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異世界で治療師  作者: にくきゅう
プロローグ
9/47

にゃんと!?

今日で投稿後ちょうど一週間になります。予想よりはるかにたくさんの人が読んでくださっていて、正直ビビりまくっております。勢いだけで書いているので、例のごとく誤字脱字はスルーの方向でお願いします。


「……猫?」 


 まず始めに思ったのはそれであった。

 そこにいたのは、真っ白い子猫? であった。

 実際は子猫かどうかわからないが、一般的に大きさよりはかなり小さかった。体長的にはオレの知る限りの基準でいえば生まれて一カ月くらいの猫ぐらいであろうか。まだ身体に対して足が太くて短めである。

 それにしてもかわいいな、おい。

 そして目を奪われるのがその毛色。本当に白。きれいな白一色である。俗に言う純白と言うやつか。競走馬にも芦毛、白毛とわかれているが、白毛のほうの白である。

 ぴんと張った耳、全身の毛並みはけっして野良猫のようにぼさぼさとした感じではない。丹念に手入れされているかのようにさらさらとしていた。高級な絹糸を思い起こさせる。まるで絹糸が流れているかのようであった。触れるだけで金を払ってもいいと思わせるほどだ。



 きれいすぎる。いや、かわいすぎる。俺はこの子猫が世の生き物で無いように思えた。もう猫ちゃんと呼ぼう。呼び捨てなんて失礼だ。


 俺はそんな猫ちゃんを見たまま動けなくなってしまった。すると、顔をこちらに向けた猫ちゃんと視線が合う。

 

「…………」


 静寂の中、猫ちゃんとの視線の交錯は続いていた。なんだか、むこうは意図的にこちらを見つめているような気がする。相手は猫(仮)なのだが、オレの何かを見通すかのようにその眼光は鋭い光を放っていた。逆に俺のほうも自分が敵ではないと、視線を通して訴えてみた。できるかぎり穏やかな表情を意識してみる。するとどうだろう、こちらの気持ちに気がついたのか、表情が和らぎ眼光が弱まった気がする。


 どれくらい経ったのだろうか。感覚的にはずいぶん経った気がする。いまだ猫ちゃんとは視線を合わせたままだ。実際には数秒の間だけだったが、なぜか何分にも感じられた。しかし、不意にそのやりとりも終わりを告げた。


「にゃー」

 猫ちゃんが弱弱しく一声鳴くと、地面にどさりと横たわった。


 やっぱり猫だ。鳴き声が猫である。猫ちゃん確定だな。

 それにしてもそんなに眠かったのか?

 猫ちゃんが急に横になったので、不思議に思う。しかし、よく見るとその考えもすぐに違うことがわかった。

 さきほどから角度的に猫ちゃんの身体左半分しか見えていなかったが、横になったこといや、倒れたことによって状況を理解した。

 猫ちゃんは横になったのではなく、意識を失って倒れたのだった。

 俺は急いで駆け寄って、猫ちゃんを抱き上げた。右側の前足からお腹にかけて、なにかにえぐられたような深い傷があった。猫ちゃんの身体を抱き上げた手はすでに真っ赤に染まっている。


 これはやばいな。傷自体はそんなに致命傷までにはいかないと思うが、出血量が危ない。1メートルほど前方には、血だまりが出来ていた。

 怪我をしたのはそこか? 

 その周りには、折れた木の枝が数本散乱している。

 

 そういうことか。

 木の上を確認してみる。細い枝の一部が根元から不自然に折れていた。おそらく、木に登っていた猫ちゃんの乗っていた枝が折れ、落ちる最中に他の枝に突き刺さってしまったのだろう。散らばっている枝からもそれがわかる。 



 しかし、原因がわかったところで何の意味も無い。

 どうにかしなくては。

 一番現実的な方法としては急いでエノーミさんの家まで連れて帰り、指示を仰ぐことである。いつ家に戻って来るのかがわからないが、エノーミさんならきっと何とかしてくれるはずである。気がかりは猫ちゃんが果たしてそれまでもつかである。専門家ではないので詳しいところまではわからないが、正直なところ危ないと思う。


 猫ちゃんの息はかすかにしか感じられない。手を当ててみても微々たるものだ。ここでこうして考えている間に時間を浪費してしまうことは出来るだけ避けたい。もしかしたら、エノーミさんは早めに家に戻っているかもしれない。それまで猫ちゃんが持つかどうかわからないが、その望みにかけてみようか。


「くそっ!」


 早く決めないと手遅れになってしまう。自分のまとまらない思考にイライラが募る。

 なんかいい手はないのか。落ち着いて考えろオレ。何か考えればいい方法はあるはずだ。

 オレは昨日異世界に飛ばされた。そしてここは異世界である。異世界、異世界といえば思いつくものは……。


「魔法!!」


 俺は昨日エノーミさんに聞いた魔法について思い出す。


 魔法とは身体の内側からあふれ出るマナを自分用のマナに変換して使うもの。誰にでもマナはあるとエノーミさんは言っていた。ならオレにもきっとマナはあるはず。地球人である自分に果たしてそれはあるかどうか定かではないが、いまはこの世界に住む人間の一人だ。必ず魔法を使えるはずだ。でも果たして魔法で治療など出来るのだろうか。オレの中で魔法とは何でもできるものだが、この世界の魔法がそうであるとは限らない。魔法とて万能ではないはずだ。しかし、今さらグダグダ考えていても仕方がない。


 よし、やってやる。

 俺は目を閉じ、昨日の光景を思い出した。エノーミさんは魔法を使う寸前にぼんやりと光り輝いていた。おそらくあれがマナというやつなんだと思う。確証はない。その後に魔法が発動したからそうだと思う。マナとは目で確認できるものかどうかはわからない。しかし、オレはそうではないかと仮定する。


 次におそらくエノーミさんの全身が光っていたことからマナとは全身に循環させるものだと思う。マナを全身に循環させ、自らのマナに変換。魔法詠唱とともに発動である。マナの変換はこの際無視しよう。オレがそんなこといきなりできるはずがない。一生かかってもほとんどの人間が出来ないのだ。この身体が特異体質であると信じるしかない。だが問題は詠唱だ。エノーミさんは魔法の発動に魔法言語を唱えていた。


 エノーミさんの話では魔法の発動には一般的に魔法言語と呼ばれる言葉の詠唱が必要となる。なぜ一般的かと言うと、この方法を用いることがほとんどであるからである。魔法言語とは魔法に必要である複雑な術式を簡易的に代用するものである。説明は省くが、魔法言語を唱えることによって術式が成立し、マナを伴って魔法の発動となる。つまり、魔法とは魔法言語を唱えることと同義と考えていい。しかし魔法には必ずしも魔法言語の詠唱は必要無い。無詠唱と呼ばれる方法で、複雑な術式を完全に理解し得るものだけが詠唱なしで魔法を発動できる。言ってみればこれが正規の方法で、魔法言語とは邪道の手段である。

稀に明確なイメージだけで魔法は発動することもあるらしいが…。

 

 俺は最後のものにかけてみることにした。


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