フロックス《貴方の望みを受けます》
1.私にはトリップ能力がある。
2.異世界と元・世界の時間はまちまちだが最低1週間で1日の時間差。
3.理解不能だが時間差等で起きた身体の変化は違う。例えば、異世界で出来た傷は戻ると消えているのに再び異世界にトリップすると傷が元・世界に戻る前と同じ状態。
以上が私のトリップの法則だ。
他にも、異世界についても分かった事がある。
私がトリップした場所は(一番デカイ)大陸コンテントのガザー王国だ。
ガザー王国は貿易王国で人が集まる。
要は、人口1位の国。
初めてトリップした草原はグラシーと言って絶滅危機のサラマンダーが唯一生息する地域だった。
因みに例の火蜥蜴はサラマンダーだった。
見た人は幸運を呼ぶ、とも言われる程なのにろくに観察しなかった。
惜しい事をしたと茫然としてしまった。
教えてくれた本屋のじいさんの前で。
グラシーから出るとプロドューと言う農産物の生産豊かなのどかな村にでる。
一見すると中世のヨーロッパだ。
こっちは純東洋人の私は西洋人には珍しいらしい。
当初は目立った。
そりゃ、近くにこんな顔立ちの人はいない。
しかも、服はジーンズとスニーカー、長袖。
トリップする時にあらかじめ着替えていたのだが、まさか王道ヨーロッパ風異世界とは思わなかった。
この世界の女子はドレスで髪は結えるほど長い髪が常識。
私も髪は長いが肩を越す程度だ。
あと、服装。
これで、少年に間違われた。
最初は訂正するか迷ったが少年の方が少女より怪しまれないので訂正なしだ。
一応、胸はあるほうなのでサラシ…ではなくキツめの腹巻きを胸に。
お話ほどサラシは簡単ではない。
けっこう、難しいのだ。
そういう訳で、放課後に誰も居なくなった教室でカーテンの影でプロドュー村に毎日トリップしてる。
が、そんな楽しいトリップ旅行も終わる。
目の前の人物によって。
「佐藤さん…。誰にも言わないから連れてって?」
女が女に上目遣いすんな。
勘違いされては困るが私は基本、女子老人に優しい。だが、この女は何か私の本能が危険だ、と警報を鳴らす。
一応、表立って怪訝な表情は出さないようにしてる。
この女は鈴木薔恋。
ほわわんとした儚げな美少女。
髪は色素も薄く腰まで長い。
しかも、気が利くので正に天使。学校のアイドルだ。可愛いは正義な私は警報を鳴らす本能を無視して、まぁいっか、と了承した。
黙ってくれると約束もした。
そして、それからは鈴木さんもトリップ仲間になった。