がいたら、着信音で見つかってしまうかもしれない。そうなったら何のために電話をかけたのかわからなくなる。電話をすべきか止めるべきか悩んだが、結局僕は発信ボタンを押した。母さんがマナーモードにしていることを祈るのみだ。
――――――直後、微かに携帯電話の着信音が聞こえた。ピピピピ、という電子音は、静寂に包まれた学校の中で、一際大きく聞こえるような気がした。
僕はその着信音に聞き覚えがあった。機会があまり得意ではない母さんが初期設定にしたままの、携帯電話の着信音。もしかしたら他にも同じような設定をしている人がいたのかもしれないが、このタイミングで鳴ったということは母さんの携帯電話に違いない。
着信音は教室棟の方から聞こえてきていた。母さんはまだ生きている。そう確信した僕は、教室棟へ向かって走り出した。
もう何日も前のことのように思えるニュースの天気予報の通り、雪が降り始めていた。白い雪は地面に転がる無数の死体の上に落ち、真っ赤に染まってあっという間に溶けた。
教室棟に土足のまま上がるのはご法度だったが、注意する先生はとっくに死んでいた。僕は鳴り続ける携帯電話の着信音が聞こえる方向へと走っていく。早く母さんに会いたかった。
聞こえる着信音は一階の女子トイレに近づいていくにつれ、どんどん大きくなっていく。どうやら母さんは女子トイレの中にいるらしい。女子トイレに入る男子高校生、普段だったら通報されてしまうだろう。だが僕はそんなことを気にせず女子トイレに足を踏み入れ、そして――――――。
「え?」
窓が開いたままの女子トイレの床で、何かが蠢いていた。トイレの電気は切られたままだったので、スイッチを押す。まぶしい蛍光灯の光に照らし出されたのは、床を這う感染者の姿だった。
どうやら重傷を負った後に発症したらしい。腰から下の肉は殆どが食い尽くされ、骨とわずかな筋肉しか残っていなかった。腹部も裂け、紐のような長い腸が、感染者が身動きするたびに蛇のようにのたくる。顔の皮は半分なくなり、白い頬骨が筋肉の間から覗いていた。
こんな状態でも動いていられる感染者を見たのは初めてだが、僕が間抜けな声を上げたのはそれが原因ではなかった。携帯電話の着信音は、その感染者から聞こえていた。
「うそ、だろ?」
茶色いセーター、髪型、半分しか残っていないとはいえその顔つき。酷く身体が損傷しているにも関わらず、僕はその感染者の正体が一目でわかっていた。しかし、脳がそれを理解することを拒んでいた。
片方しか残っていない目で、床を這う感染者が僕を見上げる。咆哮を上げられないのは、声帯が食いちぎられているからだろう。感染者の口から洩れたのは、ヒューヒューと掠れた吐息の音だけだった。
感染者は僕に向かって手を伸ばした。その左手に嵌めてある腕時計にも見覚えがある。感染者は両手だけで地面を這い、僕に近づこうとしていた。
乾いた音と共に、そのセーターのポケットからスマートフォンが転がり出る。着信を告げる電子音がさらに大きくなり、バイブレーションでスマートフォンが床の上でわずかに動いた。
そしてその画面に表示されている発信者の名前は、僕のものだった。
呆然と立ち尽くす僕の足を、感染者が掴んだ。慌てて振り解いて廊下に飛び出した僕の身体から、力が抜けた。
あの感染者が母さんであることを、僕は信じたくなかった。父さんと母さんは今も無事で、どこかに逃げているか隠れている。二人と合流して、今度こそどこか安全な場所へ逃げる。一分前まで僕は、そうなることを疑いもしなかった。
いや、思い込んでいた。何の根拠もないのに、二人は無事だと信じたかったのだ。だけど現実は違った。母さんは感染者と化していた。
「どうして……」
嗚咽と涙が止まらなかった。どうしてこうなった。何を間違えた。どこがいけなかったのか。どれが正しい選択肢だったのか。もうどうしようもない、確定されてしまった現実を目の当たりにしても僕は、ただ後悔することしかできなかった。
僕のせいだ。僕があの大学生を追い返していたら。そもそも避難所なんかに来ることなく、家で父さんと母さんを待っていたらこんなことにはならなかった。僕が母さんをこんな酷い目に遭わせてしまったのだ。
母さんは相変わらず両手で地面を這いながら、トイレの外へと出ようとしていた。座り込む僕を見据えるその瞳には、飢えた獣が獲物に向ける殺意しか存在しない。母さんは僕に食らいつこうとしていた。
「やめてくれよ……」
母さんはまだ、こちらに向かって這ってきている。
母さんが感染者になってしまったことなど信じたくはなかった。だけど僕は心のどこかで、その事実を受け入れていた。厳しいながらも優しかった母さんはもういない。いるのは母さんの面影を残した飢えた獣だけだ。
もう何を言っても無駄だろう。母さんの耳には僕のどんな言葉も、獲物が発する音としか認識されない。理性も人間性も記憶も何もかも、もう母さんの中には残っていないのだ。
目の前の感染者が母さんであることを受け入れず、この場を逃げるのは簡単だ。足を食われているから、早々素早くは追ってこれない。それにこの傷では、そう長くも生きられないだろう。
だけど僕は責任を取らなければならなかった。こうなる事態を引き起こした、その張本人としてせめてケジメはつけておかなければならない。このまま母さんを放置し、学校にやって来た他の誰かが襲われたら、僕はさらに人を死に追いやることになる。
いつか母さんが言っていた。『一度目の間違いは仕方がないこともある、でも二度も三度もも同じ間違いを繰り返すのはただの馬鹿』と。同じ過ちを繰り返さないためにも、僕がするべきことは決まっていた。
「ごめん……」
様々な思い出が脳裏を駆け巡った。厳しかったし、小言も多かった。怒られる時は大抵叩かれた。大喧嘩をして「死ねこのクソババア」と思ったことも一度や二度ではない。
それでも僕にとっては、大切な母さんだった。僕を生み、ここまで育ててくれたのは母さんなのだ。だから僕は、敬意を持って彼女を送らなければならない。僕は自分がやるべきことを、明確に理解していた。
立ち上がり、こちらに向かって這い続ける感染者の目を見据える。
「ありがとう、さようなら」
僕は手にした鉄棒を振り下ろした。
「あなたは、何も後悔していることはないの?」
――――――小百合女学院にたった一人残った教師、坂口先生にそう聞かれた時、僕の脳裏に浮かんだのは全てが終わり、そして始まったあの日の出来事だった。
あの日、僕は全てを失った。同じく感染者と化していた父さんと、友人だった吉岡も僕はこの手で殺した。家族も友人も、家も何もかもが失われた。
世界は変わった。そして世界を支配するルールさえも同じように変わった。愛情や友情、人道といったものは今やただのたわごとに過ぎない。旧い世界のルールに囚われたせいで死んでいった人々を、僕はあの後何度も見てきたのだから。
僕も生き方を変えなければならなかった。ヒーローなんて存在しないと理解し、倫理観や良心さえも捨てた。そうしなければ生き残ることはできなかった。だがそうできずに死んだ人々も、大勢いる。
立ち上がり、窓のカーテンを開ける。窓の外では未だに雪が降り続いていた。
一瞬、ガラスに映る自分の全身が、血で真っ赤に染まっているように見えた。たぶんそれは間違っていないだろう。僕は多くの人々を犠牲にすることで、今まで生き延びてきたのだから。
女も子供も、直接手を下していないとはいえ赤ん坊まで殺した。生きるためには仕方なかった。誰も正しい方法なんて教えてくれなかったから、僕は自分で考える最善を尽くしただけのことだ。
だけどこんな生き方が正しいなんて、心の底じゃ思っちゃいない。でも僕は、この道を進み続けるしかないのだ。それが僕の選んだ道なのだから、たとえ肩まで底なしの血だまりに浸かっていようとも、前に進むしか他に生きていく方法はない。たとえその先に待ち受けているのが破滅であっても、進み続けることが僕のケジメのつけ方だ。
あの日、僕は生まれ変わったのだ。退屈でどこか息苦しさを感じつつも、平和な生活を謳歌していた正義感の強い少年は死んだ。代わりに生まれたのは生に執着し、そのために他者を犠牲にし続ける僕という存在。
僕は、ヒーローではなく怪物になった。
これにて前日譚は終わり、閉廷!
次回から時系列は現在に戻り、視点も三人称で進んでいきます。